vol.523「組織を成長させる非日常体験のススメ」

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.523

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「組織を成長させる非日常体験のススメ」

 

すっかり秋らしくなってきましたね。
行楽シーズン到来で、
皆様もあちこちに出かけていることと思います。

 

私のクライアントのA社は、4年ぶりに社員旅行が復活。
行先から宴会の出し物まで、全て若い人が企画。
社長も部長も旅行先では、若い人たちのいじられ役。
皆、楽しみで仕方がないと言っています。

 

信じられる仲間と非日常を共有する体験は貴重ですね。
何より、一緒に過ごした時間が長く記憶に残ります。
それが絆をより強固にします。

 

仕事柄、そんな非日常の体験旅行の企画を
依頼されることがあります。

 

社長と幹部社員でユニークな企業を数件視察し、
夜は温泉旅館に泊まってお互いの懇親を深める
1泊2日の研修ツアーの企画です。

 

これまで仙台・石巻、燕三条、伊勢・岐阜、高知・徳島、
岡山・広島などで1泊2日のツアーを企画、
実践してきました。

 

といっても、私に何か特別なコネがあるわけではなく
「見学歓迎」の企業をネットで調べ、
予約を入れて、レンタカーで回るのです。
そして、可能な限り現地の人に解説や説明をしてもらい、
皆で学びます。これがとても楽しいのです。

 

見学は、実は「何を見るか」よりも「誰と見るか」が肝です。
同じ対象を見ても、感じることは人それぞれ。
「そういう見方も面白いね。その視点はなかったな」等と、
気づきをシェアしたら、お互いの距離はぐっと近くなります。

 

そんな見学会を、先日実施しました。
参加したのは自動車部品製造業のB社の幹部社員7名と、
同社社長の友人及び士業の仲間です。

 

行先は、新潟県の燕三条(燕市+三条市)。
金属加工を中心としたものづくりの聖地。
2日間でタンブラー、包丁、やかん、キャンプ用品、
箸、爪切りメーカーなど計7か所を見学しました。
https://www.tsubamesanjo.jp/kanko/factory/

 

実はこの燕三条、オープン・ファクトリーと称して、
工場の見学環境を整備している会社が多いのです。
工場内に見学通路があり、
通路と作業現場はガラスで仕切られています。

 

見学者は、もくもくと研磨機に向かって材料を削り、磨き、
形を整えていく職人技をガラス越しに眺めます。
すると彼らが真剣に、一つひとつの加工品に
自分の誇りや魂を吹き込んでいるのがよく分かります。
https://www.suwada.co.jp/about_ja/factory

 

これを行った当初は
「俺は見世物じゃない!」と抵抗した社員もいたそうです。

 

が、経営者が決意し、通路を設備し、
見られて恥ずかしくない、むしろカッコいい!と
思えるような制服と装飾を施した設備と整えたら、
社員も覚悟を決めます。

 

自ずと洗濯した制服を着て、髪形を整え、
職場のゴミを拾い、整理整頓に務めます。

 

実際にマルナオという箸の工場では、
オープン・ファクトリー化する前の工場内の写真が
掲示されていました。
http://www.marunao.com/of/

 

それと今の工場を比較すると、今は数段キレイで、
見る側に「ここで作られた箸なら間違いはない」と
思える環境が整っていました。

 

また、包丁メーカーの藤次郎では、
鍛造の現場にいた職人が見学する私たちを見つけ、
「説明しましょうか」と自分から申し出てくれました。
https://tojiro.net/openfactory/

 

そしてヘッドセットを付けると、
自分がやっている作業の一つひとつを丁寧に
話してくれました。

 

話し慣れているのでしょう。10分ほどでしたが
とても流暢で、ぐんぐん引き付けられました。

 

社員自身が自分の職場について語り、
見学者から多くを質問され、
撮影されたり、拍手をもらったりする。
それが彼らの働き甲斐になっていると感じました。

 

見られることによって生まれる集中力と責任感、
見ることから生まれる職人技と人間力への信頼。
それらが製品への信頼となり、
見る側はその製品が純粋に欲しくなります。

 

それが「高価なのに沢山売れる」という事実となり、
社員たちの自信と誇りを育みます。

 

そして、それらが集積して、
「凛とした、品位のあるものづくりの街」という
燕三条のブランド力となっています。

 

こうした工場を幹部社員たちと見学したB社の社長は、
見学後にこんなメッセージをくれました。

 

「この度の新潟ツアーはほんとにありがとうございました。
参加した社員のうれしい顔や声を聞くことができ至福の時間でした。
それぞれの意外な一面や思いを共有できとても良い時間でした。
帰社後すぐに、執行役員が共有の場を設けてくれたので
これからがまた楽しみです。どうもありがとうございました!」

 

このような気持ちになったのは、社長だけではないでしょう。
私たち参加者全員が同じ気持ちになりました。
これこそ、非日常を共に体験する価値です。

 

オタフクソースの佐々木社長は、
「非日常の空間で、自社の理念について語り合うと
理念を共有できる」と語っています。

 

目先の仕事の追われない時間・空間の中で、
上記の工場見学のように、
同じように真剣に仕事に向き合う人たちを見た後だと、
「何のために働くのか」「わが社が存在する理由は何か」など、
改めて考えやすく、腹落ちしやすいのです。

 

あなたの会社の非日常体験はいかがでしょうか?
コロナ禍で休止した会社も、今こそ復活のタイミング。
この時間は「関係の質」を高めるための投資です。
きっと将来、大きなリターンを生むことでしょう。
是非、取り組んでみてくださいね。