vol.368『壁がある。だから行く』
2019/12/20
V字研メルマガ
1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.368
by V字経営研究所 代表 酒井英之
『壁がある。だから行く』
今年もいよいよ大詰めですね。
あなたにはどんな年でしたか?
今年は、AIやIoTによって私たちの仕事がどう進化するのか。
その具体的な姿を目の当たりにした一年でした。
神奈川県では最低賃金が1000円を超えました。
これからは繰り返し発生する仕事は、
どんどん無人化が進むでしょう。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/z4r/info/saichin.html
先頃中国から帰国した友人は、
無人コンビニ、無人スーパー、無人レストラン、
無人タクシー、無人バスなどを体験したと言っていました。
近い将来、わが国でもスマート化が進むと思われます。
そうなると、人に求められることは
何かを生み出すという創造的な仕事のみとなります。
その創造性の源になるのは、
「困っている人を助けたい」という思いやりと
何が何でもそれを実現する熱情です。
その思いやりと熱情を、
クボタのトラクター工場を見学させて頂いた時に
大変強く感じました。
クボタといえば、
ドラマ「下町ロケット・ヤタガラス編」で描かれた
GPSで動く無人耕運機の開発企業として有名です。
が、私が見たのはそれよりずっとチャレンジャブルな姿でした。
現在お米農家の大きな悩みは、収入です。
十分な収入があれば、自ずと後継者は現れます。
そこでクボタは、米農家が多くの収入が得られるよう
AIによる営農支援システムを提供しています。
「米農家の収入=米の値段×米の収量」です。
お米の値段は、お米が美味しければ高くなります。
お米の美味しさは、タンパク質含有率で決まります。
タンパク質含率が5.5~6.5%だと美味しく、
それ以上でもそれ以下でもいけないのです。
ところが同じ田んぼでありながら
収穫したお米のタンパク含有率が、
場所によってバラツキがあります。
土質や土壌肥沃度が微妙に異なるのです。
寿司屋など食味にこだわるお客様はそれを知っていて、
「この田んぼのあそこで採れたお米が欲しい」と言います。
売り手も、同じ田んぼのどこで採れたお米かで
お米の値段を変えています。
これが均一だったら、それだけ美味しいお米が増えます。
そして、米農家の収入も上がるのです。
そこでクボタは田んぼをエクセルのシートのように
細かく一つ一つのセルに分けます。
そのセルごとに、
現在の食味(タンパク含有率)、収量、
土質、土質肥沃度、施肥量、苗の生育情報、
害虫の存在、気象情報、水量等のデータを集め、
ビッグデータ解析をします。
そして美味しいお米が目標値以上に収穫できるよう
セルごとの課題を明確にします。
肥料が足りなければ、どんな肥料をいつ
どのくらい施せばいいのか?
害虫がいたらどんな薬を散布すればいいのか?
美味しい状態で収穫する
ベストなタイミングはいつか?
など、施肥、施薬、収穫計画を立案してくれるのです。
このような管理をすることで
同じ田んぼからの収量は25%以上向上、
タンパク質含率のばらつきも改善され、
お米の美味しさの向上を実現しています。
後継者不足には「辛さ解消」という課題もあります。
下町ロケットのドラマでは、
「農作業は辛い。だから後継者がいない。
そのつらさから解放するには
無人の耕運機が必要」という理論でした。
が、まずビジネスとして収入が上がること。
そのためのストライクゾーンを定めて、
その結果が出るような仕組みを作ること。
辛さ解消のための無人化も大切ですが、
収入増は持続性を維持するため喫緊の課題なのです。
そこに気付くのも、
「困っている人を助けたい」という思いやりと
何が何でもそれを実現する熱情があるからでしょう。
クボタのスローガンは
「壁がある。だから行く」
https://www.youtube.com/watch?v=gr9ZkXZNiTQ
この言葉は、困っている人のために
挑戦し続けているみんなのものですね。
来年も、お互いに壁を越えるべくがんばりましょう!