vol.367『アマゾンは、なぜ翌日に届くのか?』

2019/12/07

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.367

 by V字経営研究所 代表 酒井英之

『アマゾンは、なぜ翌日に届くのか?』

 

12月ですね。年末は荷物が動く時期ですね。

 

しかしこんな年末でも Amazon は、
ちゃんと納期通りに商品を届けてくれます。
どうしてこのように納期が守れるのか。
私は不思議で仕方ありませんでした。

 

その謎が解けたのは、今から3年前。
アマゾンの物流センターの映像を見て衝撃を受けました。
棚ロボというロボットがひっきりなしに動いていたのです。

 

この映像を初めて見た時、
私はなぜ棚が動いてるのかさっぱり分かりませんでした。
しかし後半の解説を見てようやく理解ができました。
https://www.youtube.com/watch?v=Xbw0U6xfc9E

 

例えば、出荷の担当者が私が頼んだ3つの品を
一緒に梱包して発送する準備をしているとします。
従来であれば、3つの品をピッキングするために、
担当者はセンターの中をあちこち移動します。

 

が、棚ロボを入れるとその必要はありません。
棚の方から、担当者の横にやってきます。
品物が3つですから、棚が3台続けてやってきます。
担当者は、やってきた品物を取り出して籠の中に入れ、
後は梱包するだけです。

 

入荷の時も同じです。
入荷の担当者の前に棚が動いてやってきます。
担当者は入荷した商品を、目の前の棚に詰め込むだけ。
自分が歩くことが全くありません。

 

つまり棚ロボは、ピッキングのための歩行を0にする
画期的なものなのです。

 

先日、ある有名アパレルの物流センターを
見学させていただきました。
そこでは約100台の棚ロボが動いていました。

 

そこで問題です。
皆さんはこの棚ロボの価格は、
一台いくらだとお考えでしょうか?

 

この会社では、棚ロボを入れるまで
物流人件費は年間10億円かかっていました。
ピッキングの人材がそれだけ必要だったのです。

 

この当時の一人1時間当たりピッキング数は100個。
そして一人1時間あたりの出荷数は60箱でした。
ところが、棚ロボを入れたことにより、
一人1時間あたりのピッキング数は400個、
一人1時間あたり180箱に増加しました。

 

結果的に一人当たりの生産性が3倍になり、
物流人件費を年間3億円削減することができました。

 

さて、問題の棚ロボ一台の値段ですが、
正解は500万円です。
100台購入しているので総額は5億円です。

 

500万円と聴いて「高い!」と思われるかもしれません。
が、一年で3億円のコストダウンを実現したので、
物流センターとしては約1年半で元が回収できます。
1台500万円でも、とても安い買い物だと言えるでしょう。

 

このアパレル会社によりますと、
棚ロボのソフト会社は中国企業ですが、
実に献身的にサポートしてくれると大変喜んでいました。

 

また、一番下のドライブと呼ばれる動力部分はインド製です。
日本製のドライブに比べると、スピードが軽自動車と
シューマッハぐらいの差で速いとのことでした。

 

私はアパレルのセンターを見ながら、
ここに携わっている中国やインドのエンジニア、
そしてセンターの方も、みんなとても楽しんで
仕事をやっていると感じました。

 

生産性が3倍にもなるということは、
それだけですごくやりがいのあることですが、
それ以上に棚が動いて人に近づいてくるという
逆転の発想が形になっていく。
そこにワクワク感があると感じたからです。

 

Google では顧客起点でアイデアが浮かんだら
「10倍スケールで考えよ」とのルールがあります。
アイデアは思いっきり発散してから収束するもの。
奇想天外に動く棚ロボを見ながら、
自分の発想はまだまだ小さすぎると感じました。