vol.375『働き方改革の改悪化を防ごう』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.375

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『働き方改革の改悪化を防ごう』

 

この4月から、働き方改革法が
中小企業にも適用、義務化されますね。

 

働き方改革法案が通過した時、
「これは働き方改革ではなくて働き方改悪だ」と
多くの経営者が嘆いていました。

 

私も、最近クライアント企業を訪問していて、
「確かにこれは改悪だ」と感じることが多々あります。

 

残業時間が減り、休日が増えて、
社員は公私充実した日々を過ごすことができる。
それはとてもいいことですが、
会社にとって最も大事な
「将来の稼ぐ力」が失われているからです。

 

「時間のマトリックス」をご存じでしょうか
名著『七つの習慣』の中に出てくる時間の区分です。

 

このマトリックスでは仕事を以下の4つに分けます
Ⅰ.緊急で重要性が高い仕事
Ⅱ.重要だけど緊急性が低い仕事
Ⅲ.緊急性は高いが重要ではない仕事
Ⅳ.緊急でも重要でもない仕事

 

上記Ⅰ~Ⅳには、主に以下の仕事が入ります
Ⅰ.締め切りのある仕事、重要な会議、クレーム対応
Ⅱ.人間関係づくり、準備や計画、人財育成
Ⅲ.無駄と思える会議、資料作成、接待・付き合い
Ⅳ.意味が感じられない慣習、単なる暇つぶし

 

さて、働き方改革が「改悪だ」と感じるのは、
働く時間を短縮することによって、
「将来の稼ぐ力」に直結するⅡの時間が
失われていると感じるからです。

 

例えば営業部門の仕事であれば、
今日の注文を処理する、あるいは次の注文を取るために
商いの多い客先を訪問する、仕入先と折衝するなど
当然、日々の中でⅠの仕事が最優先されます。

 

その中で、来年~再来年にかけて
「もっと多くの人を喜ばせたい」
「もっとこの商品を多くの人に使って欲しい」
考えた営業マンは、今は、商いは少ないけれど、
これから伸びそうな見込み客を訪ねたり、
様々な展示会に足を運んでビジネスチャンスを探ったりします。

 

さらにチームで営業しているリーダーであれば、
後輩と同行営業をしたり、帰社後に面談して一日を振り返り、
「次はこうしてみよう」とOJT 指導したりします。

 

こうした活動は、目先の利益には直結しません。
が、1年も2年も後の稼ぎに繋がるものです。
いわば未来への先行投資的な活動であり、
将来稼ぐための種蒔きです。
が、これが働く時間短縮によって削られてしまっているのです。

 

このような場合、「これは仕方ない」と諦めるのか、
それとも「ここは削れない」と覚悟を決めて、
取り組むべきか、企業は今、選択に迫られています。

 

この選択に影響を与えているのが、企業が目指すビジョンです。
ビジョンが数字のみ会社は、
目先の数字を作るために安値でもなんでも受注量を増やして、
先行投資的な活動を犠牲にします。

 

一方、数年先のビジョンが明確な会社は、
そのビジョンの実現のためには、
今、種蒔きすることが重要だと分かっています。
よって、Ⅱの時間を削れないと腹をくくるのです。

 

腹を作った会社は、Ⅱの時間を確保するために、
時間の使い方を見直します。
特にⅢの仕事を減らせないかを検討をします。

 

無駄だと思われる会議、打ち合わせ、
報告のための資料作成、移動時間、
何のためにやっているのか目的を見失った
社内行事・慣習、取引先等のお付き合い、
数合わせ、予算消化のための活動など
理念に照らしてなくてもよいもの、
ICTを駆使して減らせるものはないか検討してみましょう。

 

しばらく、わが国は不況が続きそうな気配です。
この不況をいち早く脱出できるかどうか。
それはⅡの時間を今、
確保できるかどうかにかかっています。

 

あなたの会社ではⅡの時間が
時短化の犠牲になっていることはありませんか?
是非、時間の使い方を振り返ってみてください。