小島庄司氏

小島庄司氏×酒井英之

中国に進出した日本企業は、現地とのトラブルが絶えません。赴任者はその一つひとつを解決しなければいけないのですが、背景にある考え方や習慣がまるで違います。そこで頼られているのが、小島社長が設立したDao and Crew(通称DAC)。日本人の習慣、考え方にも精通した現地の中国人スタッフを中心に、企業統治・人的資本・取引管理などに関する企業の悩みや厄介事を解決しています。2017年には日本法人を設立。現在は天津、上海、広州、神戸に法人を持ち、日本の起業家支援、中国・アジアを繋ぐ課題解決、海外に無縁な経営者がアジア時代に生き残るためのサポートを行っています。小島社長は酒井のUFJ総研時代の元部下です。今回は小島社長には日本の今と未来がどのように見えているか、その視点を学びたく、対談をお願いしました。

経済は停滞中ながら、自由度が高く動ける中国

酒井:
お久しぶりですね。今日は遠方からありがとうございます。

小島:
私のいる神戸から名古屋までは新幹線で1時間ちょっとですからね、近いものです。
酒井さんと初めてお会いしたのは2001年、そのとき酒井さんは東海総研(間もなく合併してUFJ総研)のイノベーション開発室長でした。そこに私が転職して部下になった。あれから間もなく四半世紀ですね。

酒井:
組織を拡大したい時期でした。願ってもない有能な若者が入って来てくれた。とてもありがたい。そんな印象でした。

小島:
コンサルタントになりたくて応募したものの経営コンサルの経験はゼロ。本当にコンサルティングのイロハから教えていただきました。こういう形で対談しているのが、本当に感慨深いです。
UFJ総研でコンサルタント道に没頭するうち、「逆の立場の経営者をやってみたい」という気が起きて、3年勤めた後の2004年、中国に渡りました。その決意を伝えた時に酒井さんに「『経営したい』と言われたら、引き止められないなあ」と言われたことを覚えています。

酒井:
小島さんは中小企業診断士でもありましたし、もともとマネジメントの素質もあるし、立派な経営者になると思っていました。だから、引き留めよりも、応援したい気持ちが強く出ました。

小島:
嬉しいお言葉、本当にありがとうございます。
あれ以来、肩書きとネクタイとワイシャツは、日本に置いてきました(笑)。

酒井:
そうですか。確かにそれ以来、いつお会いしてもカジュアルですよね。コンサルタントから起業家へ。服装のスタイルにも小島さんの覚悟のほどが感じられます。

小島:
スーツが仕事人の鎧なので、自分は生身で勝負したいと思いました。
中国に渡ってから何年か後に、酒井さんが天津に来られて。合弁会社の雇われ社長をしていた時代はエレベーターもない役所内の事務所だったので、階段で4階まで登っていただいたのを覚えています。

酒井:
そんなこともありましたね。懐かしいです。
そして今では、日本と中国に拠点を持ち、中国やアジアに進出する日本の現地企業をサポートする企業「ダオアンドクルー株式会社(以下DAC)」の経営者へと成長されました。この会社のキャッチフレーズがカッコいい。
「中国進出企業の野戦病院」。これはどういう意味なのでしょうか?

小島:
DACのお客様は100%日系企業です。海外拠点は日本とは言葉も文化も法律も違うので、日本では想像もしなかったようなリスクやトラブルがあります。
とくに中国は政治や歴史の問題があり、不正や問題行為のスケールもはっきり言って他のアジア諸国とは桁違い。他国で腕を振るってきた駐在員さんから「中国は一筋縄ではいかんね」と聞くことはあっても、「小島さん、中国なんてまだマシだよ」と聞いたことはありません。

具体的には、ストライキ、業者との癒着、巨額の不正、解雇しようとしたら客先にビラを撒く、不満があると大勢で搬出入口を塞ぐ、刺青を入れた取引先が応接室に居座る、労働組合の上位団体からの無理難題、駐在員を脅す・嵌める…。解雇社員や取引先との裁判沙汰もよくあります。

それに実は夜のトラブルもたくさんあります。美人局、DV(女性からの暴力)、多額の手切れ金要求。追い詰められて命を絶ってしまう駐在員が毎年いるほどです。

自社で解決できなかったり、弁護士など専門家に頼んだけれどうまくいかなかったりすると、DACに相談が回ってきます。我々の仕事は「追い詰められている、何とかしてくれ」と言われてからが本領なので、「野戦病院」とか「駆け込み寺」と言われたりしています。

ただ、最初からこんなことを商売にしようなんて夢にも思っていませんでした。中国へ渡った当初は他に仕事がなかったので、日系企業にお邪魔して「なにか、お困りごとはありませんか」と聞いて回っていたら、厄介そうな課題ばかり集まってきたというのが実情です。最初はどう解決していいのか分からず途方に暮れていましたが、解決しないと生き残れないので必死に格闘しているうち、それが本業になっていきました。

酒井:
なんか、凄い仕事ですね。小島さんの国内での講演会が満席になり、週に何本も発信している動画やメルマガのネタが尽きないのがよくわかります。日本企業にとって常にリアルな現場での問題を解決しているDACは唯一無二の存在ですね。格闘が本業になるのは、有能なソリューション集団の証でしょう。
ところで最近も中国に行かれていると思います。景気後退と言われていますが、世界情勢が変わる中での最近の中国はいかがですか?

