堀崎茂氏【前編】
堀崎 茂氏【前編】

堀崎茂氏×酒井英之
児童養護施設の子どもたちと共に
自立の基盤作りと地域再生に挑戦
東京郊外の八王子西ICから車で約10分、緑豊かな場所に立つ「さとごろりん」。こちらは「児童養護施設で育った子どもたちとともに自らふるさとを創り出そう」という思いで、NPO法人東京里山開拓団代表、堀崎 茂氏が立ち上げた「子どもたちのふるさとの家」です。築300年の古民家は、のべ144人の子どもたちやボランティアが携わり、まさに手作りで完成させた城。生活用水は雨水を使い、薪ストーブや囲炉裏で料理を作り、自然の厳しさと優しさを感じながらも「いつでも帰れる、安心できる場所」として、心の大きな拠り所となっています。
そこで代表の堀崎さんに、ふるさとの家づくりに携わった経緯と、子どもたちへの影響、さらには全国的に課題となる荒れた山林や空き家、子どもの虐待や貧困の問題、そして「本当の豊かさとは何か」を語っていただきました。
学生時代のボランティアをきっかけに、
本当の豊かさを問うてみたら…
酒井:
さとごろりん。素敵なお名前、そして素敵な場所ですね。
堀崎:
最初はごろごろできるところがいいね~なんて誰かが『里山ごろりん』と言い出したのが転じてこの名前になりました。
都内には『まちごろりん』もあります。名前って不思議な力があって、名前だけで共感が拡がっていく気がします。
酒井:
こちらは築300年の古民家を改修したそうで、世代的には吉宗公の時代ですよね。
こんな貴重な建物をどうやって見つけたんですか?
堀崎:
このエリアの里山に20年くらい通ってきましたが、この建物の存在を知ったのは3年程前です。当時はコロナ禍で、児童養護施設の人たちだけで通えるふるさとの家を作ろうと、里山のふもとで空き家を訪ね歩いていていました。ここはそれまで住んでいた方が夜逃げして何年も経ち廃墟のようになっていました。そこから5ヶ月かけて子どもたちの力も借りて、住めるようにしました。


酒井:
手作りで改修した感覚がいいですね。堀崎さんの肩書きの『NPO法人 東京里山開拓団』。この言葉にもワクワクします。素敵な活動をはじめたきっかけは?
堀崎:
元をたどると大学生時代に行きつきます。ボランティアサークルに入っていまして。児童相談所に来ていた子たちとキャンプに行くお兄さんみたいな感じですね。でも『自分には大したことはできない』という力不足も感じていました。
その後社会人となりボランティアからはずっと離れていました。35歳の時に東京に転職してきて、早速会社と自宅の往復生活がいやになりまして(苦笑)。趣味のアウトドアやDIYに没頭して荒れた山林通いを一人で始めました。自分の居場所をつくって逃げ込もうとしたのです。でも、それが想像以上に面白くて。鬱蒼としたやぶを伐り拓き、道や広場をつくって、そのうちツリーハウスも石かまども手作りして…。『豊かさって自分の手で作れるんだ』って実感したんです。
酒井:
活動が拡がりはじめたのは?
堀崎:
最初は家族や友達ですね。友人には『ツリーハウスから山桜を見ながら呑もう』って声をかけまして。山桜は、華やかさはないですが、桜吹雪とても美しいんですよ。
ただ、家族や友人だけではもったいないなと。昔ボランティアでかかわっていた児童養護施設の子どもたちを思い出しまして、ふるさとがない、帰る家がない彼らなら、ここに計り知れない価値を見出してくれるのではないか…と思ったのです。
酒井:
ふるさと、というワードが出ましたが、堀崎さんのふるさとは?
堀崎:
知多半島の愛知県半田市です。地方都市なので、初めて名古屋に出た時は建ち並ぶ高いビルにびっくりしました。その後大学生になって東京に出たらもっと巨大なビルがずっと立ち並ぶ街並みに『ものすごく豊かだ!』と感じました。
でも、実際に都会で暮らしてみると、豊かな人生を創り出そうと頑張っても、豊かになっている手応えが感じられなかったんです。成功している人を見ても、なんだか馬車馬のように働いて人生を消耗しているように見えて。
なんだか都会のなかでは見えない力によって、『豊かさ』がここにあると思わされているだけなんじゃないかと感じるようなりまして。でも、都会とは正反対の里山に逃避行しみたら『ここには豊かさがある!』と実感したんです。
酒井:
まさかの逃避行(笑)。環境を変えることで、本当の豊かさに気づいたんですね。そこから賛同してくれる児童養護施設に声をかけたと聞きましたが、大変だったそうですね。
堀崎:
本当にいくつの施設に断られたかわかりません。でも、考えてみれば当然ですよね。変な里山趣味の中年のおやじがいきなりやってきて、親代わりに大切に育てている子どもたちと一緒に荒れた山林を開拓しようなんていうのですから(苦笑)。
3年ほど働きかける中で、賛同してくれる児童養護施設の方とようやく出会うことができ、今に繋がっています。初回は真冬で里山に登る前は子どもたちもはじめ怪訝そうな顔をしていましたが。でも、帰りにはみんな『また来たい!明日も来たい!』といってこの活動の価値を確信しました。
酒井:
確かにドラマでしか見たことのない風景ですよね。他にはどんなメンバーさんがいらっしゃるんですか?
堀崎:
20代から40代の会社員、主婦や学生を中心に約50名です。全員がボランティアとして参加し、主に平日の夜に打ち合わせをして、休日に活動しています。

