vol.424『なぜあの会社には、有能な転職者が集まるのか?』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.424

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『なぜあの会社には、有能な転職者が集まるのか?』

 

桜が咲き始めましたね。
緊急事態宣言も解除されて、
気持ちも随分晴れやかになりました。

 

そんな中、前々回のこのメルマガで紹介した
(株)近藤印刷の近藤起久子社長から
次のようなメールが届きました。

 

「今、弊社では『事業再構築補助金』に挑戦中です。
今朝もリーダーの皆と内容について詰めました。
このとき、私が【自由な働き方のエシカル工房】になるために、
どんなものが欲しい?』と尋ねるだけで、
皆から、設備やシステム、サイト作り、広告費など、
どんどん皆からアイデアが出てきます。
あー、ビジョンを作っておいてよかった!!(←ブルゾンちえみ風に)」

(註)【自由な働き方のエシカル工房】は
社員皆で策定した同社の2025年ビジョンです。

 

このメールを読みながら、私には近藤印刷の皆さんが、
まるで寄せ鍋をしているような光景を思い浮かべました。

 

ビジョンは寄せ鍋のようなものだと言われています。
出汁の香り漂う鍋に惹かれて皆が集まってきて、
鍋の中に自分の想いを具材のようにボンボン投げ込みます。

 

すると、グツグツと煮込んでいる(議論している)うちに
とっても美味しそうな何かが出来上がります。
それが何なのか、皆がワクワクして鍋の中を覗き込む。
そんな光景が脳裏に浮かんだのです。

 

このような会社では、当事者意識の強い
主体的な管理職が育ちます。

 

現在、至るところでDX化が進んでいます。
今後10年間、事務仕事の多くはAIに置き換わります。
職場からは、AIに仕事を奪われた事務職が
どんどん消えていくでしょう。

 

一方で不足する人財もいます。中間管理職です。
現場の社員たちの思いを汲み取り、
働きやすい環境を整える存在。
また社長の想い咀嚼しながら現場に伝える存在。
そして社長に対して進言、諫言ができる存在。
これらの仕事はAIにはできません。

 

AIは、一定のルールの中で行われる仕事は大得意です。
ところが、AIは絶対に東大に合格できないと言われています。
なぜなら、AIには読解力がないからです。
国語と英語の試験では、人間の方が高い点を取るのです。

 

経営者や管理職の仕事には、この読解力が欠かせません。
従って10年先は、会社の中に経営者と管理職、
そして非正規労働者しか残らないと予想されています。

 

つまり、企業がどれだけ有能な管理者を抱えているかで
企業の持続的成長性は左右されるのです。

 

そのことをよくわかっている経営者は、
プロパー社員の育成はもちろんですが、
中途採用による管理者の採用にも成功しています。

 

私のクライアントでもその傾向は顕著で、
田舎を拠点とする社員数200人ほどの企業であっても、
いくつもの外資企業を渡り歩いてきたような方や、
上場企業の複数の海外拠点でマネージャーを務めてきた
50歳前後の人が転職先として集まってきます。

 

そこで、そのような地方の中小企業に転職してイキイキと働いている方々に、
なぜこの会社を選んだのか、インタビューしてみました。
すると、その中の一人は次のように答えました。

 

「私は、いわゆるブラック企業でしか働いた事がありません。
利益を出すことこそが正義だと思ってずっと働いてきました。
その一方で、ホワイト企業と呼ばれる会社があるのだと知りました。
人を大切にし、ちょっとずつ成長しようとする会社って
どんな会社だろうと疑問を持ち、憧れを抱いたのです。
そこで、求人はなかったのですが、
この会社に入りたいと社長に志願したら、
運良く採用してもらえました」

 

また、別の一人は次のように答えてくれました。

 

「自分が採用面接を受けた時、社長からいろいろ質問されました。
その後で『是非私からも質問させてください』と、
逆質問をさせていただきました。その質問は
『社長は、貴社をどんな会社にしたいのですか?』です。

 

すると、社長からこんな回答をいただきました。
『私は、【いい会社】にしたい』。

 

それを聞いて拍子抜けしてしまいました。
そこで『【いい会社】とはどんな会社ですか?』と確認したら
長野県にある伊那食品工業のような会社のことだと言います。

 

『【いい会社】とは単に経営上の数字が良いというだけでなく、
会社をとりまくすべての人々が日常の会話の中で
「いい会社だね」と言ってくださるような会社のこと。
【いい会社】は自分たちを含め、
すべての人々をハッピーにするのです』

 

私は今まで、会社は儲けることしか
考えたことがありませんでした。
こんな田舎に、こんな経営品質志向の人がいたんだと。
その考え方に共感し、入社することを決めました」

 

この2人の転職者の話を聞きながら、
私は、改めて社長がビジョンを描いてそれを見せ、
「一緒にやらないか」と語ることこそが
社長の仕事であり、磁石のように有能な人を
引き寄せるのだと確信しました。

 

同社では今、中期経営計画を策定中ですが、
その姿は、まるでビジョンという鍋を気の合う仲間で囲み、
自分の想いという具材を入れて
皆で楽しく寄せ鍋をしているかのようです。

 

あなたの会社にはビジョンという寄せ鍋はありますか?
あれば、大丈夫です。

 

もしないのならぜひ、志を同じくする人が集まってきて、
自分の想いを自分から投げ込みたくなるような鍋を、
是非一緒に創りましょう。
そして何が飛び出すか、それを楽しみにしましょう。

 

ビジョン開発に興味のある方はぜひこちらをご覧ください。
https://vjiken.com/consulting/vision.html