小島:
毎月中国には滞在していて、街の肌感覚で言うと景気は非常に悪いです。どのエリア、どの業種で聞いても「厳しい」という声ばかり。不動産も製造も小売も厳しい。2023年の前半くらいまで飲食はまだ堅調と言われていましたが、最近は飲食も厳しくなってきたと経営者に聞きました。

これまで20年間くらい、中国は世界の工場・最大の市場として世界中の企業が集まる最優先の投資先でした。熱気も活力もすごかった。ただ、そういう時代は過ぎ、これまでのような活力はもう戻らないだろうなというのが正直な感想です。特にコロナ禍を境に大きく変わりました。

酒井:
そうなると失業者も多いのでは?

小島:
そうですね。統計で見ても失業者は多いですし、学生も就職先がなくて非常に大変なようです。ただ、他の国で景気が悪い、失業者が増えているとなると、街の一角がスラム化したり、暴動が起きたりという話を見聞きしますが、中国でそういうことはありません。活力は落ちているけれど荒れてはいない。むしろ、街はだんだんきれいになっているし、便利にもなっている。日本本社のある地方都市より現地の方がよっぽど便利なんて話もよく聞きます。

酒井:
便利というと、交通網などでしょうか?

小島:
確かに都市部では地下鉄の整備が進み、高速鉄道網も整備されて便利になりました。配車サービスが浸透しているので、タクシーを捕まえる苦労もありません。この点は日本の地方都市よりはるかに便利です。

交通よりも便利になったと実感するのはキャッシュレス化です。もう5、6年以上現地で現金を持ち歩いたことはないです。本当の農村部は分かりませんが、日本人が行くようなエリアでは、あらゆる支払いがスマホで完結します。地下鉄・タクシー・駐車場・野菜市場…。みんな現金など持ち歩かないので「現金のみ」なんて商売は成立しません。

ICT全般の活用で日本より何周か先を行き、世界でも最先端に位置すると思います。運転免許証の更新も、街中にある24時間稼働の無人ブースへ行けばその場で完結し、後は免許証が送られてくるそうです。

酒井:
免許センターが空いている平日に、わざわざ会社を休んで…というあの面倒な行程がない?

小島:
そうなんです。私がこの話を聞いた知人も、平日の夜中にブースへ行ったので待つこともなくすぐ終わったと言っていました。ちなみに交通違反だって自動検出されて、後日「あなたはいつ、どこで、こんな違反をしました、いくら払うように」とメッセージが来て、スマホで支払えばおしまいです。

日本で面倒と言えば、社会保険とか年金事務所の手続きも煩雑ですよね。自分の記録を取りたいだけなのに、事務所へ行き、申請書に記入し、番号札を取って順番待ちをし、手数料を払わないといけない。間違った窓口へ行って行列に並び直したり。現在の中国は、社保口座を開いている銀行へ行って自分で端末に社保カードを通せばプリントアウトされます。

ただ、私が渡った2004年時点の中国は非効率の塊でした。当然手書きの申請、長時間待たされる、担当者により言うことが違う、提出し直しもしょっちゅう。しょうもない手続きに何日もかかったりしていました。それがわずか15年ほどの間にここまで変化。だから最近はむしろ日本での様々な非効率が気になってしまいます。なぜここまで非効率を放置するのかと。

酒井:
それは早い。でもそうなるとスマホを持っていない人は置き去りになるのでは?

「課題を潰してから実行」VS「課題はやってから考える」

小島:
確かにそういう面はありますが、ではどうするかの考え方が日本とは違います。まず「便利だからやってみよう」があって「問題が起きたら潰していこう、できない人には別途対応しよう」と考える。スマホを持っていない人用の窓口を残したり、スマホの操作をその場で手伝ってくれたりします。シンガポールも近い発想でやっていますよね。

あと、各種サービスや支払いは、ほとんど中国製のスーパーSNSとも言うべきWeChat(微信)で行うんですけれど、以前は中国内の口座としか紐付けることができなかったので、外国人のツーリストが置き去りにされていました。これも、外国のクレジットカードと紐付けることができるようになったので、解消してきたと思います。

酒井:
WeChatはユーザー数13億人突破の、中国最大のチャットアプリですね。日本のLINEのようなチャットやビデオ通話などのメッセージング機能だけではなく、支払い機能(WeChat Pay)、各種予約、ミニプログラムなどいろいろな機能があると聞いています。
旅行者は空港でチャージするわけですか?

