vol.427『2020年度、高収益だった企業の共通点』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.427

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

『2020年度、高収益だった企業の共通点』

コロナ禍の影響でどこもかしこも決算は厳しい…
そう思われていた3月決算ですが、
私の周囲の社長に話を聴いてみると、
減収・増益だったという会社が少なくありません。

例えば、売上100億超のある商社の女性社長は
20年度を次のように振り返ります。

「当社は、18年度の売上が130億。
19年度が123億。そして、20年度は約105億。
2年前比で約2割減です。

しかしながら、
20年度の経常利益は19年度を上回ります。

年商が大幅に落ちたのは、
コロナの影響による需要減や、相場変動の影響。

一方、経常利益アップ最も大きな要因は、
5年前に参入した太陽光の新エネルギー事業の貢献です。
当社は太陽光発電の増設を続けていますが、
この事業は「コロナ知らず、自粛知らず」(笑)。

また、社内の各部署内でも、
常に「新規取り組み=多角化」を図っており、
何かが倒れても、別の事業で代替できる
リスクを最小限に抑えられる強い体質になっています。

また、地道なことですが、全ての部署で
時間当たり付加価値向上を目指し
利益率アップを目指し、成果が出ています。

さらに以前から『お客様からの感謝=数字』だと
繰り返し伝えてきました。
社員一同そのことをしっかり腹に落していて、
高い目標を掲げることの本質的な意味を理解し、
お客様からどうしたら感謝してもらえるか、
どこまでやれば褒めてもらえるかを真剣に考え
逆境にも挫けずチャレンジしてくれています。

こうした効果から、20年度は大幅減収で
社員数も増え、経費も増えているにも関わらず
増益を果たせました」

皆さんはこの話を
どのように受け止められましたか?

実は、20年度に増益を果たした企業には
ある共通点があります。
それは、事業の柱が一つでないこと。

世界遺産であるギリシアのパルテノン神殿を
思い出してみてください。
いくつもの柱があって屋根を支えていますよね。

それをモチーフに、いくつもの事業で会社を支える戦略を
「パルテノン戦略」といいます。
好業績企業は、この「パルテノン戦略」を取っているのです。

ビジネスでは「選択と集中」こそが、
勝ち続ける秘訣だと言われてきました。
しかし、あまりにも一つのものに集中しすぎると、
万が一それが失われた時に大打撃を受けます。

・事業が1つしかない
・客先が1件しかない
・売り方が一つしかない
・特異な技術者・技能者が1人しかいない
・全体をわかっている人が1人しかいない
代わりがないというのは、大変なリスクなのです。

このうち、売り方について解説しますと、
モノでもサービスでも、売り方は訪問販売・店頭販売・
通信販売・催事販売・配置販売の5つあります。

例えば、不動産屋は店頭販売が主流でした。
が、いつしか、ネットで選ぶ通販の様相を呈してきました。
どれだけ物件の映像を魅力的に見せるかが
売れ行きを左右します。

そのため、社員数30数名の小さなある不動産屋は
社内に動画制作専門部隊を起ち上げました。
社員はそれができる専門の若者を複数、新規で採用。
そして、自社物件のPR動画を作成しました。

すると、それを見た同業者から動画制作の依頼が殺到。
この新規事業は収益を生む事業へと育ちました。
売り方の多様性が、新たな収益の柱になっています。

私が連載している朝日新聞の
webサイトの『ツギノジダイ』。
今回が書かせていただいた大阪の村岸産業は
社員数20数名の化粧筆のOEMメーカーです。

コロナの影響で化粧品需要は激減しました。
当然、化粧筆の需要も激減します。

が、その穴をクラウドファンディングが埋めました。
詳しくは下記サイトをお読みいただきたいのですが、
化粧筆の技術を用いたボディブラシを開発し、
現在、売上の3割強をクラウドファンディングで稼いでいます。

OEMは訪問販売ですが、クラウドファンディングは
通信販売です。
販売の多様化に成功し、5000人以上のファンを獲得したのです。
https://smbiz.asahi.com/article/14334562

外食産業にケーキなどの洋菓子を提供している
OEMメーカーも、コロナ禍の影響をまともに受けました。
1年前、注文が激減し人も機械も遊んでしまいました。

そこで、急遽自社ブランド品を開発し、
洋菓子を地元のスーパーで販売したところ、これが大好評。
「売れている」事実が次々と新しい客を呼び込み、
1年前では考えられなかった多様な市場開拓が進んでいます。

こうした事実に、社長は「わが社の底力を見る思いだ」と目を細め、
社員たちは今、ワクワク希望をもって働いています。

コロナ第4波の到来で再び緊急事態宣言が出されました。
私たちはさらに多様化せよ、環境に合わせて変化せよ、
と言われているような気がします。
それは、自社の中に眠る可能性を拓け、というシグナルです。

海外からは100年ぶりの二刀流選手の活躍が届きました。
投げてダメでも打てばいい。両方できたら、なお良い。
多様化の大成功例ですね。

私たちもこの連休中に、今一度自社に眠る可能性を
見直してみましょう。
そして、社内に希望を創っていきましょう!