vol.388『真田幸村に学ぶ籠城戦の勝ち方』

『真田幸村に学ぶ籠城戦の勝ち方』

 

「今はまるで籠城しているようですね」
コロナ禍の現状について話していると、
ある社長がポロッとこう言いました。

 

「籠城か……確かにそうかもしれない」
そう思った私は、
籠城の戦い方について調べてみました。

 

すると、籠城戦で勝つ方法は
2つだけだと書かれていました。

 

第1は、援軍が来ること。
第2は、奇襲に次ぐ奇襲で包囲網を突破すること。

 

この二点について解説してみましょう。

 

第1の援軍待ちで有名なのは、
秀吉の小田原合戦です。
強大な北条氏は西から攻め寄せる秀吉に対して、
籠城作戦を取りました。

 

それは北条氏が縁戚関係にあった徳川氏と伊達氏が
秀吉ではなく自分に味方すると期待していたからです。

 

しかしながら徳川氏も伊達氏も秀吉側につきました。
そのため、どれだけ籠城しても援軍が来ません。
結果的に北条氏は滅亡しました。

 

このことを、現状に置き換えてみましょう。
「早くコロナ禍が過ぎ去って
元通りにならないかな……」と
多くの企業が耐えています。

 

耐えていれば、いつかコロナ禍は終息するでしょう。
が、以前と同じようになるかどうかわかりません。

 

あなたは、コロナ終息後の姿が、
以前だと同じとお考えですか?

 

例えば、ある外食店では三密を避けるために
席数を3割(7/10)減らして営業を再開しています。
この状態で従来と同じだけの収益を出そうとすると、
客単価か客回転をその逆数の
4割アップ(10/7)しないといけません。

 

それを実現しようとしたら、
メニューをより高級なものに変えるか、
オペレーションを工夫するか、
固定費を抑え、縮小均衡を図るしかありません。

 

このように、やり方を変えないと
アフターコロナは生き残れません。
ただ待つのではなく、終息後に備えて準備をする。
それを今から始めないと、勝機を逸してしまいます。

 

第2の「奇襲に次ぐ奇襲を繰り出す作戦」は、
大阪冬の陣で真田幸村が「真田丸」という砦を作り、
徳川軍を迎え撃った例があります。

 

真田丸は大河ドラマのタイトルにも
なりましたから有名ですね。

 

幸村は、大阪城に籠城しても援軍が期待できないので
討って出るしか勝機がないと考えていました。
しかもそのチャンスは、大軍に囲まれる前しかない。

 

そこで徳川全軍が大阪へ到着する前に真田丸を築き、
包囲できなくしてしまおうと考えたのです。

 

しかしながら、豊臣家の重臣たちと
幸村のような浪人たちとで意見がまとまらず、
その間に本丸に大砲を打ち込まれて敗北しました。

 

「奇襲に継ぐ奇襲」で成功するポイントは、
幸村のように「速く仕掛けること」と、
「全軍が一致団結して動く」とことです。

 

私はボトムアップ型の経営指導が得意ですが、
それは平時の時であって、有事の時は全く別です。

 

有事の時は、なんと言ってもスピードが命です。
トップがリスクを背負う覚悟を決めたら、
「私に続け!」と全社員に号令を発し、
率先垂範で動かないといけません。

 

現にTVでは連日のように安倍総理やトランプ大統領、
習総書記の言葉が報道されています。
危機の時はトップの言葉と行動が、
平時の何倍も重いメッセージになるのです。

 

スピード意思決定と全社を一体化させるのに
欠かせないのが、トップが信じるビジョンです。

 

私は昨年1年間、中小企業大学校等の社長塾で
約50社のビジョンづくりをお手伝いしました。

 

その中の一人は、先日新聞社から
「コロナ禍を受けての取組は?」と尋ねられ、
次のように答えています。

 

「既存事業の停滞を機会と捉え、かねてから
力を入れたいと思っていた分野への投資を進める」。

 

昨年の受講生は、誰もこんな事態は想定していませんでした。
講師である私も全く考えていませんでした。

 

ただ五輪後には2年程度の不況が来ると予想されました。
オリンピックイヤーの後はいつもそうなるからです。

 

ですから社長たちは、
五輪後の不況を前提とし、さらにその先にわが社は
何を目指すべきか、わが社の2025年ビジョンを
考えに考え抜いたのです。

 

そうしてできた自分のビジョンを信じる社長は、
コロナが過ぎ去るのを待ってなんかいません。

 

「不況が予想よりも早く激しく来た。
が、わが社が目指していることは変わらない」
と受け止め、着実に手を打っています。

 

会議を重ねて何一つ行動しないことを
「小田原評定」と言います。
今一番まずいのは、ただ時が過ぎるのを待つことです。

 

ヒントは、過去の蓄積の中にあります。
「自分達はいったい何を目指してここまで来たのか」
「ここから先、どんな会社にしたいのか」。


それを考えて、遅くならないうちに
真田丸のような奇襲を繰り出していきましょう。