小島:
私が最近の仕様を把握していない可能性もありますが、現金をWeChatにチャージするような機能や場所はないと思います。基本はクレジットカードか銀行口座と連携。後はWeChat間の送金。自国か中国入国後にWeChatアプリをインストールして、設定で紐付けて使います。

WeChatはすでに日本を含め、中国ツーリストが往来する国でかなり普及していますので、赴任前研修では「日本でインストールして、ある程度触ってから来た方がいいですよ」と助言しています。移動なんかもうタクシーを使わないので、配車アプリを入れてWeChatで支払えるようにしないと、かえってすごく不便です。

酒井:
確か韓国もそうですよね。行かれた人は皆、便利だったと言っていますね。

小島:
韓国かカカオ系が強いですよね。東南アジアではGrabがメジャーです。タイやフィリピンなんて、メーターをごまかしたり、吹っかけたりと、タクシーの悪名が高かったですが、配車サービスの浸透で一掃されました。システムで料金管理されているし、ユーザー評価も残るので、客を食い物にするような運転手は淘汰されます。

逆に先日、名古屋のある駅でタクシーに乗ろうとアプリから呼んだんですが、「付近にいません」で終わり。仕方ないので地元のタクシー会社に電話をかけたら「15分待ってください」と。配車アプリが当たり前になった中国やアジアのツーリストが日本の現状をどう見ているのか、政府や業界関係者は理解できているのでしょうか(苦笑)。

酒井:
首都圏はまた違うでしょうが、わが国は何周も遅れてる感じがします。そして人手不足というちぐはぐさ。日本って進んでいるはずなんですが、なぜなんでしょう?

小島:
為末大さんの言う「なにかあったらどうするんだ症候群」なんでしょうね。「もし何かあったら責任は?誰がとるの?」 「保証はどこが?」「タクシー業界の雇用はどうなる?」と。現状維持にも代償やリスクがあるという点は、ほとんど考慮されない感じがします。

ちなみに、私は、中国の移動や宿泊で支払いを全くしないんです。社員が事前にフライト、配車サービス、ホテルまで、予約も支払いも済ませてくれているので、時間と行き先を把握して、交通機関が無事運行すれば支障なく行けます。もちろん遅延などトラブルゼロというわけではありませんが、ほとんどは社員が対処してくれちゃいます。

酒井:
なるほど、それは便利ですね。
そう言えば、私も以前アメリカに行った時、日本でホテルの予約をし、タクシーやスポーツ観戦チケットの手配と支払いをして、ほぼその通りの行程で行けました。現地での決済はほとんどしていません。そういう便利さをこの国は「なにかあったらどうすんだ症候群」で犠牲にしてしまうのですね。

小島:
「課題を潰してから実行」という日本と、「課題はまず動かしてみて直面したら考える」という中国や諸外国との違いだと思います。どちらが早いかと言えば「まず動かしてみる」の方が圧倒的に早いに決まっています。その方が生の課題把握が早くて改善も進みますから、日本との差は開く一方です。

「筋を通す日本」と「数を通す中国」

小島:
中国の急速な変化・進化は、ITの発展で「評価が残る」仕組みになったことも大きいはずです。例えばオンライン通販。中国って通販大国で、日本とアメリカを足したよりも市場規模が大きいんですよ。ただ、最初のころは中国で通販は流行らないと言われていました。なぜなら粗悪品や偽物が横行しているお国柄、顔の見えない店で買ったらどんなものを売りつけられるか分からないからです。

しかし、蓋を開けてみると、ものすごく伸びた。なぜなら客の評価が残るからです。実は店だと他の客の本当の評判は分からない。でも通販ならどんどん蓄積される。だから、かえって通販の方が信用できるってなって、買い物はオンラインでするのが当たり前になりました。

客の評価で業績が大きく変わるので、顧客サービス競争も激しいです。客から品質不良へのクレームがあると、写真を撮って送れば代替品を送ってくる。既存品の返品は不要。こうやって客の手間を最小限にしたりしています。

酒井:
そのやり方だと、2個取りする人もいるのでは?

小島:
もちろんいると思います。ただ、ここからが日本とは違う合理的判断で、返品による客の手間や郵送コスト、返品受取やその後の処理の負担、返品トラブルなんかを考えたら、2個取られても「すぐに新品を送ってくれて対応がよかった」という評価を残す方が得と考える。

これが日本だと、着払いで送ってもらって、届いた品を解析し、改善につなげる。というのは建前で、「2個取りは許すべきでない」というべき論も背後にはある。だから客の手間や心理的負担、自社の手間やコストをかけても返品という作業を強いるわけです。ただ、商売としてどちらが合理的かと考えたら、中国のやり方の方がスマートな気がします。

酒井:
とても合理的ですね。

小島:
このあたりの日本と中国の違いは、90年代から中国で活躍されているコンサルタント・執筆家の田中信彦さんの「スジの日本、量の中国」という考え方が分かりやすいです。中国は「儲かるか儲からないかという量」で発想するのに対し、日本は「こうあるべきという筋論」で発想するというものです。

さっきの例だと、日本は「2個取りは許さないという筋論」で考える。中国は「トータルで商売にプラスなら2個取られても構わない」と考える。

酒井:
このやり方は任天堂が行っていますよね。DSが壊れたので修理をお願いしても対応せず「代わりを送ります」と。「もったいない」がベースにある日本人の常識から見ると、任天堂は非常識に感じる人も多かったと思います。

