vol.378『自粛モードの活かし方~内省して自分を変えよう』

 

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.378

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『自粛モードの活かし方~内省して自分を変えよう』

 

コロナウイルスの影響で
さまざまな経済活動に影響出ていますね。
この自粛ムードは、9年前の東日本大震災の時以来か、
あるいはそれ以上だと思います。

 

あの時は、大変な思いをしている被災地の皆さんに
「なんとか支援できることはないか」
日本中、世界中がそれを必死で考えていました。

 

今回は、世界中が被災地です。
誰もが自分の家族や職場の仲間を守るために、
何かできることはないか必死で考えています。

 

卒業式等で使われるはずだった花を
無料で配っている花屋さんがあります。
子供たちのために学習教材を
無料で閲覧できるようにしているサイトもあります。
ローソンは毎週おにぎり30万個を無償で提供しています。

 

ローソンの報道を聞いても、
後の大手コンビニ2社は動きがありません。
それぞれの会社に事情はあると思いますが、
目指しているところが違うのでしょう。

 

利益のために経営をやっているのか、
誰かの笑顔の為に経営をやっているのか。
トップが「何のために経営しているのか」の想いの違いが、
そのまま実行力の違いになって現れているのです。

 

自粛ムードは、「自分はいったい何を目指しているのか」とか
「自分はいったい誰を大切にしていて、
そのために何ができるのかとか」を考えさせる時間を作ります。
それは歴史が証明をしています。

 

例えば、イタリアのルネッサンスは「復興」と訳されます。
ルネッサンスは15世紀後半頃ですが、
その前の14世紀後半~15世紀前半に起きたのが
ベストの大流行です。

 

ペストは当時の世界人口を4.5億人から3.5億人に
減少させるほどの猛威を振るいました。
そのペストが流行時に起きたのが「魔女狩り」です。
「悪の根源を絶つ」という犯人探しの習慣です。

 

今回も、政府の対策に批判的な報道がなされています。
医療機関の検査態勢不足やマスクの転売、
買占めをする人への批判もやみません。

 

こうした悪魔叩きの現象の後に起こるのが、内省です。
誰かを叩くことを考えるのではなくて、
「自分にできること」はないかを考える行動です。

 

「自分にできること」を探すには、どうしても
「自分は何のため、誰のため、誰と共に生きているのか」を
深く考えないといけません。

 

では、どうやって内省を行えばいいのでしょうか?

 

以下は、私のクライアントの製造業の社長が教えてくれた
内省のやり方です。大変有用なので、
皆さんも是非試してみてください。
使うのは大学ノートとペンだけです。

 

まず、左側のページに人生を振り返って、
「嬉しかったこと」をとにかくたくさん書き出します。
次に、右側のページに「嫌だったこと」を、
とにかくたくさん書き出します。

 

書き終えたら、その2つを見比べます。
すると、自分はどんな時に嬉しいと感じ、
どんな時に嫌だと思ったかがはっきりしてきます。

 

そして「ああ、自分はこれが一番嫌なことなんだ」と
気づいたら、とにかくそれと同じ事をするのはやめる。
逆に、自分が「これが一番嬉しいんだ」と思ったことに集中する。

 

そうやってやるべきことを選択すれば
人生はどんな時だって楽しくなります。
世の中が自粛ムードであろうが、株価が暴落しようが、
自分で自分を楽しくすることができるというものです。

 

社長は続けて、自分がこのワークをやって
気づいたことを話してくれました。

 

自分が嬉しいときは、
「お客様から『ありがとう』と言われた時」でした。

 

緊急納品や多品種少量生産など、
お客様からのお困りごとに、
社員みんなで必死になって何とかして助けた時に
「ありがとう、ありがとう」と言われる。
それが何より嬉しいということです。

 

一方、一番嫌なのは、
「社員がお客様に叱られているシーンを見ること」でした。
1万個作っても、たった1個不良品があっただけで、
お客様の若い社員が飛んできて
自分の会社のベテラン社員たちを怒鳴りつけます。

 

そして、不良だった1個厳しく咎めながら、
9999個については全く褒めてくれない。
その光景を見るのが自分には耐えられなかったといいます。

 

この内省の結果、
社長は大手メーカーとの取引縮小することを決めました。
方法は簡単でした。値上げを要求したのです。

 

すると、いくつかの大手メーカーは去って行きました。
残ったのは、多品種少量生産や短納期など
難しい要求に応えたときに『ありがとう』と言ってくれた会社ばかり。
以来社長は、要求はハードだが感謝も忘れない
お客様中心の仕事へと変えていきました。

 

この方針に転換して3年、
現在は当時に比べて総生産量は減少したものの、
売上、利益とも当時を超える成果を出しています。

 

この状況を社長は、
「ありがとう」と言ってもらえることに
集中した結果だと言っています。

 

「ありがとうに集中する」ことが
高収益体質へと事業構造転換することに繋がったのです。
まさに、内省による気づきが会社を変えたのです。

 

自粛ムードがストレスになると、
そのパワーは誰かへの批判、他責へと向かいます。

 

そうではなくてそれを自分に向けましょう。
ルネッサンスが「復興」と訳されるのは、
内省による人間性の回復を意味するからです。

 

チャーター便での帰国者を受け入れたホテル三日月、
子供たちのために花を配っている花屋、
ローソンのような弁当屋に代表される行動は
自分を知り、「自分にできることは何か」を考えた
2020年代に起こるルネッサンスのお手本だと思います。

 

是非、上記の内省ワーク、やってみてください。
そして、人生を楽しくする行動の選択へと
繋げていきましょう。