vol.412『2-6-2の最後の2を再生するには』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.412

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『2-6-2の最後の2を再生するには』

人は集団になると2-6-2に分かれます。
意識高い系が2割。普通が6割。意識低い系が2割です。
今日はその意識低い系の2割をどうするかについて
考えてみたいと思います。

 

先日、ある社長と、
「意識低い系の2割をどうしたらいいか」議論しました。
この社長は「群れの理論」をよく勉強していました。

 

例えば働き蟻は、全ての蟻が働いてるように見えますが、
よくよく観察すると、2割ぐらいは
何もしないサボり蟻がいます。

 

そのサボり蟻ばかりを集めて集団を作ると、
8割はちゃんと働くようになり、
残り2割はサボるという観察結果が出ています。

 

この2割のサボり蟻は、意図的にサボっています。
それは、万が一外敵に襲われた時の用心のためだと
考えられています。

 

働き蟻は体力を消耗しているので、
外敵に襲われると簡単にやられてしまいます。
ところがサボり蟻の体力は有り余っています。
そこで外敵に立ち向かい、群れを守るのです。
つまりサボり蟻は、戦のない時代の侍みたいなものなのです。

 

私たち人間の集団も似たようなケースがあります。
普段、落ちこぼれ呼ばわりされている不良たちが
震災時にバイクを飛ばして援助物資を届けるなど、
市民を大活躍で助けてくれたという話は有名ですね。

 

また、組織全体が目標に向かって熱くなりすぎると
カルト教団のようになってしまうリスクがあります。
それを恐れて「自分だけは冷静でいよう」と
わざと無関心を装う冷めた人が一定割合出てきます。

 

よってどうしても、意識低い系と言われる存在が
一定数を出てしまうのです。これが「群れの理論」です。
したがって
「意識低い系の2割は放っておくしかない」というのが
社長の考えでした。

 

私も、それが正しいと思っています。が、今年の春、
あるクライアントからこんなオファーを頂きました。

 

もともと好成績だった営業部員が
最近あまり成果が芳しくない。
彼らを4か月かけて再生したいので手伝ってほしい。

 

指導に当たるのは私と、コンサルタントのB先生です。
私は受講生のマインドセット(動機づけ)を担当しました。
そしてB先生は、新規開拓に欠かせない
テレアポのスキルをマンツーマンで教え込みました。

 

そうしたところ、コロナの影響で
予定より時間がかかりましたが
なんと全員、V字回復したのです。

 

一体何が良かったのか。彼らがプロジェクトの最後に、
自らの行動を振り返って発表した中にヒントがありました。

 

最も変化したのは、
全員が「それまでの自分は間違っていた」と、
過去の自分を否定したことでした。
そして、これからは「毎日これを完遂する」という
明確な目標を持っていました。

 

当初、私が彼らと面談した時は、全員が
「自分のやってきたことは間違っていない」と考えていました。
では、どうしてそれが間違っていたと気づいたのか。

 

それは、B先生が教えたテレアポでした
研修の当初、彼らはこれが全然できませんでした。
日頃、親密先ばかりに足を運ぶ営業しかしていなかったので、
新規開拓をする力が全くなかったのです。

 

それをB先生に見本を示してもらい取り組みました。
すると徐々にアポイントが取れるようになってきました。
皆、B先生に褒めてもらえるようになりました。


こうなると、だんだん仕事が面白くなります。
そのうち「今日は何件かけて何件アポイントを取るぞ」と
自分で毎日目標を設定し、それを追いかけるようになったのです。

 

一般に人が変化する時は、次のような流れだと思われています。
「情報に触れる」→「意識が変わる」→「行動が変わる」
→「アウトプットが変わる」→「評価が良くなる」。


この高評価に気を良くして意識が高くなり、
更に行動量が増えていくサイクルです。

 

ところが、このような人は全体の2割しかいません。
意識高い系の2割だけが、
情報に触れただけで、自分の行動を変えられます。
そして、早々に成果を出すのです。

 

が、残りの8割は、情報に触れたところで
行動を変えるところまでは行きません。
「へぇ、そんなこともあるんだね」ぐらいで、
聞き流してしまいます。

 

残りの8割の行動が変わるサイクルは以下です。
「アウトプットが変わる」→「評価が良くなる」
→「意識が変わる」→「行動が変わる」。

 

8割の人は、アウトプットを見て、
それが評価されているのを見て、
「あれをするのがいいんだな」と気づき、
それから行動が変わります。


彼らは常に安心を求めているので、
うまく行くやり方を見て、実際に自分でやってみて、
上手くいくと確信してからでないと、行動に移せないのです。

 

したがって、8割の意識を変えるには、何はなくとも
「とにかくやってみてください。必ず上手くいきますから」
と言って強制的にでもやらせ、
何が何でも成果を出してもらいます。
そして成果が出たら、それを一緒に喜びます。
B先生は、そんな指導をし、皆を変えたのです。

 

彼らの変貌ぶりを見て、
私は、新しいやり方を覚えさせること。
そこに自信が持ち、「これまでの自分は間違っていた」と
気づけた人は必ずV字回復できるのだと確信しました。

 

これは企業も同じですね。
「これまでのわが社は間違っていた」と自分にダメ出しし、
「では何をすればいいか」が、明確な企業は必ず再生します。

 

「人も企業の必ず変われる」。
コロナ禍によって様々な前提が崩れた今年だからこそ、
この気づきを、来年につなげていきたいと思います。