vol.390 『コロナ災害を乗り切る主役はだれか』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.390

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『コロナ災害を乗り切る主役はだれか』

 

「継いだばかりで、従業員から
値踏みされている感じがします。
信頼を得るにはどうすればよいでしょうか?」

 

以前、後継者の方からこんな質問を
いただいたことがあります。

 

無理もありません。
総理大臣や大統領が代わったとき。
プロ野球の監督が代わったとき。
私達は常にそれまでのリーダーと比較します。

 

そして後継者に実績のないうちは、
期待はしますが、評価はしません(できません)。
その間、後継者は自分がどう評価されるのか
ずっと不安を抱えたままです。

 

実際にある小売りチェーン店の社長は、
自分が専務だった時代に、
自分が社長になったきに社員から
以下のように言われたらどうしよう……
と恐れていました。

 

「私は先代の部下ではあるが、
あなたの部下ではない。
私はあなたの指示には従わない。
あなたを社長と認めない」

 

実際には、こんなこと言う社員はいません。
いたとしても小説の中だけの話でしょう。
しかし、そういう小説を読んで自分に置き換えて
そのことを恐れてしまう。
後継者とは、そのくらい重い十字架を背負っています。

 

「値踏みされている不安」。
それを打ち消す唯一無二の方法は成功体験です。
「あれをやったのは自分だ」と自負できること。
そして周囲が「あのときの危機を乗り越えられたのは
あの人のおかげだ」と認めることです。

 

学生時代、体育会の先輩から「酒井、何で大学4年生が
こんなにもでかい顔できるかわかるか?」
と尋ねられたことがあります。

 

私が分からずにいると、こう教えてくれました。
「あのな、夏合宿を何回も経験したからや。
4年は地獄のような合宿をたくさん経験している。
だから大きな顔するのは当然なんや」。

 

35年も前の話なので、時代錯誤感は否めませんが、
いくつもの困難を乗り越えた人が
周囲の人から信頼され、頼られるのは、
体育会でも会社でも同じです。

 

上記の小売りチェーン店社長の場合は、
専務時代に幹部社員を巻き込んで
経営ビジョンを開発しました。

 

そして、その後自分で描いたビジョンを
いくつも実現しました。
ビジョン開発から3年後、
彼は周囲の厚い信頼を得て社長に就任しています。
自分の力で成果を出したことが、自信になったのです。

 

このような視点から考えれば、
今回のコロナ災害のような経営のピンチは、
社長はもちろんですが、
後継者に任せる部分を多くして
後継者への求心力を高める千載一遇の好機です。

 

ただでさえ、今回のショックを乗り切るには
資金的な手当をだけでは足りません。

 

・リモートワーク体制で回るマネジメント体制の構築
・オンラインを使ったプロモーションの仕組みづくり
・巣ごもり消費時代の新たな商品サービスの開発
・AIやIoT、5Gを駆使した生産性の向上
・第二、第三波に備えたリスクマネジメント
・自主廃業する会社をM & Aしてサービスを拡充
・大手が手控える今こそ新卒採用
など課題は山積みです。

そして、これらの課題のほとんどにICTが絡んでいて
ICTリテラシーの低いベテランでは
致命的な遅れをとります。

 

ICTを用いて進めていく大きな課題は、
スマホを自在に操る後継者の世代に任せてみましょう。

 

最後にテストです。
かの矢沢永吉さんは、
「敵」について次のように語っています。

 

「お前達には敵がいる。
その敵はいつか油断していると
牙を向いてくるぞって。
真正面から牙を向いてくるぞ。
それが何か、”敵”を教えるぞ。
”苦労したことがないってこと”」

 

あなたはこの言葉に触れて
「俺、大丈夫じゃん」と思いましたか?
それとも
「俺、ヤバいじゃん!」とドキリとしましたか?

今この時に、思いっきり苦労した後継者は、
いつか矢沢永吉さんのこの言葉を聞いた時に、
「あ、俺は大丈夫だ」と思えるでしょう。