vol.457『トヨタの18番目のSDGsが凄すぎる』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.457

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『トヨタの18番目のSDGsが凄すぎる』

 

新年あけましておめでとうございます
イノベーションの担い手であるあなたにとって、
今年はどんな年になりそうでしょう?

 

今年も全力応援させていただきます。
どうぞよろしくお願いします

 

さて、ここでクイズです。
今や社会現象になったSDGsですが、
そのゴールは全部でいくつでしょうか?

 

当然、17だよと言われるかもしれません。
が、ここに18番目のゴールを設けている会社があります。
その会社が独自に設定したゴールです。

 

例えば、ベネッセは「超高齢社会」を18番目の目標に掲げています。
https://www.benesse.co.jp/brand/about/policy/

 

また、モスフードサービスは、
『心のやすらぎ』『ほのぼのとした暖かさ』を加えています。
18番目のゴールのイラストが
おなじみのMマークになっているのが印象的です。
https://www.mos.co.jp/company/csr/materiality/sdgs/

 

そしてトヨタ自動車は、
「さらに、すべての人に感動(ワクドキ)」を
18番目のゴールにしています。マークはハートです。
(一番下の方を見てください)
https://global.toyota/jp/sustainability/sdgs/

 

こうした各社が独自に設定したゴールからは、
その会社独自の使命感が強く伝わってきますね。

 

とりわけ、トヨタ自動車の
「さらにすべての人に感動(ワクドキ)を」はいいですね。

 

SDGsを「取り組まねばならい義務」だと
受け止めていた人の中には、
「そうだよな、これが足りなかったんだ」と気づき、
ハッとした人も多いのではないでしょうか?

 

私もその一人ですが、実際に今の時代、
「ワクドキ」は、とても貴重なキーワードです。

 

内閣府が毎年行っている世論調査でも、
「どのような仕事が理想的だと思うか」の回答の
第1位は「収入が安定している仕事」(60.5%)ですが
第2位は「自分にとって楽しい仕事」(57.6%)です。
https://survey.gov-online.go.jp/r01/r01-life/zh/z25-1.html

 

仕事の中で「ワクドキ」を追求し、楽しさを感じることは、
理想の仕事に近づくことなのです。

 

では、どうしたら「ワクドキ」は生まれるのでしょうか?

 

そのヒントが1月5日に放送された
「クローズアップ現代+」(クロ現)の
「“地元の逸品をプロデュースせよ”
生まれ変わる地域金融機関」にありました。

 

登場したのは、巣鴨信用金庫。
「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる巣鴨商店街にあり、
お年寄りに親切な金融機関と知られています。
が、今回はコロナにあえぐ中小企業を
職員が支援するというお話し。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4624/index.html

 

地域の中小企業が沈んでしまっては、
信金の未来はない。
その危機感を強めた理事長は、
奇想天外の方針を打ち出します。

 

それは、『脱・金貸し』。
「新規開拓件数」「融資残高」など、
金融機関の職員が当たり前に追いかけてきた
数字的ノルマを、なんと全廃したのです。

 

そして、職員の仕事は、
取引先の中小企業の経営者と一緒になって、
その会社の危機突破策を考えることになりました。

 

しかも、その突破策を考えるときの条件がすごいのです。
「財務諸表は見ない」「金をかけない」。
その上で、「経営者が気付いていない
『強み』を見つけ出し、そこを伸ばす」ことでした。

 

このことをコーチとして招かれ指導しているのは、
元銀行マンで中小企業約7,000社を
再生してきた小出宗昭さんです。

 

この指導に巣鴨信金の担当の次長は、
「正直言って、自分の両腕をもぎ取られて仕事をしろって
いうような感じに思えました。(信用)金庫人生の中で
そういうことがなかったので、すごい衝撃的でした」と困惑。

 

「財務諸表分析」と「金貸し」は
バンカーの彼にとっての両腕であり、
伝家の宝刀だったのです。

 

しかし、ここに落とし穴があります。
データを元に、相手を分析する行為は、
お客様に正面から「このままではまずいよ」、
「なんでこんなになるまで放っておいたの?」
「ちゃんと現実を見てください!」等評価を伝える行為です。
それは、やがて感情の対立を生み出します。

 

分析から生まれるのは評価者目線。
例えそれが正論であっても、
評価者と評価される側の関係である限り、
絶対に寄り添う関係になれないのです。

 

ところが、分析を辞め、
お客様がぶつかっている高い壁の話を聴き、
お客様の横に立って、その壁を一緒に見上げる。

 

そして「高い壁ですね…。でも、
絶対に越えなければなりませんね。
今できることを、一緒に考えましょう」と
仲間の目線で語り合うとき、
両者の間に気脈が通じて、『ワクドキ』の芽が生まれます。

 

あるいは、お客様が語る夢を聴き、
「面白いですね…それ、絶対にやりましょう!
方法論は別として、まずは『やる』ということだけでも
決めてしまいましょう!」などと話すとき、
やはり気脈が通じて、『ワクドキ』の芽が生まれます。

 

分析は相手を客観視し、
頭で考える、ものさしで相手を測る行為です。
一方「話を聴く」は、相手と一緒に壁や夢や見て、
身体で感じる行為なのです。

 

『ワクドキ』は、身体で感じない限り生まれません。
「クロ現+」では、巣鴨信金の職員(西谷さん)が取引先の
クリーニング店の社長の染み抜きの技を見つけ、
それを有料サービス化し、自らチラシを作成して
そのPRを手伝うシーンが紹介されました。

 

彼は社長から「タダでこんなに親身になってくれる
人はいないと思うんですよね。僕も何とか
自分の業績を上げたいのはもちろんですけど、
(それよりも)西谷さんの期待に応えたい」
と言われ、すごく嬉しそうでした。
彼の中にも社長の中にも『ワクドキ』が生まれていました。

 

『ワクドキ』を生み出すには、
評価者目線を捨てて、相手の話を聴き、
一緒にイノベーションを起こす仲間だという意識を持って、
相手の魅力を探すことから始めないといけないのでしょう。

 

ぜひ、あなたの会社でも、
18番目のSDGsに「ワクドキ」を加えてみましょう。
そして、どうしたら「ワクドキ」が増加するか、
考えて実践してみましょう。