vol.426『松山選手の快挙と劣等感克服法』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.426

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『松山選手の快挙と劣等感克服法』

 

一週間前になりますが、マスターズで
日本人の松山英樹選手が優勝しましたね。
素晴らしい快挙でした。

 

優勝の瞬間、なぜか泣けてしょうがなかったです。
タイガーウッズ選手が松山選手に寄せたコメントは
「あなたとあなたの国におめでとう」。

 

黒人として初優勝したタイガーウッズ選手には、
ゴルフでメジャーを制する意味が分かっていたのでしょう。
日本人が欧米人に抱く潜在的に持っている
劣等感から解放された瞬間でした。

 

これまで何人ものすごい日本人選手が挑みました。
そして、常に跳ね返されてきました。

 

それが積み重なり、いつしか私は
「メジャーなんかとれるはずがない」と
無力感を覚えていました。
そして「欧米人の方が向いている」というように
勝手な理屈をつけて自分を納得させていました。

 

一度身に着いた劣等感は、
「そんなことはないよ。絶対勝てる日が来るよ」と
信じ込もうとしたところで、克服できません。
劣等感を克服できるのは、事実によってのみ。
そしてそれが実現した時、大きな開放感を得ます。

 

例えば2011年、沖縄の興南高校が甲子園で
春夏連覇を成し遂げました。
この頃、私は仕事で度々沖縄に行っていたので、
当時の沖縄の雰囲気をとてもよく覚えています。

 

夏の甲子園の時は、もう甲子園一色でした。
研修の仕事だったのですが、
受講生から「先生、興南高校やっていますよ」と言われ、
オフィスをのぞいたら職場全員でテレビ観戦していたので
もう研修どころじゃなくなって、
仕事を切り上げた記憶があります。

 

タクシーに乗っても、運転手の話は甲子園の話ばかり。
そして優勝したときは、
「長年のしまんちゅうの夢が叶った」と
街中でカチャーシーを踊っていました。
沖縄の皆さんが、内地のチームに対し抱き続けた
潜在的な劣等感から解放された瞬間でした。

 

劣等感は誰にでもあります。それは会社も同じです。
中小企業の社員であれば、会社の規模が小さい、
信用がない、世の中に社名も商品も知られていないなど、
劣等感を抱いているのが普通です。

 

こうした劣等感は、「どうぜ自分たちにはできっこない」
「無理だよ、やめておこう」「大企業には適いっこない」など、
モチベーションダウンの引き金になります。

 

が、劣等感とは本来その人が持っている魅力に
気づいていない人が勝手に抱くもの。
ひとたび自分の良さに気づき劣等感から解放されると、
大変意欲的になります。

 

松山選手が優勝した直後から、
ゴルフスクールに申し込む子供たちが増えているといいます。
2年前、ラグビースクールでも同じ現象が起きましたが、
これは「自分にだってできるはずだ」という
自信や自分自身への期待の表れです。

 

ゆえに、社員を潜在的な劣等感から解放し、
「自分にだってできるはずだ」という
意欲を引き出すのは経営者の重要な仕事なのです。

 

ではどうしたらそれができるのでしょうか?
そこで今回は、中小企業特有の潜在的劣等感を
克服する方法をお伝えします。

 

そのひとつが、「自社肯定感」を高めることです。
自社肯定感とは、「わが社はすごい!」という肯定感です。

 

社員が「わが社は大したことない」と思ったら
本当に大したことのない会社になってしまします。
逆に社員が本気で「わが社はすごい会社だ!」と思ったら、
本当にすごい会社になります。

 

そのためにはまずは社員が
「わが社はお客様に役に立っている」
「大変喜ばれている」「強く必要とされている」ことを
事実として認識する必要があります。

 

それには、「お客様の喜びの声」を聴くことです。
お客様の喜びの声を聴けば、社員は自分の仕事を
「これは大切な仕事なんだ」と理解します。

 

また、自分の仕事が同業他社にはない独自のもので、
そこが評価されていると気づいたら、
社員は強い誇りを感じます。

 

例えば、あなたの会社の業界には
「解決されないまま放置されている悪しき慣習や
『なんでそうなの…』とよくいわれるクレーム、
『ここまでしてくれたら助かるのに…』との要望」
はないでしょうか?

 

その慣習やクレーム、要望に対し、
「わが社は徹底的に○○にこだわっています。
ここまでやるのは、業界内でもわが社だけです」
といえる、独自の商品やサービスがあれば、
それこそお客様にPRすべき差別化ポイントです。

 

しかも、なぜ「ここまででやるようになったのか?」を、
その歴史的な経緯を物語で伝えれば、
社員が、先人たちがどんな想いでこの仕事を始めたのかを
理解し、真摯に受け止めます。

 

そして、「○○にこだわってここまでやる
わが社はすごい!」の想いを一層強くするのです。
もし、わが社に上記のような独自性がないのであれば
今からそれを見つけて実践すればいいでしょう。

 

どんな業界にも「それが常識だから」と
放置されている悪しき習慣、クレームはあります。
コロナ禍の影響で常識が崩れている今だからこそ、
「ここまでやるのはわが社だけ」を見つけ
それを引き金に頭一つ抜け出しましょう。

 

私たち日本人は、松山選手に劣等感に立ち向かう勇気と
そこからの開放感を貰いました。
その勇気を、あなたと社員が抱えている劣等感の克服と、
開放感に繋げて行きましょう。