vol.443『ワクチン接種に学ぶ組織風土改革の4STEP』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.443

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

『ワクチン接種に学ぶ組織風土改革の4STEP』

 

ワクチンの接種者が50%を超えましたね。
このままいくと10月から11月にかけて、
国民の希望者全員が2回目の接種を終えられるようです。
抗体の効果がいつまで…との心配はありますが
ゴールが見えたことで、とりあえず一安心ですね。

 

ほんの2ヶ月ぐらい前、思うようにワクチン摂取が進まず
「ワクチン外交の失敗だ」
「なぜ日本をこんなに遅れているのか」と
政府への非難ごうごうでした。

 

6月には4000もの団体が地域の市民のために
集団接種の仕組みを築き申請しました。
が、供給体制が追い付かないとの理由で白紙撤回になり、
残念に思った人も少なくないでしょう。

 

それが今やワクチン接種は、
大成功の取り組みであったかのように言われています。
接種率が4割を超えたぐらいから世論が変わりました。

 

実はこの世論が変わるというのは、
企業が風土改革を起こす上でとても大事なことです。

 

会社が風土改革を起こそうとすると、
最初は「こんな事やって何になるんだ」という
反対意見が多数出るものです。

 

その改革の起草者が、社長であろうと
現場のリーダーであろうと、地方の支店であろうと同じです。
多くの人たちは冷ややかな目で見るものです。

 

ところがある時点から、改革に対する見方が変わるのです。
「この新しいやり方って案外いいよね」と、
改革の効果を認める賛同者が徐々に増えていきます。
そして「そんなのやっても意味がない」という人が
一気に減っていくのです。

 

その分岐点は、私のコンサル経験から言えば全体の4割です。
4割が風土改革に前向きになったら、
組織内の空気は一気に変わります。
いわゆる「風向きが変わる」ことが起こるのです。

 

なぜ4割が分岐点なのか。
4割と言えば、約半数です。
隣に座る人は改革推進派である可能性が高いです。
そうすれば「改革するんだ」という機運を肌で感じます。
また、改革の良い効果が嫌でも目に留まります。
すると「意外にいいものだ」と実感できるようになるのです。

 

よって、会社が組織風土の改革を目指す場合は、
全体の4割の人財を、改革に対しどのように
前向きにさせるのか、周到なプラン作ります。

 

よく組織は2―6―2に分かれると言います。
トップ2の2割は、普段から前向きな行動をとっており
何もしなくても改革には賛成です。

 

彼らには、他の8割に気づいていない問題が見えるのです。
その問題を放置した先には、事故やクレームの発生、
社員の離職、失注など残念な姿が目に見えるのです。
よって機会さえ与えれば、自ら率先して改革に取り組みます。

 

問題は、真ん中の6割を2-2-2の上中下に分けた時の、
トップ下の2割です。ここの意識改革ができれば
全体の4割が改革に前向きになります。
ここを動かすことが組織全体のターニングポイントです。

 

大きい玉を転がす時に、最初だけグッと力がかかりますよね。
そして一旦転がし始めると、
後は少しの力でゴロゴロと転がっていきます。
まさにこのグッと力を入れて押すところ。
これがトップ下2割の意識改革なのです。

 

ゆえにトップ下2割を集めたプロジェクトを起ち上げます。
それは以下の4段階で実施します。

 

第1段階:メンバー選定
社長が期待する人財を指名して集めてもいいし、
手揚げ式で集めても良いです。
トップ2に仲間にしたい人を人選させるのも一手です。
年齢や階層より、一人ひとりの意識優先で募ります。

選ばれたメンバーには社長が面談で「あなたの力が必要だ」
「風土改革に力を貸して欲しい」と伝え、動機づけます。

 

第2段階:意見を採用する
次に、「〇〇プロジェクト」と題したミーティングを実施します。
彼らに会社の現状の問題を伝え
「どうしたらよいと思うか?」問いを投げ、考えてもらいます。

普段余り自分から考えたことのない人たちですが、
そこを上手くファシリテートして引き出していきます。
そして出てきた意見が良いものであればそれを褒め、採用します。

 

第3段階:計画を立て、役割を与える
いつまでに誰が何に取り組むのか、
アクションプランを立てます。
この後、メンバーは計画に従って現場で実践します。

このとき、「現場〇〇リーダー」など、役割・肩書を与えると
職場内での立場がはっきりして、やりやすくなります。
さらに人事考課と連動させ、この活動をすることが
評価につながることを約束します。

 

第4段階:フィードバックする
メンバーには定期的に集まってもらい、
進捗管理を行います。うまく行っている例と
進んでいない例を確かめ、褒めたり、
活動の改善点をフィードバックします。

自分の活動に前向きなフィードバックが得られると、
メンバーのやる気は高まります。
そして成果が出て、自分の周囲がその成果を歓迎してくれると、
トップ下2割はトップ2と同じ意識に変わります。

 

これを今回コロナワクチンの接種に置き変えると、
トップ2は医療従事者であり、重症化しやすい
高齢者や基礎疾患のある方々でした。

 

次にトップ下の2割ですが、これは大手企業の社員と
大学生に集団接種を施したのが
大きかったのではないかと思います。

 

ご存知のようにデルタ株は感染力が強く、
家庭内感染のリスクが非常に高いと言われています。
故に家庭内での影響力の強い親の摂取や、
家庭での主役である子供世代の摂取がもたらした安心感は
家庭の雰囲気を一変させました。

 

それが今大きな上にうねりとなって
日本中を安心させたのではないかと思います。

 

組織風土は誰にも盗むことのできない、
組織の最大の財産だと言われています。
一方で、問題があるまま放置すると、
企業を一気に衰退させる元凶にもなります。

 

あなたの会社の組織風土は大丈夫ですか?
問題があれば、ワクチン同様早めに手を打ちましょう。