vol.365『もし、一番行きたくない部門に配属されたら』



2019/11/22

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」vol.365

 by V字経営研究所 代表 酒井英之

『もし、一番行きたくない部門に配属されたら』

 

あなたの会社には一番行きたくない
(配属されたくない)セクションはありますか?

 

人事異動が少ない中小企業では
あまり聞きませんが、
一方、部門数が多く異動の多い大企業では
そのような「魔の部門」が存在します。

 

このような部門に配属された人の多くは
「なんで私がここなんだ…」とネガティブになります。
そして、一日でも早くここから抜け出したいと考えます。

 

ところが中には、そんなセクションだからこそ、
「だからこそ、この部門を良くしよう」と
開き直って熱くなる人もいます。

 

そしてその情熱は、いつか世の中の
常識をひっくり返すこともできるのです。

 

例えば、私は95年からある電力会社の
電気温水器を販売する部門の
コンサルティングをやっていました。

 

このころ電気温水器は、ガス給湯器と市場を争ってました。
が、市場シェアは10%以下で、
ガス給湯器に圧倒されていました。

 

原子力発電所で作られた深夜の余剰電力をなんとか消費させようと、
国の施策で生まれた電気温水器事業です。
よって、普通なら市場撤退してもおかしくない業績なのに
国からの補助金でかろうじて成り立っていました。

 

この電気温水器の販売部門こそ、
電力会社の中では最も行きたくない魔の部門でした。
ちなみに、花型は原子力部門です。

 

しかしながら、97年に高性能な
IH クッキングヒーターが世に出てからは
「IH クッキングヒーター+電気温水器」で
電気の利用促進を推す取り組みが始まりました。

 

これを「オール電化」と呼び、
工務店にPRして、新築物件に採用してもらう
プロジェクトがスタートしました。
以来、私は電気温水器の販売部門の皆さんと
「オール電化をどこまで拡販できるか」に取り組みました。

 

最初の数年はオール電化を扱ってくれる
工務店はほとんどありませんでした。
しかしその数は年を追って徐々に増え始めます。

 

そして、オール電化という言葉が知られ始めた
2003年に大きな転機が訪れます、
電気温水器がエコキュートと呼ばれる設備に進化したのです。
この設備はイニシャルコストがグッと安く、
なんと施工から3年以内で元が取れるようになりました。

 

そこからは工務店さんがバンバン売ってくれました。
施主から工務店に「うちはオール電化にしてね」と
逆指名されるようになりました。

 

そしてついに新築市場で
ガスとのシェアを逆転してしまったのです。

 

そうなるとオール電化は、
電力会社の花形部門に変わりました。

 

電気温水器の販売部門が単独で努力したわけではなく、
IH クッキングヒーターやエコキュートなど、
設備機器メーカーの協力を得ながら、
複合的な販売をすることで、
電気温水器部門は「深夜の余剰電力を消費する」という
本来のミッションを果たしたのです。

 

そして、 いつしか社内の他のセクションの人から
「お前らは良いなあ」と言われるような
セクションへと変貌したのです。

 

このように、魔の部門に配属されることは、
見方を変えれば、逆襲のチャンスなのです。

 

社内の皆が行きたくないのは、
望むような成果が出てないからです。
それは、今のやり方に何かまずい点があって、
変えなければいけない状態の裏返しです。

 

これを「嫌だ、嫌だ」と受け止めるのか、
むしろ「変えなければいけないのだから
思い切って変えてみよう」
「変えたらきっと面白いだろうな、
みんなビックリするだろうな」と考え、
誰もやったことがないことを企画し、実践する。

 

そして最後には「このセクションへの評価を変える」どころか
世の中全体を変えることができるチャンスなのです。

 

中小企業の経営者でも、
世間の所属する業界へのイメージが悪く、
「なんとかこの業界のイメージを変えたい」と
粉骨砕身努力している人が大勢います。

 

その根底にあるのは
「がんばっている社員たちに誇りを持たせたい」という
社長としての思いやりです。
そして、私はそんな意地のある社長が大好きです。

 

「魔の部門」と呼ばれる部署があっても、
それは一時的なこと。
そこに配属されたら
「これは何のチャンスだろう?」と考えて、
開き直りましょう。

 

そして、社内どころか、
世の中の常識を変えてしまいましょう!