vol.513『チームの一体感を示す意外な指標とは?』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.513

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『チームの一体感を示す意外な指標とは?』

 

6月2日発行のメルマガで
強いタイガースのことを書きました。
すると、大変多くの反響をいただきました。
https://vjiken.com/news/?p=858

どうやら、このメルマガの読者には
タイガースファンが多いようです。
中小企業への応援メルマガは、反骨精神旺盛な
タイガースファンの共感が得やすいのでしょう。

 

とはいえ、私はドラゴンズファンです。
そのドラゴンズ(以下?)は、今年もまた低迷しています。
タイガース(以下T)と一体何が違うんでしょうか?
6月29日現在のチーム成績を数字で比べてみましょう。
https://baseballdata.jp/c/

 

【勝敗】T:40勝28敗2分、D:27勝42敗1分 
ゲーム差は13.5です。

 

Tの強さの秘密は、その得点力です。
【得点】T:272点、D:192点
【一試合当得点】T:3.87点、D:2.74点
1点以上の開きがあります。

 

では、何が得点差の原因でしょうか?
【本塁打】T:34本、D:30本
【安打数】T:559本、D:554本
【チーム打率】T:0.242、D:0.237
ほとんど差がありません。

 

ちなみに守りの方でも、
【防御率】T:2.82点、D:2.93点
【失策数】T:45個、D:48個 
と、拮抗しています。

 

では、何がこんな差を生んでいるのでしょう…?
先日、ラジオの解説を聞いて、私は大変驚きました。

 

それは…
四死球(フォアボールとデッドボール)の数です。
【四死球】T:291個、D:167個 
【一試合当四球】T:4.16個、D:2.39個

 

なんと、2倍近いの開きがあります。
Tの選手はよく球を見て、四死球を選んでいるのです。
それが出塁数の違いとなり、得点力になっているのです。

 

フォアボールはとても地味なプレイです。
バッターに「ここで俺が打って決めてやる!」という
自己顕示欲や承認欲求が強いと成立しません。

 

「チームのためにチャンスメイクする」
「仲間のために次につなぐ意識」などの意識から
フォアボールは生まれます。
Tは今年、フォア・ザ・チームの意識がとても強いのでしょう。

 

WBCの準決勝のメキシコ戦で、1点を追う9回、
先頭バッターの大谷選手が2塁打で出塁します。
続く吉田選手がフォアボールを選び、
無死1・2塁で次の村上選手に繋げました。

 

このとき吉田選手は村上選手を指さして
「お前が決めろ」という合図を
バッターボックスから送っています。

 

自分が決めてヒーローになることよりも、
ランナーを貯めることが必要な場面で、冷静にフォアボールを選び、
自分よりも若い次打者に、決めることを託したのです。
吉田選手のフォア・ザ・チームの精神が垣間見えた瞬間です。

 

同じことが経営に言えます。
どれだけチームの「一体感」を高められるかで、
経営の成果は大きく変わります。

 

京セラ創業者の稲盛和夫さんが、
人生・経営の成果の方程式を作っています。
「人生・経営の成果=考え方×情熱×能力」
とても有名な方程式なので ご存知の方も多いでしょう。

 

これを経営に特化して別の言葉に置き換えてみます。
まず、考え方=価値観です。
社員の価値観が揃ってくると、「一体感」になります。

 

次に情熱です。
ビジネスマンが何に情熱を燃やすのかといえば、
他社にはない「独自性」を創出することです。 

 

よって「経営の成果=一体感×独自性×能力」
と置き換えます。

 

このうち、保有する能力が発揮されるか否かは、
社員が属する組織の一体感や独自性の有無など
環境の影響を強く受けます。

 

そこで極端ですが
「経営の成果=一体感×独自性」と置き換えます。

 

そして一体感を10点満点、独自性を10点満点で採点し、
掛け算して経営の成果を100点満点で評価します。

 

例えば東京ディスニーランドを採点してみましょう。
社員同士の一体感は高そうですね。一体感=10点とします。
独自性は他にはないサービスを提供していますから10点。
すると、10×10=100点となります。

 

さて、あなたの会社は何点になるでしょうか?

 

私は、ビジョン開発プロジェクトや
幹部社員育成時の初回に、
この点数化を参加者にしてもらいます。
参加メンバー各自が付けた点数の平均をとるのです。

 

すると、最初から50点を超える会社は稀です。
一体感=7点、独自性=7点でも、49点にしかなりません。
もしあなたの会社が50点を超える会社だとしたら、
優良企業として胸を張って良いでしょう。

 

逆に点数が低ければ、根本的に見直さないといけません。
過去、私のクライアントで付いた点数の最低は
「一体感1点×独自性3点=3点」でした。
100点満点でたった3点です。

 

ある大企業子会社の、未達・赤字が続いた
50人ほどの商社でしたが、
これを見た社長は大変ショックを受けていました。

 

それを半年かけて、40点超まで持っていきました。
私が特に手を入れたのは「一体感」です。
「一体感」が上がると、組織内のコミュニケーションが活発になり、
面白いアイデアがどんどん出て、自ずと「独自性」も高くなります。

 

ではどうやって「一体感」を高めればいいのでしょう?
その一つが野球でいうフォアボールです。

 

フォアボールは、監督の指示命令で得られるものではありません。
上記の吉田選手のようにフォア・ザ・チームの精神で
自分の意志で勝ち取るものです。

 

それと同じで、「組織を良くしよう」「組織で良い成果を出そう」と
自分たちで話し合い、今やるべきことを考える。
そして、それを「皆で決めたことだからちゃんとやろう」と
腹をくくってやり続ける。

 

そうやってやるべきことをやっていると、成果が出てきます。
すると、だんだん自分たちのやり方に自信が持てるようになります。
この過程で一体感が上がってきます。

 

上記の「たった3点の会社」の場合は、
自分たち流の考えで見込み客リストを作って、
地道にアプローチする「出会い」を増やすことをやりました。
それが彼らにとっての出塁=フォアボールだったからです。

 

トップには「成果を出せ!」などと余計な口を出さず、
現場のリーダーのやることを見守って頂きました。
そして「出会った客を丁寧にフォローする」
「提案を工夫する」をしたところ、どんどん成果が出てきました。

 

その結果、一体感7点×独自性7点=49点まで上がり、
目標達成できたのです。

 

あなたの組織の「一体感」は何点ですか?
「フォア・ザ・チームの精神」を図る指標は何でしょうか?
Tのフォアボールに匹敵する
あなたならではの指標を探してくださいね。