vol.381『覚悟を育む2つの条件~コロナと闘う医師に学ぶ~』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.381

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『覚悟を育む2つの条件~コロナと闘う医師に学ぶ~』

突然ですが YouTuber になってみました。
今まで2回アップしています。
早速チャンネル登録してくれた方もいて、嬉しい限りです。
よろしければこちらからご覧ください。

【V字研チャンネル】

https://www.youtube.com/channel/UChxoKvIkX32iK-jwHYmGr9A/

 

先日アップした第2弾の動画をご覧いただいたお客様から
研修の引き合いをいただきました。
同社はコロナの影響で工場の稼働率が2割ダウン。
その時間を人材育成に充てたいとおっしゃいます。

 

世間では営業マンの外出自粛など
暗いムードが漂っています。
そんな中、ピンチをチャンスに変えようと、
強い気持ちで挑んでいる経営者は大勢います。

 

前向きな人たちに出会うと、こちらも勇気を頂きます。
今号では、そんな強い気持ちがどこから来るのか
考えてみたいと思います。

 

世界各国のコロナ対応病院の光景がTVに流れます。
そこで目につくのは、防護服に全身を包んだ
医療従事者が必死で働いている姿です。

 

医療従事者が感染するケースが数多く報告されています。
そんなリスクを背負いながらも、
彼・彼女たちは患者を救うために必死で働いています。
その使命感の強さにとても感動します。

 

ある開業医が、以下のブログをアップしていました。


「私は日本の医師です
どれだけコロナが吹き荒れようが外出禁止になろうが
絶対に外来に立ち続けます。
それは私を頼ってきてくださる患者さんがいるからです。
この国の医者はみんなその覚悟で外来に立っています。
自分がこの地域のこの国の自分の患者を命をかけて守る。
その一点の気概で見えない敵と戦い続けています。
自分がかかってどうしようなんて、
思っている医者はいませんよ…たぶん。
仮にいたとしたらそんな医者はもう外来にいないでしょう。
ですので皆様、是非助け合って励まし合っていきましょう」

 

これを読んで、医療に従事するという仕事は
覚悟を持たないとできないのだと思い知りました。

 

ではその覚悟はどうしたらできるのでしょう?
もちろんそれは人それぞれだと思いますが、
彼らに共通しているのは、医師の場合であれば
その道を志してから、大学受験に合格するまで数年。
学業で6年。その後の研修医として2年。
一人の医師として仕事に就くまで10年以上の時間を費やします。

 

これだけの長い間、同じ志を持ち続けることは
並大抵ではありません。
様々な現実に直面し、
心が折れそうになったことが何度もあったと思います。

 

看護師も薬剤師も同じぐらい長い時間を費やして
プロフェッショナルへと成長します。
そうした時間の長さが、覚悟を養う要因かもしれません。

 

長い時間が覚悟を育む。
それは企業の後継者も同じかもしれません。

 

今回のような経営危機を迎えますと、
社員は自由に転職することができます。

 

ところが、経営者だけは逃げ出すわけにはいきません。
どんなことがあろうがここでやり抜くしかないのです。
もし将来の見込みがないのなら自分で幕引きをするか、
自らの手で将来の見込みを創り出すしかありません。

 

会社を継ぐということは、
何があっても逃げない覚悟を決めるということです。

 

そのためには、私はこれまでのコンサルティング経験から
2つの条件が必要だと思います。

 

一つは、後継者が後継者という仕事を、
「自ら選択した」という事実を作ることです。

 

「たまたまこの家に生まれたから」継いだ、とか
父から「継いで欲しい」と言われたから仕方なく継いだ。
などの気持ちがあったら、
今回のような経営危機に直面した時に
「自分はこんな会社の経営は本当はやりたくなかった」と
言い訳が出来てしまいます。

 

すると上記のような将来の見込みを創る
バイタリティなど生まれるはずがありません。

 

昨年イタリアでお会いしたある優良企業のオーナーは、
生来の後継者の候補者が15歳の頃に、
次のように言って聞かせていると教えてくれました。

 

「私があなたに伝えたい最初のそして最も重要なアドバイスは、
人生の選択をすることです。 あなたの選択です。
あなた方一人ひとりがバイオリン奏者、医者、骨董品販売店など、
好きな職業に就くことは自由ですが、
起業家や会社に参加したいのなら、
あなたはその選択について完全に明確にしなければなりません。
そうすれば、こうあるべき自分に近づいていきます。
人生の選択は、一種の決意です。
あなたが『知る必要があること』を、学ぶ意欲をもっているかどうかです。
学ばなければ有能になれません。
無能であると、有能な誰かからコントロールされる危険があるのです」

 

親がこのように問いかけられた子供は、
その後どの道を進もうがそれは「自分が選んだ」ことになります。
自分の道を自分で決めること。それが覚悟を育む第一条件です。

 

覚悟を育む条件の2つ目は、
医師への道と同じく
入社までに長い時間をかけることです。

 

この言葉を教えてくれたオーナー一族には
自分の会社に入社するために、
以下のルールを設けています。
「大卒で、イタリア語を含み最低2言語が完璧に話せること。
他の会社で働いた経験と海外勤務の経験が計4年以上必要」

 

イタリアでは上記以外の会社でもほぼ似たようなルールを
ファミリー憲章という形にしてオーナー一族で共有しています。
共通しているのは、入社するまでに、
10年近い歳月と人並み以上の学習を求めていることです。

 

自分で選択した事実と修行期間の長さが、
次の時代を背負う覚悟と、
新たなイノベーションを生み出す挑戦心を育むのです。

 

コロナと戦う世界中の医師の姿を見て、
覚悟を持って生きることの尊さを改めて感じました。

 

今後、首都封鎖などのこの国に訪れるかもしれません。
終息までにはまだまだ時間がかかるとの見方もあります。

 

そうした時が訪れても、冷静に、自分の覚悟に忠実に、
それぞれの道のプロフェッショナルの自覚を持って
今できることに挑んでいきましょう。