小島:
日本で「使用済みの商品が壊れたら新品を送る」という発想はないですよね。でも冷静に考えれば、1万いくらのものを修理するより、新品を送った方がお互い得。任天堂はグローバル展開していたので、そういう日本の発想を超えた対応ができたのでしょうか。

酒井:
生産性向上を考えると、先程の「筋論」を重視する日本企業の姿勢は見直さないといけないかもしれませんね。日本人の性質上「2個取りなんてしませんよ、こちらは使いたいだけなんで!」になるでしょうから。
いい意味で「もったいない精神」を受け継ぎつつ、お客さんにも負担をかけないような仕組みが作れるといいんですが。

小島:
本当にそうですね。日本人って古来そういう「いいところ取り」が得意だったと思うんです。遣隋使・遣唐使の時代から中国に学び、江戸末期から欧米列強に学び、戦後は米国に学んできた。単に真似するだけじゃなく、咀嚼して工夫して、自分たちのものにしてきた。カレーだってラーメンだってアニメだって海外から持ってきたのに、独自の進化を遂げたじゃないですか。だから「和魂漢才」「和魂洋才」という言葉がある。

そして、これからは人口で言っても経済力で言ってもアジアの時代。だから次はアジアのスピードやたくましさを取り入れて「和魂洋才アジア力」でやろうというのが、私の主張するところです。

酒井:
そう考えると、まだまだこれからですね。

小島:
日本よりも中国やアジアが進んでいるところもあるし、そうでないところもあって、それは外にいるととてもよくわかります。ただそれに対して悲観するのではなく「こんなところでくすぶっていてはダメ!」と叱咤激励というか、エールを送りたいです。1000年以上も前からやってきたことを、またやりましょうよと。私は日本が沈む一方だなんて思いません。

アジア各国と比較しての、日本の立ち位置とは?

酒井:
最近「日本はオワコン」なんてよく聞きますけれど、小島さんは外から見てみて、どんなことを感じますか?

小島:
さっきお話したように、私は日本をオワコンなどと悲観したり自虐したりはしません。ただ、古来やってきたように、時代の変化・環境の変化にあわせて外に学ぶ必要はあると思っています。だから、昭和以降引きずってきた既存のやり方や仕組みは一度ぶっ壊す必要がある。自分たちでぶっ壊さなければ、外からぶっ壊されるでしょう。

最近、シンガポールに行って、日本が学ぶところはたくさんあるなと感じました。シンガポールって淡路島よりちょっと大きいくらいのサイズですが、世界中から人とお金と情報が集まってきます。私が滞在した際も、イスラム圏、欧米、アジア、アフリカ系…とおぼしき人たちですごい活気でした。

国土が狭小で資源もないシンガポールが使っているのは「頭脳」です。政策で富裕層を集め、人流・金流・物流を動かしている。物価が高くて収入も高い国。天才的というよりは、本質を追求して工夫しているという印象でした。能力やスキル的に日本で不可能なことは何もないんじゃないかと。

富裕層やツーリストを呼び込む一方で、犯罪抑止のため、街の魅力を下げないために、監視カメラなどの設置を徹底して、望ましくない人に対しては容赦なく対応します。このあたりも、最初から考えて政策展開しているように感じました。

で、余談なんですが、私はマーライオンの周りの多種多様な人たちを眺めながら「これは中国のあり得た未来なんじゃないか」という感慨も持ちました。2010年くらいまでの北京や上海の様子とかぶって。当時の中国も熱気と活気があって、賑やかで本当に元気でした。もしシンガポールのような政策を採っていたら、いまとはまったく違う状況になっていたんでしょうね…。

酒井:
日本ではどのように展開するのが最善だと思いますか?

小島:
シンガポールとは国土も人口も違うので、そのまま同じことはできません。ただ、日本には日本が強みにできる特性もあります。例えば「もったいない」という価値観は、いまの世界に必要なゼロエミッション・循環型の社会を目指す上で大切な考え方です。

ただ、コンセプトに落とし込む力が弱く、発信力がないというか…。自国の良さを誰かに発見してもらう、評価してもらうのを待つような受け身なところがありますよね。もう少しちゃんと広げていけば、世界のモデルになり得るような日本的な生き方や社会の作り方があるのではないかと思います。

また、かつては言葉の壁がありましたが、これからはスマホがあればどの国の人とも話せるので、日本のようにマイナー言語を持つ国には追い風です。外国語に置き換えて発信しなくても、日本の良さを伝えるハードルがどんどん低くなっていくわけですから、ケタ違いに日本のファンが広がっていくチャンスはあると思います。

酒井:
もともと受け身だったから、成り行きでこうなったけれど、やり方次第ということですね。

小島:
ええ。アジアで学んだり、ヨーロッパで学んだりと、外から見ることで、街づくりのビジョンって持てると思うんですよ。日本の良さを再発見して、新しく作っていこうという人が邪魔されず、腕を振るえる時代になればなと。かつての明治維新や戦後のように、若い経営者が活躍できるといいですよね。

