vol.510「自社の魅力を伝える言葉磨きのやり方・伝え方」

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.510

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「自社の魅力を伝える言葉磨きのやり方・伝え方」

 

プロ野球でタイガースが強いですね
5月は19勝5敗という球団タイ記録だそうです。

 

私の友人の阪神ファンは自分の Facebook に
「交流初戦・西武に堂々と勝って9連勝。
タイガース、負ける気がしない。
この調子でこれからも頑張れ!!!」と投稿しています。
すごい盛り上がりですね。

 

ちなみに プロ野球の世界には「5月攻勢」という言葉があります。
5月に勝ち進むことを言うのですが
6月攻勢とか 7月攻勢という言葉はありません。
なぜ5月だけ 5月攻勢というのか、ずっと不思議でした。

 

そこでCBCテレビのニュース番組で
コメンテーターをしていた時に、
スポーツキャスターだった牛島和彦さん(元ベイスターズ監督)に
「なぜ5月だけ5月攻勢というのですか?」と尋ねてみました。

 

すると牛島さんは、次のように応えてくれました。
「プロ野球の監督にとって目標は優勝です。
優勝争いに加わるには、7月のオールスターの時点で
首位に5ゲーム差以内に着けることが絶対条件です。
そのため、5つぐらいの貯金(勝ち越し)が欲しいのです。

 

ではその貯金をいつ作るかというと、
4月は相手の戦力もわからず手探り状態なのでイーブンでいけばOK。
6月は梅雨で、主力選手が故障するかもしれない。
だから若干のマイナスも覚悟する。
すると貯金を貯められるのは5月のみとなります。
だから5月に勝ち進むことを5月攻勢というのです。

 

この明快な解説に私は心底納得しました。
5月に勝ち進み、5つ以上の貯金をすることは、
監督にとっての「優勝KPI」だったのです。

 

さて、先ほどの私の友人のように「負ける気がしない」という人は
今まさに自己肯定感が強い状態と言えるでしょう。
自己肯定感とは「ありのままの自分を肯定する感覚」のことです。

 

自分自身が「今の自分」を認め、尊重することで生まれる
「大丈夫、私はできる、やれる」という自信で、
物事を前に進めるための原動力です。

 

この自信を会社に置き換えたものが「自社肯定感」です。
社員が「ありのままの自社を肯定する」のことで、
「大丈夫、うちの会社はいい会社だ。ここで働く価値はある。
ここで働けて私は幸せだ」と、自覚する感覚です。
この自社肯定感が高ければ、社員はまず辞めません。

 

そのため 社員に自社肯定感を持たせるのは経営者の重要な仕事です。

 

ではどのようにして自社肯定感を持たせたら良いのでしょうか。
ここでは、簡単な2つの方法をお伝えしましょう。

 

1つ目は自社の独自性を伝える言葉を持つことです。
独自性の切り口は、歴史の長さや規模の大きさ、
サービス力、技術力など様々ありますが、
以下の文章に当てはまる 内容を考えてみましょう。

 

「普通の会社は〇〇まではするが、△△はしない。
が、わが社は違う。
〇〇したら△△まで必ず行う。
なぜそこまでするのか、わかりますか?
それは…
◇◇をどこよりも大事に考えているからです」

 

これを若手社員に教えるのです。
すると自社の強みと、それを生み出している
背景( 自社の理念や志)がはっきりと伝わります。

 

例えば、先日、工場の天井クレーンのメーカーで、
リーダークラスを集めた研修を行いました。
その研修中に、このワークを行いました。
するとあるリーダーが、上記を用いて次のように語りました。

 

「普通の会社はクレーンの高所メンテナンスの時、
ハシゴを持って行きます。
が、我が社はハシゴは持って行きません。
必ず高所作業車で行きます。なぜか分かりますか?」

 

「ハシゴに乗って作業すると丁寧に点検したい箇所が
よく見えないことがあるからです。
が、高所作業車であれば細部まで見ることができます。
また、ハシゴでは作業に危険を伴うからです。
安全な状態でしっかり点検をするには高所作業車が欠かせないのです」

 

これは良い回答だな、と私は思いました。
そこで、この回答に私が意地悪で突っ込んでみました。
「そこまでしたら大変じゃないですか?」

 

すると、発言したリーダーは次のように続けました。
「確かに大変です。 コストもアップします。
が、そこがいいところじゃないですか。
ちょっと想像してみてください。
そこまでしっかりやると、お客様も納得してくれます。
おかげさまで、大変評判がいいのです」

 

これを聴いた研修に参加していたメンバーが、一斉に拍手をしました。
それは、とても大きな拍手でした。
皆が、「それがうちの会社のいいところだ!」と共感したのです。
このような会話が多ければ、自ずと「自社肯定感」は上がるでしょう。

 

また私のタイガースファンの友人は次のように言います。
「私は甲子園で応援するのが好きでね。
普通の野球ファンは観戦するだけでしょ。
それだと、チームの負けが混んだら、球場に行かなくなるよね。
でも、タイガースファンは違うんだ。
どれだけ負けても応援に行く。なぜだと思う?」

 

「タイガースファンは観戦じゃなくて、参戦してるんだよ。
六甲おろしを歌いながら、選手と一緒に戦ってるんだ」

 

聞きながら、タイガースの魅力が分かった気がしました。
こういうことを言われたら、
それがきっかけでタイガースファンになる人もいるでしょう。

 

では2つ目です。こちらも以下の文章に、
自社のことを当てはめて考えてみてください。

 

「私はわが社の経営理念が大好きでね。
ここには〇〇の想いが込められているんだ。
かつて◇◇の目に遭ったとき、
この言葉が私を勇気づけてくれたんだ」

 

これは 経営理念の魅力を伝える言葉です。
経営理念は抽象的なものですが
自分のエピソードと合わせて伝えると、
具体性があるので、確実に伝わるのです。

 

さらにこういう話ができる先輩や上司は
確実に部下から慕われるでしょう。
これまで多くの経営者に出会ってきましたが、
「私はこの会社の理念が大好きなんだ」
「辛いときこの会社の理念に救われるんだ」と語る人は、
とても誠実で、信頼できる人ばかりでした。

 

「人は自己肯定感以上の仕事はできない」と言われます。
自社肯定感も同じでしょう。

 

自社肯定感を上げる伝え方を
ぜひ仲間と、話し合ってみてください。
良い言葉が見つかったら、仲間への動機付けのほか
セールスや採用の現場にも生かしてくださいね。

 

5月攻勢で優勝KPIクリアしたタイガースファンの皆さん、
85年のバックスクリーン3連発ではないですが、
タイガースが強いと日本中が元気になります。
ますます応援してくださいね!