vol.466『弱い社員の弱さを活かした逆転経営』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.466

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『弱い社員の弱さを活かした逆転経営』

 

この春、私の手元に続々と朗報が届きました。
10年ほど前から5年以上に渡り研修してきた
地方金庫の職員が、相次いで支店長に昇格したのです。

 

この金庫は全部で20支店と小規模ですが、
現在、支店長の半数以上が私の教え子です。
彼らの活躍で、金庫全体の業績も過去最高益を更新。
メールを開く度に、とても嬉しい気持ちになります。

 

実は、彼らは皆、「弱い世代」でした。

 

多くの会社には、「強い世代」と「弱い世代」が存在します。
「強い世代」とは、その会社の成長を牽引してきた
リーダーたちのことをいいます。

 

彼らは独自性の高い商品を作り、
マーケットを開拓し、今の繁栄の礎を作りました。
取り組んできたことは前例のないことばかり。
それを乗り越えた彼らの言動には、説得力があります。

 

この「強い世代」から少し若い世代が「弱い世代」です。
彼らは、「強い世代」の先輩たちから
常に「あれしろ、これしろ」と指示されました。
そして、その指示通りに働くと結果がついてきました。

 

よって「弱い世代」は人から指示されると
抜群の働きを見せます。
が、自分で考え自分から行動することが苦手になりました。

 

こんな「弱い世代」から少し若い世代にいるのが、
別の「強い世代」です。この「強い世代」は、
自分たちのすぐ上の世代が頼りない先輩だと見抜いています。

 

そして、今の時代に合わせた
マーケティングやマネジメントを学び、
それを経営に取り込むよう主張します。

 

こうした主張は新しいことへの挑戦なので、
成果が出れば、彼らの大きな自信となります。
その結果、この世代は後々「強い世代」へと成長します。

 

このように「強い世代」と「弱い世代」が
10年スパンで交互に発生します。
これを伊藤忠商事の社長を務めた丹羽宇一郎氏は
「ワン・スキップ・ジェネレーション」と呼んでいます。

 

「ワン・スキップ・ジェネレーション」は、
多くの経営者の悩みの種です。
「強い世代」の後を継ぐのは「弱い世代」です。
そんな彼らに代わりが務まるのか心配なのです。

 

冒頭の地方金庫も同じ悩みを抱えていました。
しかも、私が依頼を頂いたときは、
競争相手の地銀にメイン商品で売り負けて、
「強い世代」も含め組織全体が自信を失っている状態でした。

 

頼るべきは「弱い世代」しかない。
そこで私は、「弱い世代」を強くすることよりも、
「弱い世代」の弱さを活かした、
「弱い世代」ならではのマネジメントを教えました。

 

それが、「逆さまのピラミッド」です。

 

伝統的な組織はピラミッド型に設定されています。
頂点に経営陣がいて、指示命令を下に飛ばします。
これは「強い世代」のマネジメントの姿です。

 

一方「逆さまのピラミッド」は、顧客を一番高く位置づけます。
その顧客との接触頻度が高いスタッフをその下位に位置づけて
中間管理職は、スタッフの「管理」から「支援」に回ります。

 

なぜなら、今日は環境の変化が激しすぎて、
経営上最も重要な「お客様が真に求めていること」が
支店長にも本部にも読めないからです。

 

それを最もよく知っているのは
お客様との接触頻度が高い現場の担当者です。
そんな担当者が自由に動ける、働きやすい環境を整える。
これが「逆さまのピラミッド」のマネジメントスタイルです。

 

「弱い世代の」彼らは、弱いからこそ、
自分が正しいとは思っていません。お客様の話をよく聴き、
何がベストかを担当者と一緒に考えます。

 

彼らは弱いからこそ、上司風を吹かせたりしません。
自分たちはチームだという意識を強く持ち、
部下を主役にし、自分はサポートに回ります。

 

彼らは弱いからこそ、自分一人でやろうとしません。
仲間の力をどんどん借りて、どんどん任せ、
どんどん手柄をとらせ、その手柄を一緒に喜びます。

 

彼らは弱いからこそ、強がったりしません。
良いと思ったこと、学んだことは、即行動に移します。
失敗したら素直に誤りを認め、改善点を探します。

 

こうした「弱い世代」ならではのマネジメントは、
会社全体の雰囲気を一変します。

 

「弱い世代」から権限委譲された現場の社員は、
その期待が嬉しくて、どんどん主体性を発揮します。

 

その結果、上記の地方金庫は、地銀との差別化に成功。
ここ数年過去最高業績を更新しています。
人が育ったのですから、そうなるのは当たり前なのです。

 

こうした変化が起きたのは、
「強い世代」の支店長たちが、「弱い世代」へのスイッチを
黙って見守ってくれたからです。
それを実現したのは、トップの力です。

 

当時、理事長以下常務や部長など
金庫の未来に危機意識を抱いた人は、
私の研修をいつも一番後ろでオブザーブしていました。

 

そして、一生懸命学ぶ「弱い世代」に、
常に「大丈夫。君はできる。一緒に県下一の
小さくてもすごい会社を目指そう!」と声を掛けていました。

 

この金融機関に限らず、「弱い世代」の育成に
注力しているクライアントは他にもあります。
いずれも体質転換を果たし、業績も大化けしています。

 

この変化に共通しているのは、
経営トップが研修に参加していることです。
トップの承認こそが「弱い世代」を強くする
一番の良薬だと知っているのです。

 

もし貴社が今、「弱い世代」をなんとか強くできないか…と
悩んでいるのなら、ぜひご相談ください。
「弱い世代」には、「弱い世代」に向いたマネジメントがあります。
是非それを一緒に学び、組織風土を変えていきましょう。