vol.402『リピートされる会社・されない会社』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.402

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『リピートされる会社・されない会社』

 

惜しまれながら「としまえん」が閉園しましたね。
その最後の日々は『クローズアップ現代』でも特集されました。
創業94年。100年まであとちょっとでした。
残念に思っている人も少なくないでしょう。

 

閉園になった原因は様々でしょうが、
その一つがディズニーランドに
お客様を取られてしまったことがあると言われています。

 

では「としまえん」とディズニーランドの違いは何でしょうか?
これはもうはっきりしています。
ソフトです。
ストーリーがあるかないかです。

 

「としまえん」は大きなプールとスケートリンク、
そしてフライングパイレーツが売りでした。
ディズニーランドのように、
ユニークなキャラクター達がいる訳ではなく、
そのキャラクターが創る空想の世界に
引き込まれるわけではありません。

 

ディズニーランドの「カリブの海賊」に
私はこれまで、何度も乗りました。
どこにどんなハードがあるかは、十分に知っています。
それでもまた乗ってしまうのは、
子供が同じ絵本を何度も繰り返し見るように、
あの海賊の物語には、毎回楽しめる要素があるからです。

 

好きな映画、小説、コンサート等を何度も楽しめるように、
人は、魅力的なソフトは繰り返し楽しむことができるのです。

 

「としまえん」の跡地には、
ハリーポッターのテーマパークができるようです。
こちらはソフトを提供する施設です。
どんな世界に巻き込まれるのか、今から楽しみですね。

 

同じことは一般のビジネスでも言えます。
企業は自社商品のハードの良さばかりをアピールします。
他社に比べてここが優れている、スピードが速い、
価格がお値打ち、フォローがしっかりしているなどです。

 

しかしそのような点を強調したところで、
お客様から見たら他社比で
それほど大きな違いがあるわけではありません。

 

それよりむしろ、なぜ自社がこの商品を
世に出そう考えたのか。
そこに対する作り手の想いを伝えた方が
お客様を惹きつけます。

 

例えば、愛知県江南市に石井不動産という
従業員35名の小さな不動産会社があります。
この不動産会社は、
現在『満室化プロジェクト』を推進しています。

 

『満室化プロジェクト』とは、
築30年以上の古いアパートの空室を
独自の技術でリノベーションして
満室にしてしまう取り組みです。

 

そのリノベーション技術は、
よくディズニーランドのアトラクションの内装に用いられる
古いものをカッコ良く見せるモルタルコンクリートと
無垢材を使用し、かつエンジングを施す技術です。

 

百聞は一見に如かず。
同社が展開しているリノベーションの実例を
下記サイトの「スタイル」「施工事例」でご覧ください。
https://manshitsuka-project.com/

 

すると、あっという間にこの部屋の借り手がつくのです。
一部屋の改修費用はおよそ150~300万円です。
が、周囲の家賃は7万円だとしたら
8万円の値段をつけても借り手が付くといいます。

 

すると、空室で収入0円だった部屋が、
年間100万円近いの収入をもたらします。
3年そこそこでリノベーション費用の元が取れ、
ここから先はずっと収益につながるのです。

 

こうした効果もあって、この満室化プロジェクトは
オーナーの間で大人気なのです。
が、もうひとつ石井不動産がアパートオーナーの
ハートを掴んでいる理由があります。

 

一般に、不動産会社や建設会社が行う
アパートオーナー向けのセミナーといえば、
そのほとんどが「相続税対策に資産活用しませんか?」です。
相続対策=死ぬ前の準備です。
つまり『死に支度の提案』です。

 

また、老朽化した建物に対しては」、
「カギをつけてセキュリティを強化しましょう」
「クロスを張り替えましょう」など
多少の付加価値向上の提案をするだけで、
満室には程遠いものばかり。

 

新築に建て直したところで、
30~40年すればまたすぐ古くなってしまいます。

 

石井会長はそこに違和感を覚えたのです。
そこで着想したのが「満室化プロジェクト」です。

 

このサービスのコンセプトは、
「今、ある古いものをどんどん使って稼ぎましょう」。
「死に支度を辞めて、生きる力を付けましょう」。
オーナーたちはこの想いに共感するのです。

 

想いと技術のマッチしたプロジェクトだからこそ、
同社からエリアの離れた都市部のオーナーからも
是非自分の物件のリノベーションをお願いしたいとの
話が舞い込んできます。

 

収益性を高める上で、技術的な差別化は欠かせませんが
人は、自分が好きな会社からしかモノを買いません。
その好きか嫌いかを判断する重要な基準は
会社の想いであり、姿勢です。
つまり、ストーリーです。

 

あなたの会社の商品にも、
出会いや開発にまつわるとホットストーリーがあるはずです。
営業マンや広報担当者は、それを社内で確認してください。
そして、その想いをお客様に伝えましょう。
想いを共有することが、一番の差別化なのです。