酒井:
世代的なことを考えると、どうしても団塊の世代の人口が多いし、有権者のウエイトも高い。
政治家もそこに配慮するので、結局活力が失われていますよね。
もちろん、かつての頑張りがあって、日本のマーケットは維持されたわけですが、今は高齢化社会になり、その影響で動きがとても鈍くなっている。

小島:
別に高齢者を排除するつもりはないですが、高齢者にもちょっと大局的な目で見て考えてほしい。幅広い豊かさを享受したいなら、今の時代の担い手である若い人たちを大切にしないといけません。彼らが生み出す価値から、その上澄みを医療費や介護費の形で得られるわけですから。

酒井:
上澄みだけもらおうという輩もいますけれどね(苦笑)。
よく聞く話ですが、社会で働くお母さんと次世代を担う子どものために保育園を作ったのに、高齢者が「子どもがうるさい!」と文句を言う…。自分のことしか考えていなくて、今の若者たちに働いてもらう環境を作ろうとか、そういう気持ちが少しもないのは、とても残念です。

小島:
中国なんか見ていると、新しい技術をどんどん取り入れて、社会全体を便利にしていこうとする。当然、高齢者にとっては大変な面もありますが、高齢者のために社会の変革や挑戦にブレーキをかけようという発想はありません。勢いのあるアジア諸国はみんなそうですね。日本は高齢者ばかり元気だからなのか、高齢者の保守的な意見が優先されがちです。

酒井:
本来日本は「パシッ!」と言えるリーダーがいて、そのリーダーを信奉するトップダウンスタイルが性に合っている国ですからね。合意形成のプロセスを重視すればするほどおかしくなる。

小島:
結局、若い人を含め、これからの日本を動かすような大きな絵を描ける人がいないんでしょうか。「そうだ!」と思えたら若い人は動くし、尊敬する人に対して行動力を発揮すると思うんです。それが今ないのは、響くような何かを見せる人がいないということですよね。

酒井:
政府は2050年ビジョンを持っていてそれを「ムーンショット」と呼んでいるようですが…

小島:
やはり省庁や官僚が理想を形にするのは…行政主導だと無理があるように思います。

酒井:
同感です。先程のシンガポールの例のように、ツーリストにお金を落としてもらおうっていう発想がない。

小島:
国民、特に若い人が共感できるような50年後とか100年後にありたい姿・あるべき姿を描いて、そのためにいまから何をすべきか、何を止めるべきかという議論をしないといけない。何十条もあるような個別テーマの公約やコミットメントより前に、もっとシンプルにビジョンを示さないと、政治に関心のないような人たちは耳を傾けません。

昭和の時代はシンプルでしたよね。アメリカに追いつけ追い越せで、三種の神器があって、いつかはクラウンで。でも今はそれが見えない。「インバウンドで観光大国に」みたいなことを言うけれど、一方で「ものづくり大国」も自負している。環境保護とエネルギー政策についても、どう両立させるのか、優先度をどうつけるのかはうやむや。

酒井:
そうですね。ツーリストのいる姿を描いて、光と影の両面から考えるとか、「やはりものづくりと輸出に特化しましょう」と決めるとか。
そうした上で、国民の過半数が共感できるか…と、具体的にするといいでしょうね。

小島:
いつの時代でも必ず異論はあります。でも、異論があるからと意思決定を先送りしたり、合意を待ったりしていたら、結局何もできない。やはり現状維持にもリスクやコストがかかるということを示す必要があるでしょう。「このまま成り行きでいくと、こうなりますよ」とか「選ばないとこんな未来になりますよ」とか。

発信しているのは政治家じゃなくてもいいと思うんです。ビジョンを語り、若い人たちを中心に共感を生み影響力を行使できる人。多様な人たちをゆるやかに束にできる人でもいい。明治維新も、初期・中期・後期で異なるタイプの人材が、異なる立場からビジョンを語り、周囲に影響を与えて動かしていきました。

国を動かせる政治家の出現を待ったり、「リーダーシップがとれる人はいないよね…」で終わったりするのではなく、いま自分たちから始められることもけっこうあると思うんです。志や想いのある人が、自分の身近なところから動いて、人を巻き込んで、仕組みをつくっていけたら変わる。自分もそういうつもりで働いています。

酒井:
小島さんのような、日本人の弱さや可笑しさ に気づきながらも、日本の底力を信じている方が次世代の希望になり、次世代を育てていくと私は思いますよ。

小島:
ありがとうございます。
次世代のやりたいことを邪魔しない環境、応援する環境をつくることが大事だと思っています。

若い世代の資質をふまえ、人を育てていく

小島:
私の行きつけだった美容室の店長さんなんですが、会社がその店を閉めることになって、さて次はどこへ行こうと考えて、シンガポールを選んだんです。シンガポールには世界中のありとあらゆる髪質の人が集まるので、そこで武者修行したら世界のどこでも通用するぞって。時々、インスタの動画を見たりメッセージをやりとりしたりするんですが、これが楽しそうなんですよ。

