vol.360『「SDGsで会社はどう変わったか」』

2019/10/11
V字研メルマガ

1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.360 
V字経営研究所 代表 酒井英之

「SDGsで会社はどう変わったか」

「SDGs」って言葉を聞かない日はないですね。
SDGsは国連が定めた、2030年までに
こんな社会を創ろう!という戦略目標です。

昨今は随分認知されるようになり、
かつての ISO のように企業の成長に不可欠な
ものになりつつあるのではないかなと思います。

そんな中、ある自動車部品製造業の社長が
「わが社はSDGs部品製造業です」と
おっしゃるので大変驚きました。

そこで、いったいどういうことか
詳しく聴いてみました。

この会社は、鋳物のメーカーです。
鋳物は、鉄を溶かして砂で作った型に入れ、
それを冷やして固めて作る
非常に古い歴史がある技術です。

が、その現場は大変に熱く汚くて埃臭く、
さらにアンモニア臭が強烈な3K職場です。

同社は、主に自動車部品を作っています。
主力商品は、1ロット2万個です。
が、最近になってオーダー数が
一気に200万個という大きな単位に変わりました。

これは、自動車業界の
「世界の部品の共通化」によるものです。
これは中小企業に応えられるオーダーではありません。
また、200万個の生産オーダーに対応できる会社は
日本国内にはありません。

よって同社は2万個の受注を失うリスクに直面します。
長期トレンドの中で、
この傾向は今後加速すると予想されます。
これは同社にとって死活問題です。

そこで今、同社はあるオーダーに力を入れています。
それは、「たった10個ですが作ってくれませんか?」という
超微量のオーダーです。

この微量のオーダーは、発展途上国から来ます。
途上国では現在、日本では廃車寸前の軽自動車が
重要な産業資本として機能しています。

途上国の方々は貧しく、新車には乗れません。
が、物を運ぶためには
軽トラックや軽自動車が欠かせません。

それには、壊れた時に直す補修部品が必要です。
この補修部品は、メーカーに頼んでも
生産が終わっているため手に入らないのです。
それを作って欲しいという依頼です。

問題は採算が合うかですが、
オーダーいただく補修部品の1個当たりの価格は、
2万個の部品の1個当たりの約200倍でも売れます。

そのため、微ロット部品でも多品種受注すれば、
2万個の部品を生産した時と同じ付加価値を
稼ぐことができるのです。

こうした多品種微量で求められる部品のことを、
社長は「SDGs部品」と呼んでいます。
なぜなら、SDGsの1番は「貧困をなくす」
9番に「産業と技術革新の基盤をつくろう」
10番に「人や国の不平等をなくそう」があるからです。

途上国で活躍する中古軽自動車の補修部品を作ることが、
「貧困の解消」や「地域の発展」「不平等の解消」に
役立つと考えるからです。

また、この転換により社員のモチベーションも上がりました。
2万個の部品に1個でも不良品を発生させようものなら
発注主の若い社員が飛んで来て、
同社のベテラン社員を叱責することがありました。

その光景は、こちらに非があるはいえども
口惜しく耐え難いものでした。
また、2万個の製品を無事に収めたところで
感謝もされず、褒められもせず、
やって当たり前という顔しかされません。

ところが、このSDGs部品を納めると
途上国のお客様にとても感謝され、喜ばれるのです。
そのことが現場に伝わると、
現場の社員はとても喜びます。
仕事の手応えを感じられるのです。

つまり、同社は上記のような転換を進めることで
SDGsの8番の「働きがいも経済成長も」も
実現しているのです。

これがSDGsを経営に積極的に取り込んでいる
企業の姿です。
あなたの会社でも、SDGsについて
真剣に考えてみてはいかがでしょうか?