vol.440 『東京五輪に学ぶ、やらない後悔よりやった後悔』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.440

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『東京五輪に学ぶ、やらない後悔よりやった後悔』

 

東京五輪が終わりましたね。
賛否両論あり、期間中の感染拡大もありましたが、
数多くの名勝負、感動のシーンがあり、
「開催して良かった」という意見が大勢ではないかと思います。

 

今回のオリンピック開催の決断に対し、
「やらない後悔より、やった後悔」という言葉を思い出します。

 

この言葉通り、後悔には2種類あります。
「あれをやっておけばよかった」という「やらない後悔」と、
やってみて思うようにいかず、「こんなことなら
やらなければよかった」と思う「やった後悔」です。

 

このうち、前者よりも後者の方がましだ、
というのが、上記の教えのです。
では、なぜ「やらない後悔」よりも、
「やった後悔」の方が良いのでしょうか?

 

なぜなら、「やった後悔」は、
その後の心がけ次第でその後悔を消すことができるからです。

 

「やった後悔」は必ずそこに反省材料があります。
上手くいかなかった原因を振り返り、
「そうか!こうすればよかったんだ!」との気づきを得、
その学びを次に活かせば、 次は同じ失敗はしません。
成功に向け、前進することができます。

 

すると、「あの時失敗しておいて良かった」と思えます。
こうなると、失敗は失敗でなくなります。
むしろ自分に大事なことに気付かせてくれた
貴重な経験であったと「感謝の気持ち」に変わってきます。
こうして、自分の中から後悔が消えるのです。

 

「やった後悔」は、大変貴重な学びの場です。
「過去と他人は変えられない」と言いますが、
「やった後悔」という過去は、その反省を次に活かすことで
その意味づけを変えることができるのです。

 

これに対し、「やらない後悔」は、
何ひとつ具体的なアクションを起こしていないので、
自分の行動を反省したくても、反省の仕様がありません。

 

経験が学びに変わらないので、何年経っても
「あぁ、あの時こうしておけば良かった…」という
妄想だけが残ります。
すると今日と同じ後悔を何十年後もしてしまいます。

 

今回、コロナ禍で五輪を強行開催したことで、
五輪関係者は多くの学びを得たと思います。
この学びは今後開催される五輪に活かされるでしょう。
これらは、やったからこそ得られた学びです。

 

もし中止にしていたら、永遠に
「あのとき東京でやっていたら…」と思い続けることになります。
「やらなくて正解」「いや、もしやっていたら…」の不毛な議論が
何十年経っても続いたことでしょう。

 

ところで、経営者にとって後悔は、
非常に恐ろしい感情です。
なぜなら、後悔することを恐れてしまうと決断が鈍り、
ビジネスチャンスを逸してしまう可能性があるからです。

 

では、経営者がタイミングよく、
適切な意思決定するために、
後悔を恐れる気持ちとどう向き合うのがいいのでしょうか?
ここでは2つお伝えします。

 

第一は、「やった後悔」であれば、
「そこから必ず学びがある」と信じ、肚をくくることです。

 

「起きていることはすべて正しい」という言葉がありますが、
これは、仮に失敗したとしても、
そこから何かを学ぶことができれば、
それは正しいことだという教えです。

 

よって意思決定するときは、
「うまくいくに越したことはないが、
仮にうまくいかなかったとしても、
そこからは貴重な学びを得ることができる。
だからやる」と考えましょう。

 

第二は、そもそも後悔は「他にも選択肢があったが、
それを選ばずに『しまった!』と悔いる感情」です。
この「他にも選択肢がある」という発想をやめます。
意思決定をするときは、「こうなることは必然だ。
これは神様のお導きなのだ」と思うようにするのです。

 

今回の五輪でも、「よりによってなぜ日本で開催する
このタイミングに、百年に一度しかないパンデミックと
重なっちゃうのだろう?」と考えた人は、
政府にも五輪関係者にも市民にも大勢いたと思います。

 

が、それもまた必然であったと考えるのです。
コロナ禍の五輪は誰が考えても大変難しいものでした。
でも、私たち日本人がその引き受け役として、
世界中から選ばれたと考えるのです。

 

なぜ日本人が選ばれたのか。
ここに納得できる意味づけができれば、
他のシナリオがあるという前提を消すことができます。

 

経営者が、決断力、行動力、勇気を高める上で、
上記のような「後悔という感情に対する対処法」を
身に着けることはとても大切なことです。

 

私はコンサルタントになって32年、
多くの経営者の悩みを聴いてきました。
信じられないトラブルに見舞われることもよくあります。
そんなとき、私が最もよく使う言葉の一つが以下の言葉です。

 

「今回のトラブルは、社長として成長するために、
『ここから何を学び取れ』とメッセージだと思いますか?」

 

そうすると、後悔特有の「くよくよした感情」を
前向きに変えることができます。
起きてしまった事実は変えられませんが、
後悔の感情は自分の意味づけ次第で変えられるのです。

 

五輪に出場した選手の皆さん、大会運営関係者、
ボランティアの皆さん、お疲れ様でした。
そして、多くの感動と、次をもっと良くするための
気づきと学びをありがとうございました。