一時期、若者の海外志向が大きく下がっていましたが、最近は海外の方が稼げるからと海外にチャレンジする人が増えてきました。こうやって日本の外で修行して、たくましくなった人たちが、外からの目で日本のよさとか課題を再発見して、どんどん日本を変えていってくれるといいですね。

酒井:
美容室ならカットの技術は世界共通ですし、日本人のおもてなしの心遣いはトップレベル。
フランチャイズみたいなこともできるし、日本で技術を身につけた人が海外に活躍の場を求めていくことはとてもいいことだと思います。

私事ですが、息子が海産物を扱う企業に勤めて2年目なのですが、昨年入社早々、中国のホタテ輸入停止に直面しました。会社として「どうしよう」と悩んだようですが、新たな販路開拓のために、アメリカのボストンのシーフード・ショウでホタテの良さを伝えたり、マレーシアで市場調査したり、世界を相手に楽しく働いているようです。

小島:
こういう話を聞くと嬉しいですね。やりたいことさえあれば、私たちの時代より海外との距離は近いし、世界で勝負する手段も色々ある。大谷選手や欧州で活躍するサッカー選手のように、身近なケースも本当にたくさんあります。
SNSにAIにアプリ。新しいことを新しい場所で始めるハードルはどんどん下がっていくでしょうから、やりたいことを明確に持っている人たちが活躍する時代を、いかに早められるかが私たちの仕事ではないでしょうか。

酒井:
そうですね! 確かに早めるのは私たちの仕事ですね。

小島:
歳を取っても元気な私より上の世代は、「強制リセット」しないと若手に譲らないかもしれませんが、さすがに現役で影響力を維持できるのは、あと10年くらいかなと。10年も経てば大きく変わりそうな気もします。

酒井:
私と同じ世代が今、大手企業の役員を務めていますが、彼らが若い才能を伸ばし切れていないのは残念ですね。

小島:
傍で見ていて「これは若い世代を食い潰しているな」と感じる企業は少なくありません。現在の大企業は、お金はあって事業は安泰。だけど、人を育てておらず未来は不透明。そんな企業が多いと思います。いずれツケは回ってきます。

酒井:
人を育てていないのは、やはり良くない。

小島:
金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上ですから。次世代の人材に焦点を当てない企業に長期の発展はないと思います。ただ、高齢の経営者にこんなことを言ってもなかなか聞く耳は持たない。だから、私は、日本で同世代以下の起業家の応援をしています。

今の起業家って、「これをやりたい」という思い入れの強い人が多いです。長野県の佐久市望月という地区は、豊かな自然を背景に、野菜やジビエなどここでしか採れないような食材がたくさんあって、世界的な食の起業家が集まったりしているんです。この地を訪れて惚れた若い人が東京から移住したりもして。

そういう人たちと話していると、社会的な課題意識があったり、自分の事業に深い思いがあったり、考えていることがとても素敵で着眼点も素晴らしく、思いを聞くのが楽しいです。

多くの起業家さんにとって、最初の課題はどうやって安定した収入を生むか。それを乗り越えて初めて、自分の思い入れある事業に打ち込める。そこで満足してしまいがちなんだけれど、次はぜひ自分の思いや事業を受け継ぎ広げていく「人」の育成に挑戦してほしいと思って、応援しています。

酒井:
事業が成功したら、人も育てて欲しいということでしょうか?

小島:
そうです。事業だけで人を育てなかったら、けっきょく起業家一代の事業で終わってしまう。それではもったいないです。社会的意義もある事業なら、ぜひそれを次世代に受け継いでいってほしいです。

ただ、まずはお金の心配をするステージの卒業から。起業家は事業への思い入れが強い分、資金繰りや値決めに無関心だったり苦手意識を持ったりしているので、開業時の資金や当初2年間の収支見込みみたいなところはシビアに直視しましょうとお伝えしています。あまり外部資金に頼るのも避けた方がいいでしょうね。

酒井:
調達すらやらないということですね。

小島:
私が外部資金の活用をできるだけしないタイプの経営者なので、そういう自分のクセというか経験みたいなものも投影していると思います。ただ、事業を一気に成長させることではなく、事業をじっくり育てることに価値を見いだすような起業家は、外部調達はあまりしない方がいいというのも後から気づきました。

もちろん資金を外部から調達することでスピードは上がるのですが、リスクも負う。返済のプレッシャーもある。金のことで他人からあれこれ事業に口出しされるのも辛い。返済するために仕事しているみたいな状態で疲弊してしまう人もいます。ただ、倒れてしまうともっと厳しい事態に落ち込んでしまう…。

そんな精神的にマイナスな状態に陥るくらいなら、自己資金でまかなえるような初期投資にして、商品構成や値付けを工夫して、赤字を出さないような商売で徐々に育てる方がいい。成長スピードはゆっくりかもしれませんが、自分のやりたかったことに専念できます。

