堀崎茂氏【後編】
堀崎 茂氏【後編】
「ここなら一生いられる!」という
子どもの言葉に心の豊かさを想う

酒井:
さて、活動はずいぶん進展しているように見えるけれど、まだまだやりたいことが?
堀崎:
私が最終的に目指しているのは『開拓者精神を自ら発揮して、楽しみながら心豊かな暮らしと社会を創り出す』ことなんです。東京に暮らす多くの人にとって、心豊かな暮らしや社会なんか実現していない。私たち自身も自分の暮らしや周りの社会が心豊かになったかというと、手ごたえはありますがまだまだ途上です。
でも、その原型は実現できたのではと思っています。だから、まずは私自身がとことん心豊かな暮らしを実践し、周りの仲間たちや児童養護施設の子どもたちもまねて実践する。さらに他の人も『自分もやってみようかな』という人が増えたときに、本当に社会が変わってくるのではないかと。
酒井:
その取組みを見て真似する人が出てきたらいいよね。里山文庫で絵本を読んだり、黒板に落書きしたり、友達にメッセージ書いたり、はしごを上れば秘密基地もあるなんて、心豊かな環境だもんね。
堀崎:
私自身、里山やさとごろりん、まちごろりんでは実は完成する前段階から、心の豊かさを感じながら進めています。これはこうしたらうまく活用できるのではとか、こんなの作ったらみんな喜ぶかなとか考えているときが一番心が満たされている感じがするんです。実際に目の前にあるのは荒れ果てた山林や空き家だったとしても。
今の学校や会社、社会のなかにはなんだか、豊かさというのは、努力を重ねて激しい競争の先に苦労してつかみ取るものといったい思い込みがあるような気がします。学習指導要綱にも企業の経営理念にも『心の豊かさ』という言葉はよく出てきますが、それが本当はどんなものなのか、どうやったら得られるのかは自らよく考えることが必要と思います。

酒井:
心の豊かさという概念は、1人1人違うし、経済的な豊かさをイメージする人は、ここで得られるような豊かは想像できないかも…。
以前聞いた話なんですが、友達がふるさとに来たら、連れていきたくなる店が地元にあると『豊かな街』だと感じられるとか。知り合いの経営者も『誰かを連れていきたくなる店を作りたい』というビジョンを持っていてね。歴史のあるなしではなく、大切な友達を連れていきたいか。
堀崎:
いいですね。もし豊かでないなら、自分で創り出せばいいのかもしれない。
酒井:
それこそ岐阜城を借景に川原で…とか。享受するのではなく生み出すことも豊かさかもしれないね。
そんな場所を作ること自体を楽しんでいるのが、堀崎さんの素晴らしいところだと思いますよ。
堀崎:
嬉しいです。以前さとごろりんに滞在した子が『一生いられる!』って言ってくれて、衝撃を受けたことがあります。それはもう私の想像をはるかに超えていて。どんなにお金をかけた高級ホテルとかタワーマンションでも、一生いたいかと問われたら、私にはYESとはいえない。それは単にその対象の価値というよりは、自分も改修に関わったことや、今後も通えば本当に自分のふるさとになるかもという期待を含んだ全体を評価しているからだと思うんです。それは決してお金を出せば買えるものではない。それが一緒に楽しみながら場所づくりするだけで実現していくのです。


