vol.423『ビジョンはできた。で、次は何をする?』

 V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.423

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『ビジョンはできた。で、次は何をする?』

 

前回このメルマガでビジョン開発の話をしました。
魅力的なビジョンができると、社内の一体感が高まります。
そのことを、体験された経営者の生の言葉でご紹介しました。

 

が、ビジョンは描いたらそれで終わりではありません。
肝心なのはその後です。

 

ビジョンを描いたら、
社長には早速取り組んでいただきたいことがあります。
それは、ビジョン実現時の「名前のない組織図を描く」ことです。

 

例えば、5年先のビジョンであれば、
そのときの会社の姿から、
社内の組織がどうなっているかを描きます。

 

このとき注目していただきたいのは部門です。
5年後あなたの会社にはどんな部門があるでしょうか?

 

一般的な会社であれば、
総務、人事、経理を司る管理部門、
メーカーなら生産を司る生産部門、
問屋なら調達を司る購買部門、
営業司る営業部門は欠かせないと思います。

 

この他に開発部門やシステム部門、
マーケティング部門が必要な会社もあるでしょう。
複数の事業を営んでいる会社であれば
事業毎に部門が必要かもしれません。

 

こうして未来組織図ができたら、
次にそれぞれの部門長の役割を明確にします。
この役割を明確にすることによって、
社長の役割と部門長の役割を切り分けることができます。

 

特に中小企業は、社長が社長でありながら
部門長の役割を兼務してしまい、社長本来の役割を果たせず
それが原因で、成長が止まってしまうことがよくあります。

 

例えば社長は次のような役割が求められています。
「3年後、5年後の戦略立案」「組織文化の醸成」
「経営方針の浸透」「人材発掘」「新市場開拓」「外部提携」等。

 

こうした業務は未来を創る仕事ですから、
社長が担い、全集中しなければなりません。
にもかかわらず、マネージャのごとく日々
数字の管理に明け暮れている社長がいます。

 

そのような仕事は、本来ならマネージャに任せるべき仕事です。
役割を明確にすると、そのことに気が付きます。

 

役割が書けたら、次は具体的に誰が役員や部門長として
その役割を担うのかを考えてみます。

 

このとき、社内の人材で将来の部門長候補がいれば安心です。
が、もし適任者がいないのなら、社内で育てる必要があります。
その場合は、育てる仕組みを考えなければいけません。

 

また、適任者が見当たらない場合は、
外部より招聘する必要があります。
この場合も、求める人材像が明確なら、
早く確実にその候補者と出会うことができます。

 

さらに、組織図を作った後は
それぞれの部で、何人ぐらいの人員が必要かを考えてみます。
この人数を合計すると5年先のわが社の社員数がわかります。

 

その社員数に想定される平均賃金を掛け算すれば
5年先の人件費が算出できます。
人件費は固定費の中で最も大きな経費ですから、
そこから逆算すれば必要な5年後の売上高が見えてきます。
このようにしてビジョン実現時の売上高と利益を概算します。

 

先日私が指導しているある会社の経営者が
このやり方で5年後の名前のない組織図を作り、
人件費を算出してみました。

 

すると必要売上高が現状の3倍になりました。
想定外の大きさでした。

 

そこで社長は、5年後に実現したいと思っていたビジョンは、
方向性としては間違ってはいないが、
5年間で実現するのは性急すぎるのでは?と考えました。

 

そこで当初の5年ビジョンを10年ビジョンへと置き換えました。
そして、10年後ビジョンから逆算して
5年後はここまで到達しているべきだという
10年と5年のW(ダブル)ビジョンを考えてみました。

 

そうしたところ、この社長にはWビジョンがしっくりきて
まずは5年先ビジョンの実現へ全集中することにしました。
このような気づきをくれるのも、名前のない組織図を作る効果です。



社長にとって5年先10年先は、
決して見えない未来ではありません。

 

未来を予測しようとするから見えないのであって、
「わが社は、きっとこうなる」と決意すれば、
ありありと見えてくるものです。

 

震災から10年。津波に流された街は、
様々な姿で、暮らしやすい街に生まれ変わりました。
復興を実現したのは、被災地から逃げることなく
「故郷をこうしたい」という、人々の強い想いでした。
まさに、ビジョンの力が今の姿を生み出したのです。

 

是非、5年先、10年先の未来を描いてみましょう。
そして、そこから逆算して今日何をすることに
全集中するのか考えてみましょう。