vol.449『「コロナ禍が開けたら新卒が消えた」は本当か?』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.449

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『「コロナ禍が開けたら新卒が消えた」は本当か?』

 

プロ野球でヤクルトとオリックスが優勝しましたね。
どちらも前年最下位からの逆転劇でした。
飛躍の原因は、どちらも若手選手の活躍です。
「若者が活躍するチームは強い」は、野球も会社も同じですね。

 

その若手ですが、先日、ある統計を見ていて、
衝撃を受けたのでお伝えします。

 

私が見ていたのは「名古屋市」の人口統計です。
https://www.city.nagoya.jp/shisei/category/67-5-5-7-0-0-0-0-0-0.html
以下は2021年の5月1日現在の若者の人口です。

 

25歳人口は、30,262人。
20歳人口は、22,154人(25歳比 26.8%減)
15歳人口は、18,168人(25歳比 40.0%減)

 

何と10年間で4割減ります。半数になります。
親世代が就職氷河期だったことが影響しているようです。

 

「コロナが開けたら新卒が消えた」。
巷でささやかれる言葉ですが、そうなるのは必定です。

 

安定した大企業は、それでも若者を確保できるでしょう。
が、中小企業にとってはどんなに手を尽くしても
若い人が採用できない大変厳しい時代になります。

 

ではどうすればいいのでしょう?

 

高収益企業になり、高い賃金を払い、
休みが取りやすい会社になること。
その上に、やりがい溢れる職場を作ることより他にありません。

 

では、どうしたら高収益企業になれるのでしょうか?
ここではプロ経営者と呼ばれる人たちが、
一般的に用いる高収益化へのステップをお伝えします。

 

まず、会社の中の個別の事業を評価します。
評価の視点は収益性が第一ですが、
それ以外に、成長性やリスクなども加味します。

 

ここでは A・B・C・D・Eの5つの事業があり、
それぞれの評価結果が以下だったとします。

 

A:◎◎
B:◎
C:〇
D:×
E:××

 

次に、DとEの事業の収益力を向上できないかを考えます。
原因を究明し改善するのですが、
長く値上げしていない場合は値上げの要請や
それまで無償で提供していたサービスの有償化を行います。

 

このとき、値上げが認めてくれるお客様とは付き合い、
そうでない会社との取引は縮小→解消します。
また、先に良くなる見込みがない場合は市場から撤退します。

 

こうして、浮いた経営資源を
見込みのあるA、B、Cに投下します。
あるいは、今後期待できる新事業Fに投下します。
いわゆる「選択と集中」を実行するのです。

 

次に、収益性の高い事業A、B、Cの DX化を進めます。
DX化の目的は「人を増やさずに利益を増やす」こと。
簡単に言えば「自動化・無人化・遠隔化」です。

 

そこで、収益性の高い事業A、B、Cで、
自動化・無人化・遠隔化できる業務がないかを探します。

 

・手書きでやっているものを、データで自動入力できないか?
・現場に行って確認していることを、遠隔でもできないか?
・当番制でやっていることを、当番などなくてもできないか?
・特定の場所でしかできないことが、どこからでもできないか?
・連絡ミスの多いところを、連絡不要でも済まないか?
・特定個人の技を、 誰がやっても同じようにできないか?
・こちらからの訪問が、向こうからの来社にならないか?

 

こうした視点でA、B、Cの事業をチェックすれば
ITを活用することで、生産性向上につながる業務が
随分あると思います。そこに投資するのです。

 

このとき、たとえ小さなことでも今すぐトライします。
なぜなら、中小企業のDX化で、最大のネックとなるのが
ITリテラシーの低さだからです。

 

手書きの資料をいつまでも用いているようでは
どこまでいっても低収益構造から抜け出せません。
「若者など絶対に来ない」と思って間違いないでしょう。
誰もがスマホで操作できる仕組みづくりが必要です。

 

こうして高収益事業体質への転換を図ります。
特に代替わりして若い後継者にバトンタッチした会社、
バトンタッチの予定がある会社は今がチャンスです。
保守的にならず、10年先の社員構成と
組織体制を思い描いて取り組みましょう。

 

そんな企業を後押しするIT補助金制度もあります。
是非検討してみてください。
https://smb.ricoh.co.jp/column/000147/

 

さて、DXを導入すればそれだけで
若者を採用できるわけではありません。
若い人を採用、定着するためにはさらに課題が3つあります。

 

第1は、若い人を育てる仕組みです。
業態にもよりますが、20代のうちに専門性を磨き
必要な資格取得などを保有する技術者に育てます。
すると30代以降、大変な戦力になります。
そのための教育訓練をしっかり施しようにします。

 

第2は、20代の社員には、いろんなことを相談する先輩が必要です。
もし新人が入っても、10歳以上年上の先輩しかいなければ、
20代の社員は相談できる相手がおらず、
孤独感を感じて辞めてしまうでしょう。

 

新人には頼れる先輩社員が必要です。
これから入ってくる人の先輩社員に当たる
今の20代社員が、新人のメンターになれるように育てましょう。

 

第3は、会社が働きがいのある場になることです。
経営者が、仕事の意義を繰り返し語り、
わが社の仕事のいかに素晴らしく価値のあるものかを伝え、
社員に誇りを持たせる必要があります。

 

また、上司と部下の関係だけじゃなくて
組織横断型のプロジェクトを起ち上げて権限を委譲し、
自分たちが主体となって会社を成長させて行く機会を創ります。

 

先日、私のクライアントで、今年入社した若者6人が集まって、
会社の魅力を発信できるようホームページを
全面的に見直すプロジェクトが発足しました。
こうした場を与えると社員たちはキラキラと輝き、
次に入社する若手社員の憧れとなるのです。

 

サスティナブルな会社を目指すのなら、
次世代の若者が、夢と希望を持って
入社し、あなたの会社を好きになってくれることが必須です。

 

今回ご紹介した視点で自分の会社を振り返ってみましょう。
そして、若者の4割減という「不都合な真実」と向き合い、
今やるべきこと明らかにしましょう。