酒井:
関わるということの価値だよね。
堀崎:
はい。一緒に創り出すことの価値は、とても大きいと思います。
酒井:
正確な数字は忘れましたが、石巻で震災の前後を比較した資料があって。すると、観光で来る人の数よりボランティアで来た人の数が圧倒的に多かったそうです。
理由は『関わることができるから』。観光だとおもてなしは受けるけれど消費して終わり。でもボランティアで関わると、がれきを片付けるだけで地域の人に喜んでもらって、そこで仲間もできて『また絶対来よう』となる。
人は関係性を作ることで、多少なりとも自分の影響力を実感でき、それが喜びに繋がり、活動が継続するエネルギーになっていくと思うんですよね。
堀崎:
一緒に創り出していこうとする関係性が大切なんですね。
酒井:
言うなれば『観光地』ではなく『関係地』。そこに来ていい関係を作っていく。それってとても心豊かなことだと思うんだよね。だから先程のお子さんも『一生いられる』って言ったんじゃないかな。ホテルのスイートルームなんかに一生いたいとは思わないもんね(笑)
企業が望む社会貢献と、
現場が望む社会貢献のズレ
酒井:
そうなると、企業でも同じような豊かさをスライドできるのではないでしょうか。
堀崎:
ええ。もし、企業が心の豊かさまで実感させるサービスや働く環境を提供できたら、すごいことですよね。企業にとって社会貢献は、これまでは利益の一部を還元することくらいに受けとめられてきましたが、そんな心の豊かさを実感させるサービスや働く環境の提供ができたら最大の社会貢献ですよね。それは私たちのように大したお金もかけなくても実現できるのかも(笑)
サービスや働き方が究極の域に行くためには、『社会との繋がり方』など、関係作りにヒントがあるのかもしれません。心豊かさを得るためにこの会社に入ろう、この会社の製品やサービスを買おうとするような。企業の社会貢献はそこまでの可能性を拡げて考えるのがよさそうですね。
酒井:
こうした視点なら『理想の車を作る』ということも、社会貢献に繋がると言えますね。
ある蔵元がお客さんと田んぼを耕して田植えをし、お米を収穫して日本酒を造り、最後はラベルを付ける一連のサービスを提供しています。参加することで会社や商品に関われることが好評を博しています。関係性を作るよい例かもしれません。
堀崎:
なるほど。確かに企業にはまだまだいろいろやれることがありそうですね!
あと私の関わっているところでいうと、企業って埋もれた資産をたくさん持っていても、その価値に気づいていないことも多いんです。例えば『まちごろりん』の空き家を提供してくれた企業は中堅の不動産会社なんですが、これは再開発用に買い取った古いアパートを提供していただきました。
その物件は営業資産ではあるけれども、再開発が始まるまでは休眠資産。といっても貸して居座られてしまったら支障が出るので、通常は絶対に貸さない。そこで、私たちは『社会貢献に活用して再開発までには必ず立ち退くので、家賃無料で貸してください。その代わり税金や保険代はこちらで払い、管理もします』という契約をしたのです。
酒井:
休眠資産を活かせるわけだし、両方にとって有難いよね。

まちごろりん新宿の共有部屋

まちごろりん豊島の個室
堀崎:
日本中でたくさんの企業が実は埋もれた不動産を抱えているはずなので、きっと同じようなことができるはずと思います。
埋もれた資産を提供するだけで、税保険負担は減り、困っている人への社会貢献ができて、志ある人たちとの繋がりも生まれる。企業の本業にとっても『そんな素晴らしい活動をしているなら応援したい』とプラスの効果が出てくるのではないでしょうか。
ただお金を寄付しようとするより、埋もれた資産を活かそうとする発想の方が、その企業ならではの永続した取り組みにつながるはずです。
酒井:
なるほど、堀崎さんの考える社会貢献は、先に課題があってどうやって貢献できるか考え、それならこれを使おうというベクトルになる。
堀崎:
その通りです。私たちは何も持っていないけれど、社会課題を起点にしてそこから社会的に価値あることを考えつくしてゼロから生み出していきます。企業も、そんなNPOと一緒になって考えれば、埋もれた資産の持つ社会的な価値が見えてくることがあると思います。きっと、自分たちだけでは気づけなかった見方がそこにはあると思いますよ。
必要とされる場所があれば、
人はいつでも変われる
酒井:
さて、また子どもたちの話に戻りますが、先程からのお話から『自由な世界』『自分の家』『やりがいを感じる』などの言葉から、お子さんの変化を感じますが、彼らのその後も全て把握されているのですか。
堀崎:
児童養護施設との連携が始まって13年が経ち、当時の小学生だった子が社会人になる歳になってきました。退所後もずっと関わってくれている人もいるのですが、残念ながらまだ一部にとどまっています。児童養護施設側でさえ連絡先が把握できないケースも多いのが現実なのです。
それでも、例えば、さとごろりんづくりでは、電気工事の資格を持った退所者が3日がかりで古い電気配線の交換作業をやってくれました。電気関係の作業は資格が必要なので心強かったです。
他にも大学でボランティア活動のリーダーをやっている人がいて、さとごろりんでお互いの団体の活動について意見交換をしたことがあります。彼女の成長ぶりをみてとてもうれしく感じました。

