vol.498「賃上げできる会社・できない会社」

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.498

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

「賃上げできる会社・できない会社」

 

トヨタ、イオン…
毎日のように賃上げに関するニュースが流れていますね。
物価が4%上昇したのですから、各社必死に検討しているようです。
しかし中小企業には4%は高いハードルですね。

 

実際に各企業が何%の賃上げを予定しているのか、
統計データを調べてみました。

 

22年10月発表の東京商工リサーチの調べでは
資本金1億円未満3,962社のうち
・賃上げ5%以上…4.6%
・賃上げ2~5%…41.6%
・賃上げ0~2%…35.1%
・実施しない…18.8%です
この時計を見る限り80%以上の企業が
程度の差こそあれ賃上げを検討しています
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20221021_01.html

 

一方でこの賃上げは、企業には重い負担です。
そこで、それだけの収益が確保できているか
価格転嫁の実態を調べてみました。

 

中小企業庁が22年9月に17,848社を対象に行った調査結果では、
過去6か月のコスト上昇分を
・10割価格転嫁できた…7.4%
・7~9割価格転嫁できた…18.2%
・4~6割価格転嫁できた…11.9%
・1割~3割価格転嫁できた…17.4%
・全くできなかった…16.3%
・逆に減額された…3.9%
・価格転嫁する必要がない…14.9% でした。
https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221223005/20221223005.html

 

この二つのデータを比べてみます。
すると、面白いことがわかります。

 

賃上げデータで2%以上実施すると答えた企業の割合は
4.6+41.6=46.2%

 

対して、4割以上価格転嫁できたと答えた企業の割合は
17.4+18.2+11.9=47.5%
と、拮抗しています。

 

つまりコスト上昇を半分でも価格に転嫁できた企業は
賃上げに応えることができるわけです。

 

一方で、十分に価格転嫁ができていないにも関わらず
賃上げせざるを得ない企業も半数近くあることがわかります。

 

それでも賃上げに踏み切るのは、
社員が辞めてしまうリスクと、
人を採用できないリスクがあるからです。

 

熊本で、巨大な半導体の工場が
ほぼ国策で作られているのはご存知でしょう。
その工場は土地も建物もほぼ国や自治体の支援で
成り立っているので、固定費負担が少ないです。

 

よって相場より高い賃金で人材を獲得することができます。
社員数100人程度の中小企業の中には、
30人以上が一気にその工場に転職してしまった
例もあるようです。

 

賃金が安ければ人が離れ、
賃金が高ければ人が集まるのは当然です。
このことは、熊本に限ったことではありません。
まもなく全国各地で見られるでしょう。

 

なぜなら、本格的な少子化の波が
ビジネス界を襲うからです。
どのエリアでも、就職適齢期の人口がガクッと減るのです。

 

例えば、名古屋市の22年10月の人口ピラミッドを見てください。
https://www.city.nagoya.jp/shisei/category/67-5-5-7-0-0-0-0-0-0.html

 

25歳の人口が張り出してるのは分かると思います。
25歳の人口は14,935人です。
これに対し、19歳人口は9,707人しかいません。
地方から出てきた大学生を含んでこの人数です。
25歳人口100とした場合 64.8%です。

 

これが16歳人口になると 9,070人となり
25歳人口比で 59.8%です。
なんと4割以上も減るのです。

 

この16歳が社会人になるまで5年ほどしかありません。
その時に十分な賃上げ出来ない会社は、
全然人が採用できないでしょう。

 

こうした人材危機に最も早く影響されたのが建設業界です。
建設業界の労働者は、17年の時点で
60歳以上が 81.1万人でした。
これに対し 30歳未満は 36.6万人しかいませんでした。

 

そこで国土交通省は 公共工事の工事設計労務単価を
12年から毎年断続的に上げ続けています。
21年は、12年比で55%も上昇しています。
これだけ単価を上げないと労働力が確保できないのです。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/01222/

 

こう考えると、賃上げを可能とする生産性向上は
まさに企業にとっての喫緊の課題です。
では、そのために企業にできることは何でしょうか?

 

主な方法は以下の3つでしょう。
1.DXの活用
2.従業員のモチベーションアップ
  (やる気を上げて改善意欲を引き出す)
3.高付加価値商品の開発、販売

 

ここでは、上記の「DXの活用」ついて簡単にご紹介します。
DXとは「人を増やさずに、業務のやり方を見直して
収益を拡大すること」です。
基本的には 以下の3ステップで進めます。

 

①仕事を分解し、人がやらないといけないことと、
人でなくてもできることを分ける
②人でなくてもできることをITにやってもらう。
その操作はスマホで行う
③人は人にしかできないことに集中する

 

以上を理解し、様々な事例を共有した上で、
幹部間で以下のテーマで議論をします。

 

<議論1>あなたの職場の仕事で
①自動化した方が良いことはありますか?
 *同じ作業を何度も繰り返していること

②無人化できることはありますか?
 *人がやっているが仕事が機械的な処理になっていて、
多くの時間を割いていること

③遠隔で対応できること
 *当たり前になっている訪問、移動、待ち時間などありませんか?

 

<議論2>あなたの会社の部門間の連携で
①自動化した方が良いいこと
②無人化できること
③遠隔で対応できること
 *部門間の人の往来、モノの往来、情報の往来(報連相)など
  物理的な移動や回数、ミスなどを減らせるものはないですか?

 

弊社はこの議論を幹部研修やビジョン開発の一環として
クライアント各社で行っています。
すると、短い時間の議論でも、
たくさんのDX化したいネタが出てきます。

 

それを見ると、幹部社員は、
日頃から自分たちの仕事の進め方に疑問を持ちながら、
なかなか言えずにいることがよくわかります。

 

これは大変惜しいことです。
ぜひこのテーマで自社の問題点を洗い出し、
DX化できるところを見つけましょう
そしてそれを推進していきましょう。

 

もう一つのテーマである従業員のモチベーションアップと
新規ビジネス開発は次回以降で解説します。
どれも非常に重要なことなので、
楽しみにしていてくださいね。