業者さんに任せず、ほぼDIY
その姿はリアルDASH村?
酒井:
古民家の改修の際の見積もりでは3000万円と言われたそうですね。
堀崎:
地元の大工の方に最低でも1年、3000万円はかかるよと言われました。でも、本格的にやるならその金額でも無理だと思いました(苦笑)。築300年の古民家は、今の定番の規格住宅なんかとは違いますから。木の特性を見ながら鑿(のみ)で穴をあけて木を組んで…なんてまるで宮大工の世界で、今どきまともにできる大工なんていないんですよ。
酒井:
それを、いわゆる素人だけでここまで作り上げたのがすごいです。随所に工夫が見られますし。
堀崎:
私たちは柱を一部補強した以外、躯体の部分はさわっていません。骨組みが太くてしっかりしていたのでなんとかなりました。でも雨漏り補修、床板張替え、トイレ・流し・風呂改造、内外塗装などは自分たちでしました。昔の家は意外とシンプルで触りやすいんですよ。雨漏りがしたらトタンを張り、床が腐っていたら板をあててといった感じで、できる範囲でなんとか工夫していくのです。素人DIYでもやれることはたくさんありますよ。
酒井:
ここは水道もないですよね。確か沢が枯れちゃったとか。
堀崎:
大雨で沢が土砂で埋もれてしまったみたいで。仕方がないので屋根に降る雨を樋で集めて、水槽フィルターで濾過して高い位置のタンクに溜めています。

飲み水としては使えませんが、洗い物など生活用水には充分です。
酒井:
食事は?
堀崎:
さとごろりんには薪ストーブ、囲炉裏、プロパンのガス台、屋外にバーベキュー場があります。強い火力でじっくり作る煮物には薪ストーブ、ちょっとしたあぶりものには囲炉裏がいいですね。
酒井:
リアルDASH村!
堀崎:
はい。薪ストーブの燃料は廃材や枯れ木です。空き家や山林を整備していると大量に出てきます。料理をやればやるほど、家や里山が自然に綺麗になっていくという取組みです。ここでは、自分たちが楽しんでいく先に、空き家や山林の再生という社会課題克服に繋がるいい循環が生み出されているのです。火事には細心の注意を払っていますが。
酒井:
トイレにも工夫があるそうですね。
堀崎:
見た目は、いわゆるボットン便所なんですが、排泄物って90数%が水分なので、便壺に穴をあけて水分を抜けるようにして、竹チップと発酵促進剤を定期的に入れています。すると2年経っても大して貯まらず、においも全くありません。一杯になればかき出して肥料として土に戻そうと思っています。
酒井:
今流行りのサウナもあるんだよね。


堀崎:
もともとお風呂場だったんですが、水がなくて。
雨水で入るのもどうなんだろう…と考えた時にサウナにしようと思いつきました。サウナ専用の薪ストーブなので一酸化炭素中毒の危険は少なく、ロウリュもできます。
酒井:
僕たちが今寛いでいる、この囲炉裏も掘り起こしたとか。
堀崎:
台所を片付けていたら、床板の下に埋もれているのを発見しまして。大家さんが小さい頃は日常的に使っていたそうです。お茶は、家の周りにあるお茶の木から葉っぱを採ってきて、囲炉裏で炒って手作りしていたそうです。
酒井:
この囲炉裏、さっきからヤカンをかけているけれどなかなかお湯にならない(笑)。でも、こうやって時間がかかるのもいいよね。