酒井:
彼らにとっては数日過ごしただけかもしれないけれど、プラスになっているようですね。
堀崎:
はい。私たちはかわいそうな人を一時的に支援しようと思って取り組んでいる訳ではなく、ふるさとづくりの仲間としてずっと参加してほしいと呼びかけてきたので、本当にうれしく感じました。
この活動の子どもたちの心への効果については、施設職員が『大きな影響があった』と言ってくださることもしばしばあります。
ここでは、普段の共同生活ではなかなか見せなかった子どもたちの側面が見えるようです。里山では自発的に活動に参加したり、小さい子の面倒を見たり、仲間と楽しく協力したりといった場面はよく見かけます。
長期的な変化については、退所後もずっとふるさとづくりを継続した上ではじめて確認できるところなので、私たちの今後の取組み次第と思っています。
酒井:
精神面の立ち直り、というのをサポートできる事例もあるのでは?
堀崎:
はい、児童養護施設というのは社会的養護の最後の砦です。だからもし児童養護施設にやってきた子どもたちがなじめずに共同生活に支障の出るほど粗暴な行為に走ってしまうと、本当に行き場を失ってしまうのです。一時保護所、他の児童養護施設、自立支援施設には受け入れ余地がないのです。病院にいって精神安定剤投入で落ち着かせようとすると、生きる力をも失ったようになってしまう。少しでもいいのでさとごろりんで受け入れてくれないかという要望があって対応した人もいます。
酒井:
初めてのケースだったんですか?
堀崎:
そんなふうに緊急でさとごろりんで受け入れた人は過去4人ほどいます。ここは厳冬期は土間のバケツ水にも氷が張るほどの寒さです。『夜は薪ストーブをがんがん燃やさないと寒くてやってられないので、明るいうちに薪を十分つくっておくのが重要な仕事』と伝えると、子どもより職員の方がびびってしまうのですが(笑)。
でも、数日して会いに行くと、少年は活き活きした表情をしているんです。『寒さ、大変でしょ』と話しかけても『ぜんぜん、平気!』なんて返してくれて。そのときは一緒にサウナルームを完成させる作業をしました。『こんないいところはないよ。すごく楽しい』なんていうのです。児童養護施設長からは、こんなことなら最初からさとごろりんに入ればよかったと毎回感謝されます。
ここで暮らすと、自然との関わりの中で元々は誰も持っていた、開拓者精神というか、生きんとする力がむくむくと蘇ってくるのを感じました。


酒井:
生きている実感というか、経験というか…自分が自分の意志で何かを作り出す手応えのようなものを感じたのかもしれないね。
堀崎:
これこそが生きる力を取り戻した瞬間だったのかもしれません。でも誰か他の人にやってもらっている限りそれは取り戻せない。それは大人にとっても一緒で、都会で生きているとはたいていのことは、お金を払って誰かにやってもらうのが当然になっている。でも、本当は創り出す作業そのものが一番おいしい果実なんです。自分でやれば生活がどんどん心豊かなものになることを忘れてしまっている。
社会福祉制度もだいたい同じ状況で、税金を使ってかわいそうな子どもにやってあげようという発想。お金でやってあげるのではなく、本人自身の力を発揮する機会を提供することこそが本当は肝心なのです。
酒井:
確かに、税金をかけなくてもできることはあるし、税金も持たなくなっているから…。
堀崎:
戦後築かれた政治や行政、業者による社会構造は巨大なシャンパンタワーのようです。上からどんどんシャンパンを注いでも、一向に下には届かないのです。本当に必要な人のグラスだけを並べて直接注ぐようなやり方はきっとあるはずです。企業経営者のように、普段から効率性を追求し、たくさん納税されている方にこそ、社会への厳しいダメ出しの声を上げてほしいところです。
酒井:
堀崎さんのいうような社会は理想だけど、気づいてもらえないし、課題は多い。
堀崎:
荒れた山林も、子どもの虐待や貧困も社会の片隅の課題ととらえている人も多いかと思います。でも、私の推定では、荒れた山林は国土の半分、虐待や貧困で苦しむ子どもは100万人規模にもなります。もはや、社会の片隅どころか、私たちのすぐ隣にある課題といっていいと思います。
でも、本来公の立場でやるべき人がやっている感ばかりで、いつまでたっても成果を出そうとしない。予算がなくなるとやりっぱなしで去っていく。あまりにもそんなことが多いんです。
それなら、私が、埋もれた資源を使って自分にできるところからやってやろうと。本来はここだって政治、行政、業者がやるべきことをしっかりやっていたら、私なんかがやらなくてもいいことなんですが。
ただ、自分で試行錯誤したことによって、私はお金があってもなくても心豊かな暮らしや社会づくりは実現できるという実感が持てるようになりました。廃墟だったさとごろりんも自分たちの手でこんなに居心地のいい場所に変えていけるのです。

