vol.446「組織風土改革に成功した組織の共通点とは?」

 V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.446

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「組織風土改革に成功した組織の共通点とは?」

 

岸田総理大臣が誕生しましたね。
総裁選で彼は「自分の長所は聴くことができること」
だと主張していました。

 

これに対しマスコミは、
「聴く力は必要だが、人の言うことばかり聞いていては、
リーダーシップが発揮できないのでは?」と
疑問を投げかけました。

 

私はこのマスコミの疑問に違和感を覚えました。
このメルマガでも何度も伝えてきましたが、
「聴く力」はリーダーにとって絶対必要なことです。
そしてそれは、「誰かの言うことを聞く」こととは全く違います。
マスコミは、どうやらそれをごっちゃにしているようです。

 

「人の話を聴く」のは、問題発見のために現状を認識し、
問題解決の選択肢を生み出すための主体的な行為です。
一方「誰かの言うことを聞く」のは、
その誰かにコントロールされるという受け身の行為です。

 

このことについて、私が尊敬する
伝説の経営コンサルタント一倉定先生は
「社長は衆知を集めて独裁せよ」と言い切っています。
意思決定のために可能な限り多くの情報を集める。
様々な人の意見を聴く。反対する人の意見も聴く。
その上で、決めるときは一人で決めよという意味です。

 

これこそが社長の姿勢です。
なぜなら、誰かのいう通りに意思決定したとしても、
その責任を取るのは自分一人だからです。

 

だからといって人の意見を聴かなければ道を誤ります。
成功確率を高める意思決定をするには、
人の話を聴くことは欠かせないのです。

 

また、人の話を聴くことが大切な理由は他にもあります。
それは、聴かれた人のモチベーションが上がることです。

 

私は、社員が次々と離職する会社が風土改革に成功し、
笑顔溢れる組織へとV字回復した事例を
幾つも調べていきました。

 

すると、どの企業でも最初に行なったことが
同じであることに気が付きました。
それは、以下のような職場の環境改善です。
・危険や不安を感じる作業空間
・肉体的な過労に繋がる勤務形態
・精神的な苦痛を生むパワーマネジメント

 

この改善の過程で、リーダーは
社員が今、何に不満を持ち、何に苦しんでいるのか、
それをよく聴いて受け止めます。

 

この場合、社員は直接の上司や社長には
本音を話さないことも予想されます。
そこでコンサルタントなど第三者を入れて
意見を集めます。意見を聴く対象は全社員です。

 

すると、それまでその会社では常識だと思っていたことに対し、
「この環境ではこれ以上は無理です」等の意見が出てきます。
社長としては今まで自分がやってきたことを
社員からダメ出しされるわけで、耳が痛い思いをします。

 

が、それを受け止めて改めない限り離職は止まりません。
会社の未来のために、変えるべき所は変える
覚悟を持って聴きます。

 

もちろん、社員の意見には、
できることとできないことがあります。
全て聞き届けることなどできません。
優先順位を付け、できるところから改善していきます。

 

このヒアリングによって、社員の気持ちが変わります。
まず、不満を人に聴いてもらった後は
マイナスに転じた心がバランスをとろうとし、
モチベーションが上がります。

 

次に、自分たちの不満が受け入れられて
職場環境が少しでも改善すると、
リーダーが自分たちの方を向いてくれていることが分かります。

 

すると、嬉しくなります。
人は自分の意見が採用させて、
良い方向に変化が起きるとそれが嬉しいのです。

 

この時リーダーが、
「皆さんからこのような意見を頂いたので変えました。
本当は、皆さんに言われる前に、
自分が気が付かないといけないことです。
良い気づきと意見をありがとう」
と、お礼を言えば、なおさら嬉しくなります。

 

さらにリーダーが
「もっと良い職場にしたいから、
今後も変えた方がいいと思うがあったら
どんどん意見を言ってくださいね」
とお願いすれば、現場からの改善依頼や改善提案が
次々と出てくるようになります。

 

こうして嬉しい気持ちになった社員は、
返報性の法則からリーダーにお返しをしようとします。
リーダーを喜ばせるにはお客様を喜ばせることです。
そこで、お客様のために今まで以上に張り切って仕事をします。

 

これがアウトプットする品質の向上や納期遵守、
コストダウン、プラスアルファの提案等に繋がります。
これによりお客様の満足度が向上します。
そして、お客様がさらに注文をくれます。

 

それに対応するため、
経営者は資金を投下し、供給力をアップします。
その過程では設備投資や人の採用を行います。

 

このとき、設備投資や人材の採用に関しても
社員の意見を聴きます。

 

どうしたら会社がもっと良くなるのか?
新人にもやりがいをもってもらえるのか?
プロジェクトを起ち上げ、そこに参画してもらい、
一緒に考えてもらうのです。

 

そうして稼働した新たな設備や採用した人材は、
社員たちにとっては「自分が選んだ設備、人材」です。
この意識が、設備を大事に扱おう、
人材を大事に育てようの気持ちになります。
その結果、業績が回復し、組織風土が好転するのです。

 

以上が、離職多発組織がV字回復していくプロセスです。
その最初には、必ず「社員の話を聴く」があります。
「聴く」と、見えなかった問題が見つかります。
「聴く」と、問題の解決策が見つかります。
「聴く」と、相手のモチベーションが上がります。

 

社長は、社員の話を聴く機会を創りましょう。
社員の話を聴くこと以上に
重要な仕事のなどないのですから。