vol.504『新卒に選ばれ続ける会社の想いと工夫』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.504

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『新卒に選ばれ続ける会社の想いと工夫』

 

新年度になりましたね。
あなたの会社では新人を迎えることはできましたか?

 

近年は若者の人口の減少もあり、
中小企業の人材採用はますます難しくなってきています。

 

今のわが国の45~54歳人口は1,971万人。
対して10~19歳は1,106万人にしかいません。
比率にして56.1%。約半分しかいないのです。
これでは従来と同じ募集の仕方で採用するのは容易ではありません。

 

そんな中、私のクライアントの岐阜県の食品メーカーは
今年新卒を大卒2名、高卒9名の新人を迎えました。
食品は女性にも人気のある職種ですが、
今時社員数100人規模の会社で新卒を
11名も採用できることはすごいパワーです。

 

しかもそれは、今年だけじゃなく
毎年のように10人規模で採用できていて
なおかつ離職率がとても低いのです。

 

同社は働き方改革が導入される前までは
離職率の高い会社でした。
過去5年間で採用した20人中、
10人が辞める状態が続いていました。

 

「この状態を何とかしたい」と私に相談がありました。
そこでお手本にしたのが、業種が似ている
静岡県掛川市に本社のある「たこまん」という会社です。

 

「たこまん」は洋菓子のメーカー兼小売チェーン店です。
同社はカンブリア宮殿に
「地域密着の凄い会社」として登場するほど、
地元から愛されている会社です。
https://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/2016/0211/

 

この会社を見学させて頂いた時に、平松社長に
「採用は大変じゃないですか?」と質問したことがあります。
静岡はメーカーも多く、
特に新卒の高校生は取り合いだろうと思ったのです。

 

ところが 社長から帰ってきた答えは以外にも
「何の苦労もありません」。
理由は、親御さんの推薦でした。

 

小売チェーン店ということもあり、
地元ではよく知られた会社です。
しかも店員さんの接客が笑顔で丁寧で素晴らしいのです。
「買ったお客様が見えなくなるまでお見送りする」を
徹底してやっています。

 

よって地元の人たちは「たこまん」に対して
良いイメージを持っています。
そのため子供が「たこまん」を就職先として検討としていると、
親が「あそこはいいんじゃないか。
あそこに行くと礼儀正しい人間になる。
お前もそこでしっかり学んで働きなさい」と言うのです。
そうした親の後押しもあって、採用に苦労しないのです。

 

そこで、私のクライアントでも、親から
「いい会社だから、ここがいいんじゃないかな」と
言われるようことを目指しました。

 

まずは認証取得です。
いい会社かどうかは外から見て分かりません。
よっていい会社だというエビデンスを取る必要があります。

 

同社は「岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進企業に登録しました。
また市から「女性が働きやすい職場」としての認定を受けました。
この認定には階級があるのですが、
最上級の「AAAランク」の認定です。

 

また特別支援学校をサポートする
「働きたい!応援団 岐阜サポーター企業」にも登録をしました。

 

そして岐阜県労働局の「新はつらつ職場づくり宣言事業所」にも
登録しました。

 

この宣言は以下の5つを遵守すると伝えています。
1.サービス残業を発生させない
2.年次有給休暇の取得しやすい職場づくり
3.5Sや改善活動で やりがいのある職場を作る
4.若者就労支援のためインターンシップを実施
5.各種ハラスメントの根絶に努める

 

登録証には社長名と共に、社員代表の名前もあります。
労使が協力して職場づくりをしようという姿勢です。
こうした強い想いが共感を呼ぶのです。

 

次に、入社式の前後で新入生の
「関係欲求」を満たすことを実施しました。

 

関係欲求とは、「私は周囲の人に歓迎されている」
「仲間として認められている」という承認欲求や、
「私は周囲の人と上手くやっていきたい」と考える欲求です。
新人はとにかく「ここで上手くやっているか」不安を感じています。
が、上記のことが実感できると穏やかな気持ちになれるのです。

 

そこで、内定者が学校を卒業する時に会社から花束を贈ります。
共に人生の門出を喜ぶのです。
そして、入社式の時には、あらかじめ両親に書いていただいた
お手紙を読み上げます。

 

この手紙はサプライズです。
社会人になる子供に対するメッセージを
それまで育ててくれた両親から受け取った子供は、
この会社で頑張ろうという気になります。

 

入社式とは、それまで子供に対して責任を持っていたのが、
親から就職先の会社に変わる儀式でもあります。
その転換点であることを、こうした演出で伝えるのです。

 

さらに入社後は基本をしっかりマスターしていただくため、
OJT教育を行います。
従来、定着率が悪かった時は、このOJTが杜撰でした。

 

新人に何をどう教えるかは、現場の先輩に全て任されていました。
そのため、先輩によっては丁寧に教えることができず、
新人が放たらかしにされるなど雑なことが起きていました。
これでは辞めてしまうのも無理はありません。

 

そこでOJT計画書作り、いつまでに何をマスターしてもらうか、
本人はもちろん指導する先輩にも明確にしました。
そして、「成長の見える化シート」を作り、
自分が徐々に仕事ができるようになっていると
自覚できる環境を整えました。

 

そのことで新入生は、誰もが同じスキルを
短期間で身につけることができるようになりました。
人は誰しもできなかったことができるようになり、
人の役に立ちたいという「成長欲求」を持っています。
OJT計画書で、それを満たすことができたのです。

 

誰しもが持っている「関係欲求」と「成長欲求」を満たす。
そのための改革が実って、採用強化に繋がっているのです。

 

また、私の別のクライアントでは、
休暇や賃金などの「生存欲求」を満たすために
様々な工夫をしています。
その一つに、奨学金の支給制度があります。

 

同社の社員が30歳になるまでの間、毎年年度末に、
社員が払っている奨学金の返済分を
会社が支給するという制度です。

 

なぜそのような制度を設けたのか、社長が自身ブログで
丁寧に語っていますので是非お読みください。
採用に悩んでいる中小企業経営者にはきっと参考になるでしょう。
https://www.k-matsubara.co.jp/blog/boss/post-528/

 

人が採れなくて当たり前の時代です。
あなたの会社では「関係欲求」「成長欲求」そして
「生存欲求」の3大欲求を満たしていますか?
新人や親御さんの身になって考えて、実践していきましょう。