号外【アンコールvol.354】 「チームマネジメントは日米でどう違うのか?」

V字研メルマガ 号外【アンコールvol.354】

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が
史上初の2試合連続完封試合目前で降板しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9ff5700191bc683f92b0e069b2ca4ddef4a5f630

 

記録優先(ファン優先)か、それとも本人の未来優先か。
賛否両論ありますが、この議論は以前もありました。

 

佐々木投手が大船渡高校3年生だったときの
2019年岩手県大会決勝戦。
彼は監督の判断で決勝に登板せず、
チームは敗れ、甲子園に行けなかったのです。

 

このときの監督は、米国で野球を学んだ人でした。
今回のロッテの井口監督も元大リーガーです。
監督の判断には、日米のマネジメントスタイルの違いが見えます。

 

例えば、大リーグで投手経験のある藤川球児さんはこう言っています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f135fd5f1bad080bc6eb6a542ba4fd65b71e2fcd

国内でファンサービスで人気を博した中畑清さんはこう言っています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0641575887d661cae93bebcb84e92defc26dca05

 

この違いを2019年8月5日発行の
【V字研メルマガ354号】に書いています。
「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」の違いに
通じるところがあります。

 

今回「日米のマネジメントスタイルの違い」を再びお伝えしたく
アンコール掲載します。

 

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『チームマネジメントは日米でどう違うのか?』

 

甲子園で熱戦が続いていますね。
今年もすごいドラマが生まれそうですねワクワクします。

 

さて、今年はある高校が
甲子園に出られないことで話題になりました。
岩手県の大船渡高校です。
ここには163 km/hの剛速球を投げる佐々木朗希投手がいます。

 

同校はあと1勝で甲子園という所まで来たのですが、
彼は決勝で投げませんでした。
監督が「今日投げると故障する可能性がある」と、
登板させなかったのです。

 

この監督の判断に、
多くの野球生経験者から賛否の声が寄せられました。
否定的な意見は
「皆が甲子園を目指して行っているのに、
特定の選手事情を優先するなんておかしい」という考え方です。

 

一方で賛成意見は
「一人の高校生の野球人生はまだまだ続く。
今のチームのために、それを終わらせるような
決断をするべきではない。英断だ」というものでした。

 

この二つを比較してみますと
前者は日本的なチームマネジメント、
後者は米国的なチームマネジメントに立った考え方だと思います。

 

日本的なチームマネジメントは、
前提が、メンバー全員が半人前ということです。
半人前なので、誰かが犠牲になったとしても
全員で強く強くなろうというものです。
ここでの監督の仕事は全員の結束力を高めていくことです。

 

一方 米国的なチームマネジメントは、
選手一人ひとりが一人前のプロだということです。
監督の仕事は確実にチームに求められた成果を出すために、
一人ひとりのプロをどう組み合わせ
どう戦うかをプログラミングすることです。

 

選手はその期待に応えようと、
それぞれの持ち場でプロのスキルを発揮します。

 

最近ではこのアメリカ的な
マネジメントの職場が増えてきています。

 

くら寿司は、新人でも年収1000万円で
将来の幹部候補を採用すると発表しています。
https://toyokeizai.net/articles/-/290502

 

富士通はAIに関する能力次第で
社員に3000~4000万円支払うと発表しました。

 

全員が半人前の横並びではなく、
一人ひとりの違いを認め、違いを生かすことが前提です。

 

このようなマネジメントが成立する条件は、
少なくとも2つあります。
第1は社員一人ひとりがリーダー並みに
チーム全体を見る視点を持っていることです。

 

一人ひとりは各持ち場のプロですが、
リーダーの目指しているところは何で、
周囲とそのような関係を築いていくべきか、
敏感に感じ取って言われる前に行動する必要があります。

 

第2はディレクションをするリーダーを
チームの皆が評価することです。
リーダーの理想の実現のために皆働くわけです。
もし皆が「こんなリーダーでは勝てない」と思ったら、
このリーダーはリーダーとして失格です。

 

そのためアメリカでは、
リーダーへの満足度を確かめる
従業員満足度調査が当たり前に行われています。

 

基準点より低い点だったリーダーは、
一度は改善の機会が与えられます。
しかし、2期続けて基準点を下回りますと更迭されます。

 

従業員満足度調査は自らを客観視し、自らの問題に気づく道具です。
調査される対象は直属の上司だけでなく社長にも及びます。
それを元に、自分を変える努力ができるリーダーを
部下は尊敬するのです。

 

部下に指摘されて態度を改める社長や上司など
これまで日本にはほとんどいませんでした。
こうしたマネジメントスタイルの変化を象徴するから、
大船渡高校の選択は、社会問題化したのでしょう。

 

経営者は自社のビジョンを考えるとき、
戦略と照らし合わせて
わが社は「半人前の団結集団」を目指すのか、
それとも「一流のプロ集団」を目指すのかを考えましょう。


そしてそれを実現するために
必要なマネジメントスタイルを確立しましょう。