vol.505「テスラが当たり前に走る時代に考えたい『意味消費』」

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.505

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「テスラが当たり前に走る時代に考えたい『意味消費』」

 

先日、クライアントの社長の車に乗せていただきました。
愛車がテスラになっていたのでとても驚きました。

 

理由を尋ねると「試乗してみたらなんて面白い車なんだ!と
びっくりしたんで衝動買いしちゃいました」。

 

テスラは先頃、価格を大幅に下げたモデルを投入しました。
社長によると「クラウンと同じぐらい」とのことでした。
「クラウンを買うか、テスラを買うか」という選択肢の中で
テスラが選ばれたということです。

 

ここで テスラの魅力について考えてみましょう。
例えばテスラを買った人は必ずこう聞かれるでしょう。
「 なぜテスラを買ったのですか?」

 

昨年秋、私はノアの新型を購入しました。
が、誰からも「なぜノアにしたのですか?」と聞かれません。
半年になりますが、家族以外から聞かれたことはありません。

 

たぶんそれは、ノアに限ったことではないでしょう。
500万以下の車の場合、まず聞かれないと思います。

 

なぜならそれを買った理由が、
単に広い居住性だとか、ワンボックスにしては
燃費がそこそこ良いとかの、機能を求めてたからです。

 

機能を求めて消費することを「機能消費」と言います。
機能消費は、同じ機能を持つものであれば、
安い方が良いに決まっています。
よって購入の決め手は「価格」になります。

 

そしてそのような商品を知人が購入したとしても、
大して興味は持たないのです。

 

ところが、 テスラを買った人は、
「あえてテスラを買った理由」があるはずです。

 

まだまだ電気スタンドは限られています。
充電の速度も早くなったとはいえ30分はかかります。
そうしたリスクを押してでもテスラを買うということは
何かテスラユーザーになる魅力があって
その魅力を求めているのです。

 

こうした魅力を求めて消費することを「意味消費」といいます。
意味消費は、価格勝負ではありません。
意味を求めているので、その意味が他にないものであれば、
価格が高くても買うのです。

 

車の場合500万以上の車であれば
意味消費だと言われています。
レクサスを買った人は「なぜレクサスにした?」と聞かれるでしょう。
BMWやベンツを買った人も「なぜ BMW なのですか?」
「なぜその車種なのですか?」などと聞かれるでしょう。

 

私のクライアントの常務がBMWのバイクに
乗っていたことがあります。
なぜわざわざBMWのバイクに乗るのか尋ねたら、
常務はお客様に次のように言われたから、とのことでした。



「常務になった以上、前のめりにがんがん攻める姿勢が大事だよ。
そのためには、毎日乗る乗物から前向きなものを選ぶべきだ。
バイクに乗るんだったら、駆け抜ける喜びが味わえる
BMWに乗りなさい。販売店は私が紹介してあげるから」

 

そして、実際にBMWのバイクに乗ってみたら
「これは今までのバイクと全然違う、とっても快適だ。
気持ちもどんどん前向きになってきたのです」

 

このお客様の紹介文に出てくる『駆け抜ける喜び』は、
BMW社のコーポレートスローガンであり、
お客様に提供している価値を表す言葉です。

 

BMWは商品を通してこの価値を提供していて
消費者も、その価値を意味消費してるということです。

 

こうした「意味消費」は 高額商品の販売を可能にします。
最も身近な意味消費は、ホテルや旅館です。

 

ホテルは機能消費であれば、ビジネスホテルのように
1万円から2万円ぐらいの範囲です。

 

ところが、そのホテルや旅館に宿泊することが
特別な意味を持つと、1泊4万円以上の値段でも
あっという間に予約で埋まります。

 

例えば西伊豆のホテル「WEAZER西伊豆」は、
2人1泊12万以上ですが、
予約がなかなか取れない状態です。

 

それは、以下のようなコンセプトのホテルで、
1棟しかないからです。

 

「WEAZERは太陽光から電気を、雨水から水を自給する、
オフグリッド型居住モジュールです。

 

オフグリッドとは、電気や水道などの既存のインフラから独立し、
電力や水を自給している状態を表す言葉です。
文字通り当施設の客室内は電気や水道、ガスに接続しておらず、
電気は太陽光発電、水は雨水を濾過・滅菌することで賄っております。

 

また特殊な浄化装置により、汚水排水が発生しないため、
施設周辺の環境を傷めることもありません。

 

自然の力でエネルギーをつくるので、CO2の排出量はゼロ。
環境に優しく、あらゆる場所での滞在・居住を可能にします」

 

食事は、同社が別会社で経営しているイタリアンレストランに
電気自動車で送迎してもらい、そこでいただきます。
https://www.chillnn.com/1836d2246923a9

 

ここに泊まりたいと思う人は
宿泊という機能を求めているわけではありません。
「どこまで 地球環境に優しくなれるか」
そのような意味を求め、体験したくて泊まるのです。

 

こうした「意味消費」の商品開発は
大企業にはなかなかできません 。
大企業が得意なのは「大量生産」大量販売」です。

 

販売力が強いために安くて良いものを大量に売りさばく
ビジネスモデルを追求します。
売上100億円以下の新規事業案は社内で相手にされません。

 

その点、中小企業にとっては、
たとえ売上が10億円でもとても魅力的な事業です。
そして その意味が尖れば尖るほど、
その意味を求めるお客様と出会うことは容易になっています。

 

ネットで発信すれば、共感する人が集まります。
意味消費に満足したお客様は、 SNSで情報を発信してくれます。
するとさらに、その意味に共感する人が集まります。
意味消費は、尖れば尖るほど、共感者を募ることができます。

 

低価格品を作って量産量販しようとしても
中小企業には限界があります。
それよりは高価格品を開発したニッチトップを狙いましょう。

 

日本人は真面目な民族ですから、
機能重視で意味消費を考えるのが苦手です。
学校で優等生だった大手企業の社員が苦手な意味消費こそ、
アフターコロナの突破口です。

 

もはやテスラは珍しいものではありません。
貴社のアフターコロナの戦略の一つに、
意味商品の開発を加えてみてはいかがでしょうか。