だから、若い起業家さんたちには「経理なんて面倒だし興味もないでしょ。だから最低限の勉強はしなきゃダメですよ。自分が理解できていれば、誰かに任せても騙されることはない。自分が何も分からないまま置いておくと、後でツケが回ってくる。資金繰りが火の車になったら、もう事業もお客も頭から吹き飛びますよ。日々お金の心配ばかり。そんな目に遭いたくないでしょ」と釘を刺します。

酒井:
起業家にとって、事務の負担はけっこう大きいですよね。

小島:
自分で全部やっていたら、本業に割く時間がかなり取られちゃいますよね。だから私はよい税理士さんを確保することをおすすめしています。ポイントは自分との相性。事務所の看板や誰かの紹介で選んじゃダメです。

昔から「医者と弁護士は能力より相性」なんて言ったりするように、士業って能力より相性が重要だと思います。経営者として相談しやすいか。建設的な苦言を出してくれるか。やりとりは来訪か電話かオンラインか。相性は人それぞれなので、他の経営者の評判では決められない。税理士さん選びだけは自分の足と目でしっかりやった方がいいです。

相性がよくて頼れる人が見つかると、他の専門家も「芋づる式」で紹介してもらいます。自分の信頼する人が付き合っている人は、だいたいやっぱり相性が合う。私も日本で法人を設立した際は、まず自分で税理士さんを探し、税理士さんのネットワークで、保険代理店、司法書士、弁護士、行政書士、ITパートナー…などを紹介してもらって大成功でした。

酒井:
大手の事務所だと、途中で担当が変わってしまうこともありますからね。

小島:
個人でスタートする起業家の場合、感覚としては10~20人くらいの規模の事務所で、35~40代の税理士さんがおすすめでしょうか。大きい事務所だと小さな会社には若手を当てられちゃうこともあるし、個人だとそれこそ事務なんかも忙しくてなかなか手が回らない。年配だとクラウドやSNSに不慣れだし、若すぎると経験が浅く経営者の相談相手にならない。

相性が大事というのは、士業だけじゃないかもしれません。自分の家を建てる際にハウスメーカーさん6社と話をしました。当初は「中庭がある家」というテーマを持っていたんですが、1社だけ「中庭のない家」を提案してきました。我々が選んだのはその会社でした。

実は、その1社の担当者は、一番長い時間をかけて私たちの話を聞いてくれました。自社の紹介や機能の説明なんか抜きで、最初に会って3時間、ひたすら私たちに関心を向けてほとんど雑談のように。それを通して、私たちが「中庭のある家」を通して求めていたことの本質を掴んでいったんだと思います。

中庭にはデメリットもあります。その担当者は、中庭のデメリットを解決しつつ、私たち家族が求めていたことを満たす提案を用意していました。こうなると、もうハウスメーカーの比較なんかしないです。この人に任せたいと思っちゃったんですね。なお、家づくりの際も、仮住まい手配業者、引越業者、外構業者など、やっぱり「芋づる式」でお願いしました(笑)。どこも非常によかったです。

酒井:
素敵な担当者に出会えたのですね。最終的には「人」。志の高い人ほど、信頼できる士業の人のサポートを受けて欲しいと思います。

団塊の世代とZ世代の狭間で思うこと

酒井:
今、戦後80年近くになっています。幕末から日露戦争が約40年。ここで日本は一度ピークを迎えるのですが、そこから転落し、終戦までが約40年。そこから再び立ち上がり、Japan as No.1と言われたバブルまでが約40年。そして、以後転落を続けて今が約40年…。周期的に今が最もダメな時期だという人は少なくありません。

小島:
失われた30年と言われていますし、なんとなく日本が落ちていて、そこから上に行くのか、もう少し下がるのか…。私は昭和的経営の最後の徒花なのかなと見ています。
中国駐在時に経営管理者として私と一緒に戦う人たちって、40~50代の方が多いんですが、帰任すると大手では課長から部長のミドル世代。そういう方から聞くのが、上場企業の中身のひどさです。

酒井:
実際の現場は、どんな状況なんですか?

小島:
そうですね…役員がやる気あるミドルのブロック役になっている感じでしょうか。役員にまで上り詰めながら「上から自分はどう見られているか」「自分の失敗をどう言い訳するか」という極めて低次元なことに汲々としている。

部下が「責任を取るからやらせてくれ」と談判しても、「必要あるのか」「他の部門と歩調を合わせたらどうだ」と気の抜けた理由で承認せず置いておく。海外で経営レベルの濃密な経験をしたミドルにとって、メンタルを破壊されるレベルの落差です。実際に病んで退職する人もいます。

視線が将来や外部に向いておらず、社内や自分に向けられていて、敵は隣の役員や部長。スケールが小さすぎる。海外の現場で武者修行した帰任者は、異端児だ、外国かぶれだ、日本の流儀がわかっとらんと叩かれ干されてしまう。

