vol.391 『鳥インフルエンザ禍をチャンスに変えた人』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.391

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『鳥インフルエンザ禍をチャンスに変えた人』

 

「丸亀製麺」の経営母体の名前をご存知ですか?

 

トリドール・ジャパンといいます。
同社の創業は焼き鳥のチェーン店。

 

お客様に名前を覚えてもらうために
「トリドール」にしたと言います。

 

トリドールは郊外型のファミリー居酒屋として繁盛し、
2004年頃には上場準備まで行きました。
が、鳥インフルエンザの流行で大打撃を受けます。

 

そのピンチを救ったのが、
同社が2000年ごろから展開していた
新業態「丸亀製麺」です。

 

粟田社長の父が香川出身で、帰省した時に、
製麺所に長蛇の列を成しているのを見ます。

 

そして、既にトリドールで成功していた彼は
「自分がやってきたことは何だったのか」と思うほど
衝撃を受けたと言います。

 

香川の製麺所は、店内で麺を打って、茹でて
うどんを出す、セルフうどん店。
お客様は、ざるを持って並びながら、
その製造工程を全部見ています。

 

これまで粟田社長はテーブルの上に出す商品と、
それに付随するサービスを一生懸命に磨いてきました。
が、「製造工程を体験する」という、
お客様の潜在ニーズがあることに気づいたのです。

 

そこで、加古川市で「丸亀製麺」を始めます。
読み通り、最初からヒットしますが、
この業態は、以下の欠点がありました。

 

各店舗ごとに製麺機等機械を持つので設備投資がかかる。
面積をとるから家賃高い。
水は出しっ放し、釜は焚きっ放しで水道光熱費がかかる。
手づくりなので人手がかかる。
人は辞めるので、採用・教育コストがかかる。

 

結果的に固定費は通常の倍はかかってしまいます。
そのため、社内外から次のように言われます。

 

「セントラルキッチンを作れば
もっと利益のあるんじゃないか」
「そんなに属人的な仕事をしてたんじゃ
いつまでたっても大きくなれないぞ」

 

そのたびに「なぜお客様が足を運んで来てるのか?」
社長は全社員と自問自答します。

 

そして、「製造工程を体験することに
お客様は少なからず価値を感じている。
そこを『効率化したい』という自分たちの都合で
勝手に変えてはいけない」と考え
ぶれることはなかった、といいます。

 

結果的にこのスタイルを貫き、
2000年代半ば~後半にかけて多数登場した
郊外型ショッピングセンタのフードコート需要に乗り
同社はうどん業界のNo.1になっていきます。

 

No.1に成った要因のひとつが、
敢えて固定費が高い店舗運営をしていたこと、
結果的に参入障壁を高くしました。

 

同社の理念は、
「すべては、お客様のよろこびのために」

 

現在、コロナ災害の影響で、本来業務の
見直しが進められています。
効率化も重要なテーマでしょう。

 

が、このとき「なぜ自分たちが選ばれているのか?」を
忘れないようにしましょう。
そしてそこだけは残して、
今やるべき変革を進めていきましょう。