vol.499「生産性の高い組織をつくる『仕事の任せ方』」

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.499

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「生産性の高い組織をつくる『仕事の任せ方』」

 

「様々な立場の従業員や幅広い年齢層の方への
効果的なモチベーションUP の方法を教えてください」

 

これは私が管理者研修を行う時に
最も多くいただく質問の一つです。

 

このとき私は、質問者に逆質問をします。

 

「では、あなたは上司や仲間からどのように言われると
『この組織には自分が重要なのだ』と、重要感を感じますか?」

 

すると、誰もが同じことを答えます。
「この仕事を頼めるのはあなただけだ」
「是非、教えてください」
「相談にのってもらえませんか?」などです。

 

そうです。
人は「誰でもないあなただから頼むのだ」と依頼されたり、
「あなたに教えてもらいたい」
「あなたしか相談できる人がいない」などと
あなた限定で教えを請われたり、相談を持ち掛けられたりすると、
自分の重要感を感じるのです。

 

そこで以下のように、上司からに部下に相談します。

 

「この件、君ならどうする?君の意見を聴かせてくれないか?」
「ごめん、この件は君の方が詳しいだろう。
 だから一緒に考えてくれないか?」
「頼む。困っているんだ。君の力を貸してくれないか?」

 

きっとこのように頼まれた部下は
モチベーションを上げることでしょう。

 

よって部下のモチベーションを上げる方法は
以下の6STEPになります。
①上司が部下に相談する
②部下の意見を採用する
③部下を信じて任せる
④進捗を確認し必要なフォローを行う
⑤成果を評価し感謝する
⑥報酬としてワンランク上の仕事を与える

 

この「6つの任せ方」は、私が駆け出しの
ブラザー工業時代の上司に教えてもらいました。

 

私が、東京営業所に勤務していた時です。
上司の所長は、営業所の一番奥に座っています。
私は最若手なので入り口のすぐそばに座っています。

 

そして、私に頼みたいことがあると、
一番奥の席から大声で私を呼ぶのです
「お~い酒井~、オレ、わっから~ん!」

 

突然大声で呼ばれ、嫌な予感が走ります。
が、行くしかありません。
私は「所長がわからないことが、
私にわかるわけないじゃないですか…」
とブツブツ言いながら、所長の席へ行きます。

 

すると所長は、本社から来たFAXを私に見せ、
次のように尋ねます。
「本社がこんなこと言っとるんだ。お前ならどうする?」

 

私はそのFAXを見ます。
そこには本社から営業所への要求が書かれています。
私は「面倒だな…」と感じつつ、
「これだったら、〇〇したらいいんじゃないですか」と
自分なりの意見を言います。

 

すると所長は私の顔をジロリと見て、次のように言います。
「なるほど…やっぱ酒井、おまえ頭いいな。
そんならお前、やってくれ!」

 

一瞬私は「えっ?これ、私がやるんですか?」と怯みます。
が、その言葉をグッと飲み込みます。

 

なぜなら、既にここに至るまでに、
2段階でモチベーションを上げられているからです。
まず、所長に相談された時点でモチベーションが上がります。
次に、自分の意見に対して「おまえ頭良いな」とほめられて
モチベーションが上がります。

 

こうなると、もう断ることができません。
まんまと所長にはめられて、この仕事をやることになります。
そして、やった後にはいつも、
「ありがとう」と感謝してくれました。

 

今思うと、とても素晴らしい上司だったと思います。
この技で、様々な仕事を任せてくれました。
そのおかげで、若い頃に随分自信を持つことができました。

 

ところで、昨今は生産性の向上が
企業の喫緊の課題となっています。
そのための方策のひとつに、
社員の「主体的な幸福度が高めること」があります。

 

「主体的な幸福度が高い人は、そうでない人に比べて
生産性が31%高い」と
イリノイ大学のエド・ディーナー教授が述べています。
「幸福だと、社員のやる気が上がる。だから生産性が上がる」
という至極簡単な論理です。
https://diamond.jp/articles/-/241002

 

では、「主体的な幸福」とは何でしょうか?

 

ここでは、ベストセラーになった
『日本でいちばん大切にした会社』に紹介されていた
日本理化学工業の大山泰弘・元会長による
「人間の究極の幸せ」の4つの定義を紹介します。
https://www.rikagaku.co.jp/handicapped/
http://earth-words.org/archives/10466

 

人の究極の幸せは
①人に愛されること、
②人に褒められること、
③人の役に立つこと、
④人から必要とされること。 です。

 

そこで、この4つの幸せと、
私の上司の「6つの任せ方」を掛け合わせてみます。

 

最初に、私は「お前ならどうする?」と
相談を持ちかけられます
これは、私の知恵や意見が「必要とされている」のです。
ですから、相談されて幸せを感じます。

 

次に私は自分の意見を言います。
すると、「そうか、お前、やっぱり頭いいな」と言われます。
「ほめれられる」のです。私は、幸せを感じます。

 

さらに「それじゃ、お前やってくれ」と頼まれます。
この依頼に自分の力が「必要とされている」と実感し、
幸せを感じます。

 

そして、任された仕事を実践します
それが完了すると所長から「ありがとう」と感謝されます。
「役に立った」ことを実感し幸せになります。

 

さらにワンランク上の仕事を任されてます。
このとき私は上司からの信頼が高くなったな、
「愛されているな」と感じます。

 

つまり、所長の「6つの任せ方」は、
部下である私の主体的幸福度を高めたのです。

 

そしてこのような依頼の仕方を組織の全員にすれ、
エド・ディーナー教授の説のように、
全員を幸せにすることができ、
組織全体の生産性を上げることができるのです。

 

あなたは、どのようにして
部下のモチベーションを上げていますか?

 

ひょっとして生産性を上げるため、
「部下に頼るより自分がやった方が速い」と
部下の仕事を奪う「経験泥棒」になっていませんか?
もしそうなら、それは逆効果です。

 

短期より長期的な視点で生産性向上を目指しましょう。
どんどん部下に相談を持ちかけて、信じて任す。
そして、組織全体の幸福度を上げていく。
ぜひ、そんな上司になってくださいね。