vol.524「部門間対立を解消し、シナジービジョンを描く方法」

 V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.524

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

 

「部門間対立を解消し、シナジービジョンを描く方法」

 

ウクライナ紛争に加え、パレスチナ紛争も勃発。
残念なことに、世界の分断と対立が深まっています。

 

犠牲になるのは、何の罪もない市民。
毎日、痛ましい映像が世界中に流されます。
何とか対立が解消され、
誰もが穏やかに暮らせないものかと願うばかりです。

 

会社の中でも、部門間で対立することがあります。
スタッフ部門とライン部門の対立。
設計部門と営業部門の対立。
生産部門と営業部門の対立。
営業第1部と営業第2部の対立。
上司と部下の対立 …等。

 

時折、「その対立を何とかしたいので力を貸して欲しい」
というオファーが、私のところに届きます。
この秋も2件ありました。

 

このようなオファーの時、真っ先に考えるのが
「対立する両者は同じことを目指しているのか?」です。

 

両者とも目指している目標は同じ。
が、目標達成に向けたやり方が違ったり、
双方の仕事の依頼の仕方、受け入れ方に問題があり、
それが対立を生む一因になっている。

 

このようなケースでは、関係の修復は可能です。

 

坂本龍馬が実現した薩長同盟がまさにこれです。
薩摩と長州は過去の経緯から犬猿の仲でした。
特に長州人は下駄の裏に「薩賊」と書いて
日頃から踏みつけるほど薩摩を憎んでいました。

 

が、両者が目指していた未来は同じ「倒幕」。
長州でも薩摩でも、単独ではその目標は達成できません。
両者が力を合わせ、1+1=2以上にする必要がありました。
そこで、龍馬が仲立ちとなり、
相手がピンチの時には協力し合う関係を構築したのです。

 

一方、目指すところが同じでない場合。
これは、協力し合う理由が見つかりません。

 

例えば「営業第1部と営業第2部の対立」が存在する場合。
営業第1部は自分たちの部の目標達成を考えています。
このとき、営業第2部のチカラを必要としていません。

 

一方、営業第2部もまた、自分たちの部の目標達成を考えています。
同じように、営業第1部のチカラを必要としていません。
それどころか部長から現場に
「あいつの所には借りを作るな」などと指示が飛んだりします。

 

トップから見ても、会社全体の数字が達成されればそれでOK。
営業第1部と営業第2部が反目し合っていても
「両部は仲良くしなさい!」なんていう必要はありません。
その結果、こういう対立は解消しないのです。

 

そこで私は、対立する2つの部署の管理職たちに
別々の会議室に入ってもらいます。

 

そして、以下の3つのテーマで議論していただきます。
議論の時間は凡そ90分です。

 

(1)もう一つの部と一緒に実現したい未来
(2)もう一つの部に伝えたい「日頃の感謝」
(3)もう一つの部に伝えたい(1)の実現に向けて
こうしてくれると助かります」という要望

 

その後、同じ部屋に集まって
それぞれの部での議論の結果を伝え合います。

 

まず、(1)の発表です。
(1)の答えが同じ場合は空気が和んで、
そこから建設的な空気に変わります。

 

例えば、先日行ったある会社のスタッフ部門と
ライン部門が対立していたケースでは、
(1) の回答として以下の意見が出ました。

 

「社内における私たちの存在価値を高めたい」
「明確な目標に向かって同じ熱量で取り組みたい」
「トップダウンではなく社員が主人公として
自らが考えて自らが決める職場にしたい」
「お互いが困りごとを話し合い、意見を言い合え、
 互いに協力できる楽しい職場にしたい」
「お互いの仕事を尊重し、協力し合う職場にしたい」
「共に共感できるコンセプトを築き上げたい」
「休職者が安心して戻れる職場にしたい」

 

私は当初、両部から同じ「事業目標の達成」が
出てくることを想定していました。

 

が、出てきたのは「私たちはこうでありたい」という
「あり方」ばかりでした。

 

そこで「目標達成はいいの?」と確認しました。
すると、「先生、そんなのは当たり前です。
その上で私たちはお互いの関係の質を良くしたいのです」
との回答。

 

あり方を部門間で共有できる会社は強いです。
誰もが「あり方」を目指したら、
「私たちが**したいのに、協力しないあっちが悪い」
などという他責指向は出ようはずがありません。

 

この回答を見ただけで、
私は「この組織は大丈夫だ」と確信しました。

 

続いて(2)と(3)の発表を行います。
(2) はお互いに日頃の感謝を伝え合うのですが、
ポイントは、できるだけ細かくたくさん出すこと。
照れずに言語化し、具体的に伝えることです。

 

すると、「当たり前のことをしていただけなのに
それを認められて嬉しい」
「そんな細かいことまで見ていてくれたのですね。
感動しました」という感想が続出。
場が穏やかな、前向きな空気になります。

 

その上で(3)を伝え合います。
この中には聴く側にとって「耳の痛いこと」も
含まれています。

 

ところが事前に(1)が同じだと確認していること。
直前に(2)によって心が開いていること。
この2つの効果で、それらを前向きな、
建設的な意見をとして受け止めることができるのです。

 

こうして心配された対立は、
その溝が深くなる前に解消に向かいました。

 

あなたの会社の中には、対立はありませんか?
ある場合、(1)の問いの答えはいかがでしょうか?
ちょっと立ち止まって考えてみましょう。

 

そして、もし(1)の問いの答えが同じなら、
上記のワーク(2)(3)をやってみてください。
そこから、貴社がより一層輝く
「シナジービジョン」を描いていきましょう。