vol.383『ウィズコロナ時代にリーダーシップはどう変わるか?』

「アフターコロナ」という言葉があります。
最近はこれに「ウィズコロナ」という言葉も
聞かれるようになりました。

アフターコロナは文字通り、
コロナが収束した後という意味です。
が、どうもコロナは収束しそうにないぞ、
かなり長引きそうだ、との推測もあり、
コロナの後というよりも、コロナと共に生きる。
それをウィズコロナと言っています。

実はこの一週間で、弊社にオンライン研修の
企画をお願いしたい、という依頼が数多く寄せられました。
こうした依頼も、コロナを一過性のものではなく、
今後暫く続くウィズコロナを前提にしたものです。

日本全国でテレワーク化が始まって、
間もなく一ヶ月になろうとしています。
このままテレワークが定着すると、
この国のビジネスマンの働き方は随分変わると思います。

テレワークは、一人ひとりが別々の場所で働きます。
そのため会社は仕事の役割分担をハッキリさせる。
それに従って、各個人は自分の役割を認識する。
そして、自分の仕事を自分の裁量でしっかりこなす。

いつ取り組んだかとか、できるまでに何時間かかったかは関係なく、
設定された納期までに、しっかりとそれを仕上げておく。
テレワークは、そうした仕事のスタイルです。
全社員が、プロのアウトソーサーになるイメージです。

よく「会社は個人の集合体」である。
「個人が強くなれば会社は強くなる」と言われます。
この考え方が、テレワーク化によってますます強くなると思います。

これまで、会社は課や係など
「チーム単位で成果を出して」と現場に要求してきました。

そのチームには仕事ができる人もできない人もいます。
一部のできる方に仕事が偏って、その人は大変忙しい。
それ以外の人は結構サボっている。
でもチームとして成果は出ている。
そんないびつな構造がよく見受けられました。

ところがテレワークでは、
サボっている人は「できない」と丸わかりです。

そのため、玉石混合の組織体は姿を消していくでしょう。
新人を丁寧にサポートする OJT も、
テレワークではなかなかできないと思います。

新人も入社する前に、しっかりと自分を磨き、
スキルを身につけ、そのスキルを発揮できる場所を
最初から求めて入社する。そんな構造に変わっていくでしょう。

現実にリアルな職場環境においても、
5Sが大変できている会社は、
社員一人ひとりがどのエリアの5Sを担当しているのかが明確です。

同じフロアの5Sを複数で担当している場合でも、
フロアのタイルに番号を振って、何番から何番まではAさん、
何番から何番まではBさんの担当というように役割分担しています。
そして各担当者が、自分の持ち場をピカピカに維持しています。

複数で同じ場所を担当すると、
どうしても一生懸命やる人と、サボるが出てきてしまいます。
ところがタイルごとに細分化して個人に担当を割り振れば、
誰もが全員に責任感を持って行動するのです。

ここから一人一人に自主性が生まれ、
お互いを認め合う風土が生まれます。
全員が同じことするために、一体感も強くなります。
5Sができている会社が、社風も良く、好業績なのは
5Sを通して、個人が強くなる仕組みができているからです。

テレワーク化は、まさにこの構造と同じです。
一人ひとりの役割分担が明確になり、
期待された品質で、納期までしっかり仕上げる。
社員一人ひとりの責任感が、今まで以上に問われるのです。

そのため、リーダーの役割も変わってきます。
これまで、多くの会社にはプレイングマネージャがいました。
これは、従来と同じ仕事を今期も繰り返す、
それが前提になっている組織特有の現象です。

同じことを繰り返すのだから、
仕事に慣れていない仲間をフォローできる人がマネージャになる。
そして、数年かけてみんなが徐々にできる人になっていく。
「一戦ごとにチームが強くなっていく」という構造でした。

しかし、分散した個人が割り振られた仕事に対して
しっかりと責任を果たすことが求められるテレワークでは
リーダーの仕事は、仕事の配分であり、
その組み合わせを考え、個々人のアウトプットの品質を
チェックすることになります。

全体を俯瞰して、変化を読みながら、
状況に応じて最適な人を選択し組み合わせていく姿は、
さながらオーケストラの指揮者のようなものです。

オーケストラの指揮者に必要なのは、
プロの奏者が弾きたくなるような譜面を持っていることです。
「この曲を演奏したいんだ。ついてはあなたにこのパートを任せたい」
「このタイミングでこんな音を出してもらいたい」とお願いする。
そうするとプロの奏者は、「はい喜んで!」と言って参加するのです

経営にこれを置き換えれば、弾きたくなるような譜面は、
経営ビジョンになるでしょう。
「こんなビジョンを実現したいのであなたの力を貸して欲しい」
「このパートで専門性を発揮してほしい」
こういったことを言って専門性の高い人財を誘い、
環境変化に応じてそれを組み合わせていく。

これは従来の仕事の繰り返しで成果が出ることを前提としている
プレイングマネージャにはできないことです。
マネージャがプレイしながら
他人をフォローするなんてできないからです。

テレワークは今後、わが国からプレイングマネージャを
消滅させてしまうかもしれません。

そうなると、テレワークがわかっていない経営者や、
AI や IoT でどこまで生産性の向上が図れるかに対して
考えが及ばない経営者は、自ずと退陣せざるを得ないでしょう。

つまり、テレワークの時代には若い経営者が
どんどん出てこないといけないということです。
そこで、後継者と期待されている皆さんは、
近い将来自分が社長になるための準備を進めてほしいと思います。

少なくとも、あなたの会社のテレワーク化は、
先代ではなく自分が指揮をとって進めるのだという役割を
自ら買って出てください。

そして、今後はわが社の生産性を上げていくには、
何に集中したらいいか取捨選択しましょう。
不要な会議は、この際全てご破産にして見直しましょう。
勤務形態も、情報共有の仕方も、評価基準も見直しましょう。
暗黙知を形式知化し、ICTの更なる活用を検討しましょう。
海外取引のある会社は拠点展開のやり方も見直しましょう。

これらも含めて

社員が魅力的と感じる譜面
=ウィズコロナの時代のわが社のビジョンを描きましょう。

今すぐ社長交代を迫らなくても、
こうしたイノベーションを自分が担うのだという意識で
情報収集と課題発見を進めてみてください。
そして、ウィズコロナの時代に備えていきましょう。