堀崎:
こういう時間の中で会話が生まれたり、食べる楽しみがより膨らんだり、人同士の繋がりが深まったりしていたんでしょうね。今どきの家ではすぐにお湯が沸くので待たないのはいいけれど有り難みもつながりも感じられないですよね。
酒井:
おかげで普段にはない、ゆっくりとした時間の流れを楽しんでいます。
確か伊豆にインフラのない旅館があるそうで、富裕層に人気らしいです。お水は井戸水、電気もソーラーで蓄電。料理はレストランに食べにいくそうですが。
堀崎:
都会の人が自然と直接つながれる体験を買うんでしょうね。実は、ここも大手旅行社から海外富裕層向けの日本体験企画を提案されたことがあるんです。でも、やっぱり子どもたちが優先。目先のビジネスよりやりたいことがあるのでお断りしました。
現代都市社会にあっても荒れた山林や空き家に関わることで本当に心豊かな生活が実現できるのか、それを知りたいし、挑戦していきたいですね。
ふるさとのある人だけが持てる
「帰る家がある」という安心感
酒井:
改めて、現在の具体的な活動を教えていただけますか。
堀崎:
はい、私たちの児童養護施設とのふるさとづくり活動には3つの柱があります。
1つ目が、児童養護施設の子どもたちとともに荒れた山林を自ら伐り拓いて、ふるさとの山を創り出すこと。
2つ目が、ふもとの空き家をDIY改修して、ふるさとの家『さとごろりん』を創り出すこと。
3つ目が、都心の空き家をDIY改修して、最大5年間家賃無料などで社会的養護対象者の自立を応援する家『まちごろりん』を創り出すこと。
酒井:
ふるさとの山、ふるさとの家、都会で普段暮らす家をこれらみんなあわせたふるさとを自分たちの手で創り出そうと。
堀崎:
はい。ある調査では東京では「ふるさとがない」と感じる人が約4割に上るそうです。
帰る家がない、戻れない事情がある児童養護施設で育った子どもたちもきっとそこに含まれます。
もしないならいつまでも固執したり嘆いたりするばかりではなく、自分の手で一緒にふるさとを作ろう、と呼びかけたわけです。本当のふるさとにはなれなくも、仲間との思い出を重ねて、何かあったら戻ることができる、受け入れられるという心のふるさとにはきっとなれるはずと思っているのです。
酒井:
おっしゃる通りですね。

堀崎:
戻れる場所がある人とそうない人では、人生に大きな差が生まれると感じています。
というのも、私が人生の中でいろいろと挑戦できたのは、振り返ってみると、『いざとなったらふるさとがある』という安心感があったから。もしすべてを失うことがあっても、またふるさとで一からやり直せばいいと思えるからこそリスクが取れたんです。
ふるさとは単なるノスタルジーではなく、人生のリスクテイクを可能にする心の安定基盤と思うのです。そんな存在はきっと人生に大きな意味を持つと思っています。
酒井:
そうですね…僕も今、若い頃勤めていたブラザー工業を辞めた時のことを思い出しました。『なんとかなる』と考えて友人と起業したのですが、若気の至りで失敗してしまい、大きな負債を抱えてしまったのです。そのとき父が『とにかく岐阜に帰ってこい』と言ってくれて。そこで名古屋で就職先を探して、後に堀崎さんに出会う東海総合研究所に入るきっかけになりました。

