vol.453『社員の主体性を引き出す、たった2つの質問とは?』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.453

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『社員の主体性を引き出す、たった2つの質問とは?』

 

オミクロン株の世界的な波及で、
政府が水際対策を徹底しましたね。

 

国民の安全を第一に考えた意思決定ですが、
従来は経済優先か国民の健康優先かでブレて、
水際対策が遅い、甘いと批判されていました。
今回のこのスピード対応は、評価されているようです。

 

この意思決定を見ながら、
経営でもこのようなブレがよくあると思いました。
特に業績優先か、それともお客様の満足優先かは、
ブレやすいポイントです。

 

が、ここに一つ明確に答えを出すと、
後のマネジメントはとても楽になります
では、この難しい問題に
どのようにして答えを出せばいいのでしょうか?

 

トヨタ系列の自動車販売店で
CSナンバーワンを何年も続けていることで有名な
ネッツトヨタ南国という会社があります。

 

この会社の元社長で、現相談役の横田英毅さんは
優先順位のつけ方について、
たった二つの質問をするだけで十分だと言っています。

 

第1の質問は「あなたにとって最も大切なものは何か」です。
会社の中での優先順位を考える時は、
「ビジネスマンのあなたにとって」と置き換えて
いただくと良いでしょう。

 

すると、大きく二つの答えに分かれます。
一つは、お客様の満足です。
もう一つは、株主の満足です。
株主の満足とは、株価を上げ続けたり、高配当を出すことです。

 

次に第2の質問です。
「これはその大切なものを大切にするために、
あなたは何をしますか?」です。

 

すると、第1の質問に「お客様の満足です」と答えた人は、
「お客様の話をしっかり聴く」
「お客様の不満や悩みを受け止め、それに応える」
などと答えます。

 

一方、株主の満足ですと答えた人は、
「業績を上げる、利益を追求する、シェアNo.1になる、
そのためにライバル会社に勝つ、そのためにどれだけ売る、
どこまで生産性を上げる」などと答えます。

 

横田相談役は、この第2の答えが明確なら
後はそれをやればいいだけだと言います。
確かにその通りで、経営であれ、人生であれ
大切なものを大切にする行動を日々実践すれば、
納得感の高い、幸せな毎日になるはずです。

 

それほど第2の質問の答えは大切です。
そして当然ながら、それを継続することが望ましいです。
そのためには、やっていて「楽しい、面白い!」と
思えるものでないといけません。

 

人間、苦痛を伴うものは長続きしません。
その視点で考えた場合、
お客様の満足の追求と株主の満足の追求では
どちらの方が持続することができるでしょうか?

 

もし、あなたが上司から毎日のように
「業績を上げろ、利益を出せ、シェアアップだ、
そのためにライバル会社に勝て、そのためにどれだけ売れ、
生産性をもっと上げろ」と言われ続けたらどうでしょうか?

 

きっと苦痛を感じるでしょう。
なぜなら、それは自分のための私欲でしかなく、
誰かの役に立つという、公欲ではないからです。

 

例えば、私はトヨタのユーザーであり、トヨタ自動車のファンです。
でも、トヨタがいくら売上げて、いくら利益を出しているかには、
とんと関心がありません。

 

トヨタが他の自動車会社と競争して、
勝とうが負けようがそれも関心がありません。
トヨタの人がライバルの〇〇社に勝つか負けるか、
競い合っていてもそんなことはどうでもいいのです。

 

それよりも、私のニーズをちゃんと聞いてくれて
応えてくれるということが大切なのです。

 

今から15年ほど前、Sky株式会社の
「スカイシー・クライアントビュー」という
セキュリティソフトの市場参入をお手伝いしたことがあります。

 

現在テレビ等のコマーシャルで、
俳優の藤原竜也を使ってPRしているので、
ご存知の方が多いと思います。
この時すでに30社以上の先行企業があり、
それを逆転するのは決して容易ではない状況にありました。

 

このとき、社員の皆で作り上げたコンセプトは、
「かんたんさナンバーワンを」でした。
従来普及していたソフトはいずれもオペレーションが複雑で、
お客様が「難しい。時間がかかる」と嘆いていたのです。

 

そこで同社は、誰も使える優しい
インターフェースになるよう改良を重ねました。
そして、展示会で「この商品のオペレーションが
いかに簡単であるかを伝えよう!」と、
みんなで一致団結して取り組みました。

 

来場者に声をかけ、実際にデモ機に触ってもらい、
「なるほどこれは簡単だね!」「画期的だね!」と
理解してもらったのです。
その結果、多くのお客様に採用いただき、
現在のヒットに繋がる礎を築くことができました。

 

このフレーズは、「かんたんさナンバーワンを(確かめて)」であり、
「シェアナンバーワンを(奪い取れ)」ではありません。
今振り返ってもそこが良かったのだと思います。

 

もし「シェアナンバーワンを(奪い取れ)」言っていたら、
自分目線の私欲でしかないので、
「何が何でも売ってこい!」の指示になっていたかもしれないからです。

 

それが「かんたんさナンバーワンを(確かめて)」なので、
「お客様に使い方の良さを分かってもらおう!」になり、
社員の主体性を引き出したのです。

 

結果ばかりを追い求めて尻を叩くのではなく、
お客様の方を向き、お客様を大切にすること。
そして、社員にそのように活躍してもらうために
働きやすい環境つくることが長く繁栄する秘訣です。

 

皆さんの2つ質問への解答は何でしょうか?
ぜひ職場で議論していただき、
納得のいく答えを引き出して
ブレない経営を続けてくださいね。