vol.359 『心栄え(こころばえ)がする会社』

2019/10/4

V字研メルマガ

1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.359       
by V字経営研究所 代表 酒井英之

『心栄え(こころばえ)がする会社』

ラグビーのW杯、日本中が盛り上がっていますね。

ラグビーといえば、元明治大学ラグビー部監督の
北島忠治さんの言葉「前へ」が有名です。
昨日も利用したトイレに
「あと一歩前へ」という表示がありました。
この表示を見るたびに、北島監督を思い出します。

こうした表示がトイレに貼られるのは、
それが徹底できていない証です。
ちゃんとできていたら表示する必要がないからです。

先日、クライアントの皆さんと
企業見学で訪問した岐阜県関市の鍋屋バイテック会社は
5Sが本当に行き届いたとてもキレイな会社でした。
https://www.nbk1560.com/company/recruit/newgraduate/factory/

同社は鋳物工場です。高熱で溶かした鉄を、
砂型に入れて固め、それを取り出して割り、
削り、塗装して製品を造ります。
そのため、埃や煤などの粉塵が舞い、大きな音や振動がし、
独特のアンモニア臭がするのが一般的です。

ところが、同社にはそのような音も振動も臭いもなく、
室内はとても綺麗です。
これらはそのような設備を施したからですが、
見学したメンバーが一様に驚いたのは、
壁に「整理整頓を徹底!」や「5Sで品質向上」など
職場の標語めいた表示が何ひとつないことです。

にもかかわらず、職場にはゴミひとつ落ちていません。
道具や備品は取り出しやすいように片付けられています。
台車や什器は通路に平行直角に定位置に並べられていて、
通路にはみ出てるなんてことはありません。

見学後の質疑応答で、メンバーから同社役員に
「なぜこのように徹底できるのですか?」と尋ねても、
「さあ特に力を入れているわけではありません。
5Sをすると報奨金が出るとか、そんなこともありません。
社長も会長も暇さえあれば現場を回り、
社員に声がけしているくらいです…」と首を傾げるばかりです。

それでも普通は徹底できないことを当たり前にできるのは
何か決定的な違いがあるだろうと思っていると、
同社には先代の経営者が語った
以下の言葉があることが分かりました。

「良い環境をつくる→工場がキレイになる→
心栄え(こころばえ)がする→良い製品ができる→
評価が高まる→毎月の見学者・来場者が増える→
社員が挨拶する・褒められる→
工場をキレイにすれば社員のプライドが戻る」

鋳物工場は上記のような3K職場です。
時に自分達は何の為に働いてるのか見失うリスクがあります。
そうしたことがないよう、
トップは常に社員に誇りを持たせる環境を創る。
その根本にあるのが、
「心栄え(こころばえ)」第一の考え方です。

同社はこうした5 S の考えを入れて
もう20年以上経っています。
一般的に企業が社風や考え方の改善に取り組んで、
それが当たり前にできるようになるには
20年かかると言われています。

なぜなら、社風を変える時、
一番影響を受けやすいのは新入社員だからです。
この新入社員が20年経つと、
40歳を超え役職としては課長あるいは部長クラスになります。
新しい考え方の人財が会社の中核を担うことで、
改革が当たり前の風土として定着するのです。

同社は毎日15分の清掃時間があります。
コピー用紙を一枚一枚重ねるような
「心栄え」のための、毎日15分×20年以上。
述べ1250時間以上の積み重ねが、
他には真似できない風土を育んでいます。

あなたの会社の壁にはどんな言葉が掲げてありますか?
それがなくてもできるようになる日を夢見て、
今日も小さな努力を重ねましょう。