堀崎:
酒井さんにもそんな時があったんですね。
酒井:
ふるさとで身を立て直せたことって、僕にとって幸せなことだったんだなと改めて思えました。人生をリセットするためにはふるさとの存在は不可欠。『戻れるという安心感があるからリスクが取れる』はまさにその通り。ふるさとの価値に今、気が付きました。
堀崎:
ふるさとはリスクヘッジの場所でもあるけれど、加えて、心豊かな人生を生み出す場所でもあるのかなと。『ご飯美味しいね』『みんなで遊んで楽しかった』といった心豊な暮らしの原体験をしっかりと積み上げていく。そこをおざなりにすると、お金さえ稼げば豊かな生活が生み出せると勘違いするようになってしまうかもしれない。
ここに滞在していると、日常の営み、『食べる、おしゃべりする、遊ぶ、働く、休む、寝る』といったごく当たり前のことが心から楽しめるようになります。そんな体験があるかないかで、人生は大きく違ってくるのかなと。
酒井:
では堀崎さんにも、ふるさとでの原体験があったんですか。
堀崎:
私の実家は戦前からの古い家でした。さすがに、囲炉裏はありませんでしたが(笑)、間取りや縁側はここと同じような感じだったかな。もう一つ、カブスカウトで野外活動体験を毎月のようにやっていた経験もあります。
ここ里山やさとごろりんはそんな昔の感覚や体験を思い出させてくれます。ゆったりとした時間が流れて、ここにいるだけで心が落ち着いて、お互いに心を開いていくことができるようなところです。
実際、子どもたちに感想を聴いてみると、『自由な世界』『自分の家みたい』『一生いられる』なんて声もあって、本当のふるさとに近づいているのを感じます。虐待や貧困で親と一緒に暮らせずトラウマまでを抱えている子どもも多いので、心のふるさとは本当に大切なものです。
酒井:
先程僕たちがしていたように、縁側でのんびりお茶を飲むなんて風景も、今の子には描けないでしょうね。
堀崎:
都会では自分の家に玄関先に他人が入り込んできたら、のんびりくつろぐどころか恐怖を感じるかもですね(苦笑)

酒井:
一見無駄に見える時間って本当は大切で…僕も退職を考えた時、地元の長良川の流れを岩も上からぼんやり眺めながら『よし、辞めよう』って決意しましたから。
暮らしを安心して営む場所、何にも邪魔されず1人の時間を過ごせる…そんな豊かさを追求してきたことが3つ目の柱の『都心での自立応援の家づくり』に繋がるのかな?
堀崎:
はい。里山やさとごろりんで、自分たちの手で大したお金もかけずに居場所を創り出せたことに自信をつけまして。
実は児童養護施設って基本的には18歳で退所しなければならないんです。頼りなる親もいない高校卒業したばかりの子に『はい、明日からは自分の力で頑張って自立してね』なんていう厳しい制度なんです。
酒井:
親がいる子でも難しいのに、1人暮らしして、仕事や勉強、家事も自分でこなすのは厳しい…。
堀崎:
そうなんです。昨年の4月に児童養護施設入居の年齢制限は撤廃されました。でも、現実的には職員の数も収容できる人数も決まっているので、出ていかないと他の人が入れなくなるのです。そして、退所後一人暮らしをはじめて、ほんのちょっとしたきっかけで夜の世界、闇の世界へと転落していく人も多いのです。
酒井:
だから家賃無料の住まいを提供するんですね。
堀崎:
ええ。ただ、児童養護施設の時のような支援をずっと続けることになってしまったら、それは支援漬けであって自立をかえって遅らせてしまいかねないとも考えています。だから、まちごろりんでは、最大5年間と期限を切って彼らにも自分の力をできる限り発揮してもらい、できないところをまちごろりんで税金にも頼らず民間の力で応援することにしました。
酒井:
普段はまちごろりんや児童養護施設に住んでいて、時々里山やさとごろりんに来て、ワイワイと横の繋がりを増やす流れが目に浮かびます。ここに参加する児童養護施設の子どもたちの年齢層はどのくらいなんですか?
堀崎:
幼児から高校生まで児童養護施設にいる子どもたちすべてが対象です。休日や休暇に、子どもが5、6人くらい職員の引率で車でやってくるというパターンが多いです。
本当はもっとたくさんの子どもたちが一度に来られるといいんですが、児童養護施設から引率できる職員さんも限られているので。
酒井:
課題は多いけれど、堀崎さんが動き、里山が動き、子どもたちの心も動く。
堀崎:
社会課題山積の今こそが、実はチャンスなんじゃないかと思っています。空き家や荒れた山林なんてあっても誰も関わろうとしないですよね(苦笑)。税金がかかり、空き家には光熱費水道代や保険もかかるので、使わない山林や空き家なんかも持っていると負の資産でしかない。
でも、だからこそ信用されれば無料で使わせていただける。私たち東京里山開拓団の活動でも共感いただける大家さん、地主さんが少しずつ拡がっています。

