vol.450「なぜ、モノをつくる前に人をつくる必要があるのか?」

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.450

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「なぜ、モノをつくる前に人をつくる必要があるのか?」

 

突然ですが問題です。
「モノをつくる前に人をつくれ」って言いますよね。

 

でも今は自動化の時代です。
マニュアルに従えば、誰もが同じモノをつくることができます。
それなのになぜ、モノをつくる前に人をつくる
必要があるのでしょうか?

 

この問いをクライアントのメーカーの人たちに
投げかけてみました。
すると、様々な意見が出ました。以下はその一部です 。

 

・マニュアルだけでは、改善ができない
・人が育たなければ新しいものは創造できない
・利他の心なければ、人の心に響くものは作れない
・人間ができていないと、マシンは使いこなせない …etc

 

これらを要約すると
この先50年、100年と続く経営を目指すのなら、
改善を重ね、新しいものを生み出す必要があります。
人が育てば、未来はある。
そのため人づくりは欠かせないのです。

 

こうした社員さんの意見を聞きながら、
私はある有名な経営者の講演を思い出していました。

 

講演者は、(株)スノーピークの会長の山井太さんです。
スノーピークは、コアなファンに
支持されているキャンプ用品メーカー。
コーポレートスローガンは「人生に野遊びを」です。

 

山井会長によると、自然の中でキャンプをすると、
親と子や、隣近所とのコミュニケーションが活発化し、
都会では失われがちなふれあいや助け合いが生まれ、
人間性が回復する。それを広げることが同社のミッションです。

 

そのため現在はキャンプ用品の製造販売だけでなく、
リゾート型のキャンプ場の運営や、
アパレルの開発と販売、都心で焚火を囲むイベント、
近年ではスノーピークイートというレストランも経営しています。

 

そんな革新を続ける同社の売上高は
2014年の55億から2020年は167億へ急成長。
山井会長は、講演会で以下のように語っていました。

 

(ここから)
「AIの発達によって繰り返し発生する業務や作業は、
もう人間の仕事ではなくなります。
人間は人間にしかできない仕事をするようになります。
それは真にクリエイティブな仕事です。

 

クリエイティブな仕事は、圧倒的な熱量から生まれます。
熱量が高い場所には、お客様が、社員が、情報が集まります。
そこにあるのは「ワクワク、楽しい、好きだ!」という感情です。

 

ところがAIには「好きだ!」という感情がありません。
「どっちが得でどっちかが損か」という、
合理的な判定を下すことができるだけです。
が、そのような判定をいくら重ねても、
熱量がないため、クリエイティブな仕事はできません。

 

今の主力商品が今後も売れ続ける保証はありません。
ビジネスモデルの転換を余儀なくされることもあります。

 

そうした時に、それを乗り越えられるのは、
好きなことに夢中になり、クリエイティブな仕事で
新しいものを生み出せる人だけです」
(要約ここまで)

 

つまり、持続可能な経営のために必要な
クリエイティブなアウトプットは、
あの北島康介選手のように、仕事をして
「超気持ちイイッー!」と叫ぶ人をつくらないと、
生まれないということです 。

 

では、社員の熱量を高めるには、
何をすればいいのでしょうか?

 

それがわかる面白い統計があるのでご紹介します。
2019年3月に「就職ジャーナル」が行った
社会人1000人へのアンケート結果です。
https://journal.rikunabi.com/p/advice/30610.html

 

このアンケートでは
「あなたは働くことが楽しいですか?」を尋ねています。
以下はその回答です。

 

楽しい=13.1%、まあ楽しい=34.7%
どちらでもない=25.7%、
あまり楽しくない=14.1% 楽しくない=12.4%

 

この統計で面白いのは、
「仕事が楽しい」と回答した人と
「仕事が楽しくない」と回答した人それぞれに
「何のために働くのか?」を質問していることです。

 

すると、「仕事が楽しい」と回答した人は、
以下のように回答しました。

「お金を得るため=62.3%
 自分の才能や能力を発揮するため=12.3%
 社会の一員としての務めを果たすため=11.6%
 生きがいを見つけるため=11.6%
 その他=2.1%」

 

一方、「仕事が楽しくない」と回答した人は、
以下のように回答しました。

「お金を得るため=87.7%
 自分の才能や能力を発揮するため=0.7%
 社会の一員としての務めを果たすため=2.9%
 生きがいを見つけるため=6.5%
 その他=2.2%」

 

ここから分かることは、
「仕事が楽しい」と感じている人に比べ
「仕事が楽しくない人」と感じている人は、
・自分の才能や能力を活かすこと
・社会の一員として貢献している意識
が圧倒的に不足していて、働くことの目的が
お金だけになってしまっているのです。

 

よって、「人をつくるため」に必要なことは、
まずは「あなたには〇〇の才能があるね!」とか
「あなたには〇〇の能力が身に着いたね!」のように、
社員の小さな成長を見つけホメることでしょう。

 

また「お客様がこう言って喜んでいたぞ!」とか
「見学に来た人が君の仕事ぶりに感心していたぞ!」と
第三者の評価を伝え、
「自分たちは結構凄いことしているんだ」
「自分たちは強く必要とされているんだ」と
一緒に喜ぶことでしょう。

 

それを積み重ねるうちに
「仕事が楽しい」と感じている人が増えてくれば、
その人たちが山井会長の言う「熱量」がどんどん高くなり、
組織としてクリエイティブなものを生み出すチカラが
高くなるのです。

 

あなたの会社の熱量はどうですか?
山井会長は、熱量を生み出すのは
トップの責任だと言っています。
まずはトップの「この会社と社員が好きだ!」の
熱量を高めましょう
そして「モノをつくる前に人をつくる会社」へと進化しましょう。