社会も自然も奥底では繋がっている
そんな存在に人は生かされている
酒井:
そういえば環境省、厚労省から表彰を受けたそうですね。
堀崎:
ええ。有難いことに2020年に、環境保全と児童福祉の一石二鳥の試みが認められまして、環境大臣表彰、厚労省子ども家庭局長表彰の双方を受けることができました。この縦割りを超えた表彰はおそらく画期的なことです。
私の理解では、里山保全も児童福祉も、それぞれの専門家がこうあるべきというやり方のある世界です。でも、それを継続するためにお金がかかり続ける。
私たちのやり方では児童養護施設の子どもたちが自ら開拓者精神を発揮して自らふるさとを創ろうとすることで、里山の保全も居場所づくりも同時に実現できる。しかも大したお金もかけずに楽しみながら継続できる。それが画期的だったのではないかと。

酒井:
山林も空き家も、関わり続けないとまた傷んでしまいますもんね。
堀崎:
はい、その通りです。活動は続けないと意味がないのです。でも、私たちのやり方って実は特別新しいものでもないんです。むしろ昔のやり方そのものです。昔の人って『生物の多様性』とか『環境保護』なんて知らないしそんな視点もなかった。ただ、生活を豊かにしようと里山に通い続けると、道や広場が踏み固められて、人が入れる状態に保全される。人が入ることで環境がかく乱されて、多様な環境と多様な生き物と生まれる。自然の恵みは取り過ぎるとなくなるから大切に扱われる。それと同じことをしているだけなんです。
酒井:
答えはここにあった、というシンプルなものですね。
厚生労働省ではどの当たりが評価されたのですか。
堀崎:
こども家庭庁の前身の、厚生労働省こども家庭局という児童養護施設を管轄する組織から表彰いただきました。
従来の発想では、よい児童福祉イコール、都会の中での専門家による手厚いケアや立派で快適な施設の提供でした。でも、それは下手をすると、子どもたち自身を受け身にしてしまい、自己解決能力の形成を阻害し、支援漬けにしてしまう懸念があります。
私たちは、荒れた山林や空き家といった埋もれた資源を活用して、「家に戻れないなら、自分でふるさとを作ればいいじゃないか、一緒にやろう」と呼びかけています。そんな子どもたちが自ら開拓者精神を発揮して自己解決しようとするやり方が評価されたのだと思います。
それに、社会的養護ってそもそも児童福祉法上成人するまでが対象なので、ずっと通える「ふるさと」をつくろうなんて発想自体がなかったのです。
酒井:
老子で言うところの『魚を与えるのではなく釣り方を教えろ』ですね。国のやっていることは魚を与えていることで、取り方は教えていない。
今堀崎さんが、児童養護施設の子どもたちとともにふるさとをつくろうと、身をもって示していることは、安心した中でこそ作れる『自立』を育む上で大事なことだと感じます。
堀崎:
私たちの目指す心豊かな暮らしや社会は、本人の『やりたい』というところが起点になります。だから、本人にも、ボランティアにも、『いいことをしよう!』なんて関わるのではなく、『一緒になってやってみる』『楽しみながら試行錯誤する』姿勢を求めています。そんな経験は、今後自立を目指す中で困難や失敗があっても『でも違う道、乗り越える道はきっとある』という自信を生んでいくはずと思っています。

酒井:
いやあ、堀崎さんの思いは一貫していますね!
堀崎:
私にはずっと大切にしている祖父の言葉があります。実は、私の祖父は貧しい炭屋の末っ子でしたが、その後商才を発揮して財を成すと、早々に引退して地域や周りの人のために散財し、最期には大したものは何も遺さず亡くなりました。
その後、仏壇のなかに祖父が書き記したメモが見つかりました。
そこには『一日も早く生活を安定させよ。そして余力ができたら、困っている人を救って、その方々の笑顔を見てこれこそ人生最高の幸せと思う人になれ』とあったのです。私は毎年、この言葉を新しい手帳に書き写すようにしています。
酒井:
やりがいとかではなく、生きるために働き、その上で誰かを助けてその人が喜ぶ姿を見るのが一番、と書いてあったのですね。
堀崎:
はい。よく仕事の『やりがい』探しが大切なんて言われる世の中ですが、その言葉に振り回されている人が多い気がして…多分、昔の人だったらそんな発想はなかったと思うのです。今どき、私も含めてみんなが自分のやりがい探しや生きがい探しで頭が精一杯になっているけれど、祖父に『そんなこと考える暇があったら、自分の生活をとっとと安定させろ』って叱られているような気持ちになったんです。
酒井:
確かに、仕事がやりがいって、結局自分のことしか見えてない状況だもんね。
堀崎:
仕事にやりがいを過度に求める考え方そのものが幻想だったのではないかと思うようになりました。
民俗学の本などを調べてみると、これは祖父だけの考え方ではなく、念仏思想が浸透していた明治の庶民の中ではごく普通の考え方だったと知りました。

