vol.528「自分が幸せになるための『易経』の教えとは」

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.528

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「自分が幸せになるための『易経』の教えとは」

 

紅葉シーズンもそろそろ終わりですね。
あなたはご覧になられましたか?

 

私は岐阜県土岐市の曽木公園に行ってきました。
曽木公園は、池に映るもみじが大変に美しい
「逆さもみじ」の公園として有名です。
夜はライトアップされて、一層幻想的になります。
https://www.kankou-gifu.jp/event/detail_1015.html

 

その池ですが、私が見に行った時は
枯葉が一枚も落ちていませんでした。
だからこそキレイな「逆さもみじ」が見られるのですが、
なぜ落ちていないのか?これにはわけがありました。

 

地元のテレビが報道していたのですが、
実は地元の人が紅葉の期間中、池の水を抜いては
底に溜まった泥を清掃し、水が済んだ状態になるよう
環境を整えてくれていたのです。

 

そればかりではありません。
もみじの色づき具合によって、どの木をどの角度から
照らしたら最も美しく見えるかを考えて、
日々照明の位置を変えていました。

 

その照明担当は、電気の専門業者ではなく、地元の人。
他にも会場では、豚汁の炊き出しが行われていました。
振舞ってくれたのは地元のおばさんたちです。

 

材料の野菜は、地元の農家からの支給だそう。
豚汁一杯300円ですが、決して儲けが狙いではなく、
この環境を維持するための300円です。

 

そんな地元の人に支えられた曽木公園の紅葉ですが、
20年以上続いたライトアップは今年で終わり。
原因は、地元の人たちの高齢化と町の過疎化でした。

 

そのことを新聞で知ったときに、
「集客力のあるこのイベントを
なぜもっと土岐市がバックアップしないのかな?」と
とても残念に思いました。

 

ところが、上記のように地元の人たちがベストな環境を整えようと
日夜努力をしている話を聞くと、
さすがにこれを続けようとは言えなくなってしまいました。

 

テレビの報道の中でも地元の人たちが
「この時期にアルバイトを雇えば良いというものではない。
今年のイベントが終わったら、早速来年の準備を
しなければいけないのだから」と語っていました。

 

陰で支えてくれる人がいてはじめて、
美しい逆さもみじが楽しめるのです。

 

こうした影で人を支え、人楽しませる力のことを「陰徳」と言います。
この言葉は先日、弊社が主催した『易経セミナー』で
ご講演頂いた小椋浩一先生から教わりました。

 

小椋先生のお話を、酒井流に解釈しますと
易経はものごとを陰と陽に分けて
それがサイクルのように回るという教えです。

 

春夏秋冬も、夏という陽の時期もあれば、
冬という陰の時期があります。
が、冬でも次の春のための準備をし、
下へと根を伸ばして、雪の下で芽吹いているのであって、
決して暗い時期ではありません。

 

そして、陰の時期の過ごし方や、
陰徳を持った人の存在こそが、
陽を輝かせる上で大事だというのです。

 

小椋先生はその陰徳の力を発揮した存在として
WBCで世界一を果たした栗山英樹監督を取り上げていました。

 

例えば、栗山監督は従来の監督と比べて以下の違いがあると言います。
1.栗山ジャパンではない
従来は「王ジャパン」「長嶋ジャパン」と、
チームが監督名で呼ばれていましたが、
今回は誰も「栗山ジャパン」とは呼んでいない。

 

2.監督のために頑張る、が動機ではない
従来は監督を胴上げする、が動機の選手がいた。
が、今回は「米国に勝って日本野球の素晴らしさを伝える」のが動機。
それで一体感をつくり、結果として
「選手が素晴らしかった」と言われている。

 

3.周東選手は「自分の活躍はどうでもいい」と
チームファーストの姿勢を示した。
WBCはメジャーリーグへのアピールの場。
出場機会に乏しい選手の不満が爆発してもおかしくないが、
そんな選手は一人もいなかった。

 

4.源田選手は「指は骨折ですが、出ます」と言って出場した。
本業(シーズン)優先で辞退する人もいるのに、
チームファーストの姿勢を示した。

 

こうした違いは、栗山監督の陰徳の力から生まれました。
確かにベストセラーになった『栗山ノート2』(光文社)の中に
易経から引用が随所に出てきます。
易経からの学びがWBC優勝という快挙に繋がったのです。

 

では、どうしたら曽木公園の地元の人々や栗山監督のように、
陰徳の力を発揮するできる人になれるのでしょうか?

 

私は2つのことが大切だろうと思います。
ひとつは、「人を喜ばせたい」という純粋な気持ちです。

 

人はどんなときに幸せを感じるかと言えば、
誰かのために何かを一生懸命にやって
その人が喜んでくれたときです。

 

それを曽木町の皆さんや栗山監督のように
「これを担うのは私たちしかいない」と使命感を持ってやる。
このことを、イメージトレーニング理論の第一人者である
西田文郎先生は『他喜力』と呼んでいます。
他喜力こそ陰徳の力そのものです。
https://www.youtube.com/watch?v=Z-ek4n4rkCM

 

もう一つは、自分の近くで陰徳の力に気づき、
感謝することです。

 

人間の心理のひとつに、「返報性」があります。
誰かに親切にされたら、自分も親切なことがしたくなる心理です。
それと同じで、誰かの陰徳の力に気づき、感謝できれば、
自分も陰徳の力を発揮したくなるのです。

 

花瓶に花を飾ってくれる人、水を変えてくれている人、
コピー用紙を運んでくれる人、在庫を確認してくれる人、
機械に補充してくれる人、点検してくれる人…
そんな人が必ずあなたの周りにはいないでしょうか?

 

気づいたら「いつもありがとう」と、
感謝の言葉を伝えましょう。
リーダーの陰徳の力はやがてチーム全体に伝播します。
きっとお互いを認め合う、素敵なチームになるでしょう。

 

小椋先生は、易経は今から3000年も前に、
「人が幸せになる方法」を説いた古典だと言います。

 

誰にもある陰徳の力。
それを発揮して周囲を幸せにし、
自分も幸せになりましょう。