行政・企業・そして自分たち
それぞれの目的や目標の違いとは
酒井:
この活動で目指す所は『開拓者精神を自ら発揮して楽しみながら心豊かな暮らしや社会を創り出すこと』なんですね。どんなふうに理解を得て活動を拡げているのですか。
堀崎:
実は相手によって進め方の説明を少しずつ変えています(苦笑)。行政には『環境保全と児童福祉の一石二鳥ですよ』と。環境と福祉は縦割り組織のなかでは全く別組織の別取組なので、関係者の心に響くのです。児童養護施設には『困難を楽しみながら自ら乗り越えていく力を養う』といった感じで説明して理解を得るようにしています。
財政運営面では、今は行政からの補助金・助成金にはできる限り頼らない方針をとっています。他のNPOの方からも『せっかく子ども支援の補助金や助成金があふれているのだからもらえばいいのに』と言われることもありますが、ちょっとバブルの匂いも感じています。それをやり出すと支援漬けにつながる危険もあり、手間や制約もあって楽しくもない。なによりそこに依存すれば、それがなければ続けられない組織体質になってしまう。
私たちは、ふるさとづくりはお金もらってやる仕事ではなく、心の底からやりたいからやっている趣味や生活の延長でありたいと思っているのです。
酒井さんはアユ釣りがお好きですが、それが仕事になったら楽しくないですよね?
酒井:
楽しくないね~(笑)
堀崎:
仕事にしてしまったら、囲炉裏でこんな風に楽しむこともできないと思います。楽しいからこそ、お金にならなくても続けられる。続けることではじめて、社会課題の解決につながる。結局のところ、開拓者らしく行政に頼らない自主独立運営するのが理想なんじゃないかと。

酒井:
アユ釣りに例えてもらってとてもわかりやすかったです。以前僕も新聞の取材でアユ釣りのシーンが撮りたいと言われてね、でも釣れない時もあって、そうなると新聞社が求める写真が撮れないリスクがある。だからお断りしたんです。責任が発生すると仕事になってしまうので。
堀崎さんの場合も、楽しさを優先したいから助成金という選択肢はなくしたんですね。
堀崎:
ええ、やりたい人がやるボランティア運営を中核に据えて、必要となる最低限の経費は寄付や自主事業でまかなっていて永続できる形を目指しています。
酒井:
寄付したい方は多いと思いますが、どんなところに共感してくれるのでしょうか。
堀崎:
最近はCSRに力を入れる企業さんからの寄付が増えています。当方の活動の実績や本気度に共感いただけるのはもちろんですが、組織運営の効率性、効果、透明性も評価いただいています。企業としては、当然いい加減なところにはお金を出せないので、こちらのことを相当調べた上で声がけいただいているようです。
酒井:
企業だと株主さんから『そんなことより配当を』なんていうケースもあるでしょうが、そういう面に関してはどう考えていますか?
堀崎:
株主の利益かステークホルダーの利益かという議論は、ここ10年ほど世界的に注目を集めたテーマですよね。私の考えでは、企業の方にはぜひ後者の視点を持ってほしいとおもっていますが、それはいいことだからではなく、効率と効果の面からです。企業は利益を最優先して社会課題があるなら税金を介してやればいいという考え方は、政治・行政・業者の巨大な構造を介すことできわめて非効率になっていると感じます。一方で、企業が直接社会貢献に取り組めば、社会課題克服そのものに加えて、社員のやりがいや帰属意識向上、社外からの評判の向上など副次的な効果も生み出すことができます。
寄付を受ける私たちとしては、そんな企業の思いを踏まえて、企業との連携や報告強化、活動の効率と効果の追求を心がけています。実際、私たちは、通常の20分の1という超低コストで、ふるさとという究極の価値を提供しています。
例えば、都内で自立支援活動をしようと思ったら、家賃や人件費、改修費なども含め一人分でざっと月16万円かかります。ですが、私たちの『まちごろりん』なら月8千円で済む。理由は家賃がタダ、改修も運営もボランティアだからです。

酒井:
業者さんに頼むと1/20どころではないよね。
堀崎:
そうなんです。さらに、最上流の税金が納められた段階までさかのぼって社会貢献の費用対効果を比較するなら、超・効率的といっていいと思います。山林では一度きれいにしてもやり続けないとまたすぐに元に戻ってしまいます。だから、いかにコストをかけずに継続できる仕組みを作れるかがポイントなのです。私たちは開拓者精神を自ら発揮して楽しみながらふるさとづくりを進めることで、超・効率的で効果的な運営を実現しています。
酒井:
家も住む人がいないと荒れてしまうように、住める状態にし、ずっとやり続ける。簡単だけれど難しく、大事なことですね。
酒井:
さて、活動はずいぶん進展しているように見えるけれど、まだまだやりたいことが?
後編へつづく‥‥。