海外を経験して日本に戻り、その経験を活かして今から花や実をつける時期なのに、そういう人が育っていない、いや「育てていない」「潰している」と感じます。

酒井:
直接の上司といえば、私たち世代ですね…。役員連中がせっかく海外で活躍してきた人を活かせていないということでしょうか。

小島:
少なくとも上場クラスの大手では、残念ながら「後ろで支えるから好きにやってくれ、あとは責任取るから」という器の大きさがありません。基本は現状の延長で、新しいことに挑戦する時には「なんかあったらどうするんだ症候群」が発動。それでいろんなことにブレーキをかけてしまう。

その一方で、キャッチーな流行りものには飛びつく。最近なら、SDGs、エンゲージメント、パーパス、ジョブ型、CxO…。どれも数年経てば飽きるような軽いノリで、ファストファッションのように経営テーマを取っ替え引っ替えしている。「人生を使ってこれを実現する」とか「全社を挙げてこの社会的な課題の解決に挑戦する」という気概が感じられません。

いずれ人を育てていないツケが来ると思います。有能な人材ほど小さなことで潰されたり、嫌気がさしていなくなってしまったり。現在絶好調の株価を誇る企業も、10年後には想定外に脆かった…みたいな事例が出てくるんじゃないでしょうか。

ただ、そうやって経営がおかしくなって、一回さっさと焼け野原になるのもいいんじゃないかと思っています。焼け野原になれば、焼畑農業のように20代、30代の若手が伸び伸びやる土壌ができる。いまの若い人は、課題意識や目的意識もあるし、上が邪魔しなければ面白いことへの挑戦がどんどん始まりますよ。

酒井:
わかります。特に20代。大谷選手を見ていると、そういう感覚なんだと思うんですよ。自分のやりたいことやミッションに忠実で、ストイック。変な誘いにぐらつかず、昭和的な習慣にNOが言えます。そして、自分が必要だと認めた人とコミュニケーションを取りつつ、的確に情報を発信して周囲を巻き込んでいます。

小島:
世界的にもそう感じます。中国でも上の世代は、地球という共同体から吸えるだけ吸って豊かになる人もいます(苦笑)。そういう人たちは環境問題にまるで関心がない。
でも、若い人たちは、熱波だとか大洪水だとか異常気象を体感しているし、気候変動により消失する国があり得ることをその目で見ています。上の世代への反動もあってか、社会的な課題に対する気持ちが強い気がします。それが実行力に繋がるかは別として、問題意識は明らかに上の世代より強い。

酒井:
では逆の発想で、日本の若者は、上が放っておけば今より良くなるということは考えられませんか?

小島:
そう思います。上の重しが取れたら、どんどん社会的に意義のある、面白い挑戦が生まれるんじゃないでしょうか。

酒井:
大谷選手のように「グローブを配る」なんて発想は上の世代の人にはないですよね。しかもキャッチボールができるように3つという数。もちろん彼には多大な収入があるからこそできるのですが、これが20代の問題意識と行動力だと思います。

小島:
藤井聡太さんもそうですよね。公務もいろいろあるのに「こなしている」感がない。彼自身が将棋の裾野を広げたいという恩返しのような気持ちと、世間から求められていることを理解した上で、自然体でポジティブに果たしているのがすごいと思います。
自分の対局だけでなく、連盟や自治体、宿泊施設、支えてくれるファンの全てが見えている。それなのにしんどそうではなく、楽しんでいるようにさえ見えます。こういうスケールの人たちが出てきていることは、本当に頼もしいです。

酒井:
妥協せず、諦めず、追究する姿勢を持って仕事をしていますよね。大谷さんも藤井さんも、若さ特有の「俺が俺が」という態度やケンカ腰の面が一切ない。すごくセンスのいい世界を作っていると思います。
ただ、私たちの世代も何かしないといけませんね。「すごいね」と言っている場合ではないですね(苦笑)。

小島:
そうですね。酒井先生とは世代がちょっとずれますが、若い人たちが伸び伸びやれる環境をつくることは自分たち世代の責務だと思っています。それに私自身、社会的課題に取り組みたい、新しい挑戦を続けたい、彼らを引っ張るような立場で戦いたいという気持ちも強いので、これからもさらに尖って、攻めていきたいと思います。

酒井:
私もそう思います。
久々にじっくりお話ができて楽しかったです。今日はありがとうございました。

プロフィール

小島 庄司(こじま しょうじ)

Dao and Crew 株式会社 代表取締役・船長/中小企業診断士/日本商工会議所 国際ビジネス環境整備専門委員/東京商工会議所 国際ビジネス環境委員
1973年、愛知県生まれ。神戸大学法学部卒業後、コクヨ、UFJ総研を経て、半年で資金が尽きる現地法人の再生を託され2004年に渡中。2012年に事業継承してDao and Crew(天津)を設立、日系企業の経営管理の伴走役を務め、企業統治・組織改革など重い課題の解決に取り組む。海外現地で見てきた凄絶な現実からアジア時代の経営に危機感を抱き、2017年に日本法人を設立。日本では海外と縁のない中小企業・次世代経営者が「アジア時代に生き残るための変革」を支援する。著書『中国駐在ハック』(日経BP)、YouTubeチャンネルでの動画配信など、情報発信も積極的に行っている。