酒井:
仕事にやりがいを求めるのは現代人だけかもしれないね。生活を確立した上で自分が困っている人を助けることができれば、その人たちの笑顔を見ることができて幸せに繋がる。
堀崎:
つくづく思うのですが、私たちの仕事や暮らしは、社会や自然に支えられているのですが、都会にいるとそれに気づけないんですよね。まるで魚が水を意識しないように。都会のビルや道路は、今も近くの里山を削った土砂を搬入して作られますが、都会の人からは犠牲になっている里山なんか見えない。お金を介することで目の前の自分の範囲しか見せない社会になっている気さえします。
でも少し視野を広げれば、企業の経営だって自分の生活だって、社会や自然のいろんな存在にお世話になって成り立っていることは自明なのです。だから早く余裕を作って困っている存在にまで視野を拡げることは大切なことと思います。
酒井:
普段から里山にいると強く感じるんでしょうね。
堀崎:
企業の環境保全活動で『人工林をなくしてどんぐりを植えて雑木林に変えましょう』なんて取組みがあります。でもそんなことあえてしなくても、木を伐っておけば自然って元に戻ろうとするたくましいチカラがある。やっている感を出していいことPRしようとするばかりではなくて、まずは自社の経営や自分の生活を成り立たせている背後にある繋がりに目を向けるところからはじめることが大切と感じます。
酒井:
全部繋がっている…これは東洋哲学でお釈迦様が言われているのと同じですよね。
結局自分というのは存在しなくて、自分も他人も同じ、食べるものも日光や水と繋がっているというような。
堀崎:
意識の範囲というのは変えることができる。いつも「私」しか見ようとしなかった意識を、「私たち」としてすこし隣にいる存在にまで範囲を拡げていく。本当に心の豊かな暮らしや社会はそこから生まれると思うのです。お釈迦様のように全人類や全存在にまで拡げるのは私のような凡人には難しいところですが(笑)。
私たちの活動でも、児童養護施設の子どもも、里山の生き物も、『支援してあげる対象』ではなく『私たちの仲間』と思えた瞬間に動き方、関わり方は変わってきます。
酒井:
私をどこまで『私たち』にするか。堀崎さんは、おじいさまからしっかりと考えを受け継いだんでしょうね。
社会福祉は立場や価値観で課題が変わりますが、堀崎さんのお話を伺う中で、根本はとてもシンプルなものだと感じました。
自然あふれる中で、懐かしい音や香りを感じながらの素晴らしいお話。今日は本当にありがとうございました。

プロフィール
堀崎 茂(ほりさき しげる)
NPO法人 東京里山開拓団 代表
1971年愛知生まれ、東京在住、2児の父。経営コンサル職、ITベンチャー経営、システム会社の事業開発職、IR支援会社のシステム開発職に従事した後、早期引退してNPO運営に注力。
ベンチャー企業600社の強み分析をした経験、大手上場企業の機関投資家向け決算・ESG説明会に年300回参加した経験、都心の不動産数百件の収益分析をした経験、空き家を数百軒を回って家賃無料で協力してくれる大家を探し出した経験も。
2006年頃から、たった一人で荒れた山林に通い始め、試行錯誤の末に、環境保全と児童福祉の一石二鳥を超効率的・超効果的に実現する前例のない社会事業を立上げ、現在NPO法人東京里山開拓団・代表として運営中。環境大臣&厚生労働省よりダブル表彰、環境白書掲載。
2024年から、NPO運営の傍ら、個人事業として、真の社会貢献を志向する企業や団体を支援するための講演、研修、実践支援を本格開始。活動現場やNPO運営の中で培ってきた「開拓者精神の発揮」、忙しいなかでも一石二鳥を見出す「ついで対応」、たくさんの現場にどっぷり漬かる「数稽古」などの方法論を実践志向で伝授。
個人的には、東京都心に暮らしながら、アウトドア・DIY趣味を生かして再生した里山やふもとの古民家に足しげく通って里山ライフを実践中。一般社団法人日本マインドフル・リーダーシップ協会事務局、講師も担当し、毎日マインドフルネスや座禅も実践。自らを実験台として、社会課題の山積する現代にて心豊かな暮らしや社会の実現を目指す。


