vol.361「今更聞けない『コト売り』って何だろう?」

2019/10/18

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.361

 by V字経営研究所 代表 酒井英之

「今更聞けない『コト売り』って何だろう?」

「モノを売るな、コトを売れ」という言葉をよく聴きます。
「コト売り」という考え方が、随分定着しました。
そこで今回は「コト売り」とはどのようなことを言うのか、
おさらいをしたいと思います。

「コト売り」は簡単に言うと、
日常では体験できない特別な体験を提供することです。

特別な体験にはおよそ二つあります。
一つは見て聞いて感じてびっくりする体験です。
もう一つは、学習です。
今まで、自分ができなかったことが
できるようになって自分が成長していく実感です。

すると、利用者は「こういうの、いいなぁ」と気づきます。
それからその体験に道具や材料をご購入いただく。
あるいは、もう一度その体験がしたくなった人に、
2度3度と繰り返し利用していただく。
こうして、売り手は実績を上げていく。

そのために感動体験を提供したり、
学習機会を提供する。これがコト売りです。

マーケティング史上、最も有名なコト売りは、
昭和40~50年代に盛んに行われたピアノの販売でしょう。

ピアノは元々日本にない楽器で、
ピアノを弾く習慣も日本にはありませんでした。
ピアノ一台はとても大きくかつ高額なものです。
しかし、当時大変に普及しました。
何故でしょうか?

それは、音楽教室があったからです。
子供達は音楽教室で音楽を学び、
家でも毎日練習したほうがいいという事に気づきます。
そこで子供たちの教育の重要性に気づいた親が
ピアノを購入したのです。

メーカーの立場でいいますと、
最初から一般家庭への普及を狙ったのではなく、
まずピアノ音楽教室を作ります。
ここにピアノを提供します。
そしてその教室から紹介を受ける形で、
一般家庭へとピアノを普及します。
まさにはモノを売る前にコトを売っているわけです。

このような売り方を参考に、
今の時代の売り方を考えるのが「コト売り」となります。

また、特別な体験という視点では、
三重県にある「モクモクファーム」の体験提供が
とてもユニークでリピーター獲得に
貢献しているので紹介します。
http://www.moku-moku.com/syokunou/hitosigoto.html

ここには「おはようビレッジ」という宿泊施設があります。
ここに宿泊すると、宿泊者は朝6時半から30分間、
ファーム内の仕事のお手伝いをしなければならない、
という義務があります。

選択肢は季節によって変わりますが、
乳牛の世話/シイタケの栽培のお手伝い/
小動物の世話/ブルーベリーの収穫などです。

こうした作業を、宿泊者は
社員さんに教わりながら一緒にやります。
そして仕事が終わったら、朝食をその社員さんと一緒に食べます。

私は家族でブルーベリーの収穫の
お手伝いをしたことがあります。
収穫後、朝ごはん会場でブルーベリーを食べながら、
子供が体験を通して気づいたことを
社員さんにいろいろと質問をします。
これは、親にも子供にもとても楽しい時間です

この体験を、子供は学校で友達に話します。
学校には同じようにモクモクファームに
泊まったことがある子供たちがいて、
一体どんな体験をしたのか情報を交換します。

「乳牛の世話をして面白かったよ!」という子がいたら、
「今度は自分も乳しぼりがやりたい!」と思います。
そして親に「もう1回連れて行ってよ!」と言い、
リピーターに繋がるのです

お客様をおもてなしすることはとても大切ですが、
このように自分たちの仕事の一部を担っていただき
何かを「学んでいただく」こと、
そしてその後フランクな会話の場があることは、
お客様の満足度を高めます。

お客様には少し負荷を与えた方が
お客様の満足度は高くなる。
そう認識していただくといいでしょう。

コト売りの形は千差万別で、
ここで紹介したものはその一部にしか過ぎません。
ポイントは、お客様だけでなく、
提供する側も楽しんでやることです。

ヤマハ音楽教室は開業以来、
「音楽性を豊かにすれば、
教養が高まると同時に、
将来の生活を明るくいたします」
の理念で経営しています。

あなたの会社の理念に忠実なコトの売り方を、
あなたの会社でも練り上げてみてはいかがでしょうか?