vol.459「先の見えない恐怖を克服する方法とは?」

 V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.459

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「先の見えない恐怖を克服する方法とは?」

 

冬のオリンピックが始まりましたね。
今日は開会式。東京オリンピック同様に、
選手にはベストパフォーマンスを
発揮してもらいたいものです。

 

最初にメダルを期待できる競技はモーグルです。
5日に男子決勝、6日に女子決勝が行われます。

 

モーグルの特徴に、ジャンプ(エアー)があります。
高さ1.6メートルほどのジャンプ台から高く跳び、
空中での技を競います。
空中技の精度は、順位に影響する大きなポイントです。

 

今回は、このジャンプについて考えてみましょう。
もし、あなたがスキーで斜面を下っていて、
突然高さ1メートルほどのジャンプ台に遭遇したとします。
どうでしょうか?
空中高く跳び上がることができるでしょうか。

 

ほとんどの人は、できないと思います。
なぜなら、ジャンプ台を滑っていると、
着地点が台の影になって全く見えないからです。

 

斜面を滑っていて、行き先が見えなくなると、
人がそこに恐怖を感じます。
まして地面と自分の足が離れ、空中に放り出されるのですから
怖いと感じて当然です。

 

人は「怖い!」と感じると、腰が引け、しゃがみ込みます。
後傾の状態でジャンプ台から飛び出ししますから、
そのまま下に落ち、着地と同時に尻もちをつきます。
そして、そのまま雪まみれになって止まります。

 

この状態は傍から見ると
自分の意思で滑っている状態ではなく
板に滑らされている状態です。
それ止めるには、尻餅をつくしかないのです。

 

ところがモーグルの選手達は 華麗に空を舞います。
選手でなくても、モーグルのゲレンデに行けば
ゲレンデの隅の方に小さなジャンプ台がいくつも作られていて
若者はもちろん、子供達だってジャンプを楽しんでいます。

 

尻餅をつく人と、子供たち。
一体何が違うのでしょうか?

 

この違いは「踏み切り」です。
ジャンプ台に突入して空中に放り出される時に、
ジャンプ台を蹴って、自分から跳ぶ。
空中に跳び上がることを楽しんでいるのです。

 

これができている人は前傾のまま着地し、
尻餅をつきません。
板に滑らされているのではなくて、
自分の意思で板をコントロールしている。
だから楽しいのです。

 

そこで、尻もちをついた人に、
コーチは、次のようにアドバイスします。

 

「ジャンプ台から飛び出すとき、
自分で踏み切って、自分から跳んでごらん」

 

逃げるのではなく、
自分から谷に向かって跳び上がるのです。

 

すると不思議なことに、
板に滑らされてた時に感じたような怖さが消えます。
そして、空を飛んでいる感覚を楽しむことができます。

 

この感覚に慣れてくると、
次はもっと遠くへとかもっと高くとか、
ジャンプそのものを楽しむ余裕が出てきます。
もう、怖いと感じることはありません。

 

このことは経営でも同じです。
経営でも、気持ちよく滑っているつもりが、
突然目の前にジャンプ台が現れて、
先が見えない、足が地についていないと感じ、
「怖い」と感じることがしばしばあります。

 

特に昨今はコロナの影響で
原材料価格、光熱費とも高騰しています。
値上げをしても、それを上回る勢いで高騰が続きます。
材料が調達できず、生産したくても生産できません。
売り先はあるのに仕入れができず、売上が立てられません。

 

グローバル企業ではロックダウンの影響で、
海外に送ったコンテナが港に着かず、海上に留まったままです。
また陸揚げされたとしても陸送されず、売りが立ちません。
海外子会社への投資リターンがないまま時間が過ぎています。

 

来てくれるはずだった外国人は、来られない状態が続いています。
人の流動が止まり、観光地はまたしても閑古鳥が鳴く状態です。
期待していた人財が辞めてしまい、補充ができません。
たとえコロナが鎮静しても、人が採れる保証はありません。

 

どうしたらいいのか…
経営者にとっては先の見えない状態が続いています。
今が創業以来の危機だという老舗企業もあります。

 

が、そんなときこそ、経営者は目線を上げねばなりません。
もし今、「怖い」と感じているのなら
それを克服する方法はただひとつ。
「自分から跳ぶ」しかありません。

 

自分たちが目指していたことは何かを思い出し、
そのゴールに向けて、今できることを探すのです。

 

このとき、トップは何でも自分一人で抱え込まず、
こんな時だからこそ、周囲の人たちの
知恵と工夫と馬力を借りましょう。
そして、ONEチームとなって挑みましょう。

 

普段、気が付いていないかもしれませんが、
トップが「君の意見を聴かせて欲しい」
「一緒に考えてくれないか?」といえば、
頼られたことを意気に感じ、
モチベーションを上げる人ばかりでしょう。

 

そうすれば、「怖さ」を小さくすることはできます。
そして、今日打った手に少しでも手応えを感じたら、
それが「やれる!」というチームの自信となります。
自信が沸いてきたら、そこから先はもう大丈夫です。

 

もし今、少しでも怖さを感じているとしたら
まずは「自分から跳ぶ」と声を出し、
自分に暗示を掛けましょう。
そして、自分の主導権を自分に取り戻しましょう。