vol.494『社員の力で新しい歴史の扉を開く経営』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.494

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『社員の力で新しい歴史の扉を開く経営』
~新規ビジネスを生み出す4つの仕掛け~

 

サッカー日本代表、W杯では大活躍でしたね。
ドイツ、スペインという強豪国と同じグループで
まさかのトップ通過。新たな歴史を創りました。
選手にはただただ感謝しかありません。

 

コロナ禍から3年、
今、新たな歴史創りに挑む会社が増えています。

 

先日、某社で新規ビジネス案が発表されました。
同社は社員数100人未満のガス供給会社です。
その中から10人のメンバーが選ばれ、
彼らが、新規ビジネスの事業プランをゼロから考えたのです。
私はそのプロジェクトをお手伝いさせていただきました。

 

ミーティングの頻度は月に1回で計8回。
前半はアイデアを出すことに時間を使い、
後半はアイデアを絞り込み、
それをワクワクする事業プランへと進化させていきます。

 

今回は、最終的に4つの事業プランが示されました。
どれも魅力的で、メンバーはもちろん、
社長以下皆さんに喜んでいただきました。

 

私の新規ビジネス立案時の支援方針は、
「講師は、答えを言わない」です。

 

なぜなら、新規ビジネスの立ち上げは、
経営の中でも大変難しい仕事のひとつです。
その難局を乗り切るには、
担当者自身の高いモチベーションが必要です。

 

外部の誰かに言われてやるのであれば、
たとえそれがよく儲かる事業案だったとしても、
「なんで俺がこんなことやらなきゃいけないの?」
と考え、途中で放り出してしまうでしょう。

 

一方、自分で考えたプランなら、
「このプランを考えたのは自分だ。だから自分が絶対にやる!」
と、我慢と頑張りが効きます。
新規ビジネスの立ち上げは、意思が9割です。
その責任感と執念ために自分たちで考えてもらうのです。

 

また、一度自分でプランを生み出した経験があれば
それが自信となり、次は講師不在でもプランを創出できます。
その自信をつくるためにも、
講師は「場は作る。でも何も言わない」が良いのです。

 

とはいえ、日常業務で忙しいメンバーに
「新規ビジネスを考えてください!」と
言ったところで、アイデアは簡単には出てきません。
そこで、今回はいくつもの仕掛けをしました。

 

一つ目は、「ミッションステートメント」の策定と共有です。
メンバーの皆さんは、慣れない仕事に挑むのです。
「なぜ新規事業に取り組むのか」
「なぜ自分がやらなきゃいけないのか」
そのようなネガティブな気持ちが生まれて当然です。

 

そこで以下の「ミッションステートメント」を策定し、
毎回のミーティングの最初に読み合わせをしました。

 

「ガスのその先へ

電気もガスも自由に選べる時代
私たちにしか出来ないことは何だろう
その答えはきっと、私たちの中にある

誰よりもお客様を回り
誰よりも親身になって
誰よりも役に立ってきた。

日々の生活の中で、困っていること、悩んでいることを
一番知っているのは、私たちだから

くらしを丁寧に見つめると、
毎日あったら喜ばれるサービスは、まだまだたくさんあると思うから
お客様と話をしよう、アイデアを出そう、カタチにしよう

さあ行こう。ガスのその先へ。」

 

作者は、同社に顧問として長年深くかかわっている、
日本経営合理化協会のチーフディレクターの三木さんです。
同社をすぐそばでサポートしている三木さんだからこそ、
メンバーの心を一つにする
「ミッションステートメント」を示してくれました。

 

二つ目は、刺激を求めて2種類の見学会を実施したことです。
ひとつは、「東京ビッグサイトへの訪問」です。
ビッグサイトでは、毎週のように様々な展示会が開かれています。
その展示会にメンバーが2人1組で、代わる代わる見学に行きました。

 

展示会が行われる業界は、成長産業です。
少しでも自社に関連のありそうな展示会を2人1組で見学し、
自社に応用できそうな面白いネタを拾ってくるのです。
正直言って空振りに終わることもあります。
が、それは地域密着企業が外界を知る契機になります。

 

もうひとつは、3つの企業を見学したことです。
見学先は、「同社と同じ強い地元愛を持ち、
本業+新規ビジネスで成功している会社」で、
すべて上記の三木さんがコーディネートしてくれました。

 

見学先では、社長から新規ビジネス立ち上げの苦労話と、
それが会社にもたらした効果を語ってもらいました。
ナマ体験として成功者の「風圧」を感じることができたのは、
メンバーに大きな刺激・ヒント・勇気となりました。

 

三つ目は、「10倍スケールで考える」の実施です。
皆が考えたアイデアのうち、共感を得た数件を選び、
「そのアイデアのスケールを10倍にして考えるとどうなるか?」
を、全員で考えるのです。

 

売上は「客数×客単価×購入頻度」で表されます。
そこで、「客数が10倍に増えるとしたら?」
「客単価が10倍でも売れるとしたら?」
「購入頻度が10倍になるとしたら?」と問い、
アイデアをより魅力的なものに改善していくのです。

 

すると、アイデアがポケモンのキャラのように進化し、
大きくパワフルなものへと変貌するのです。

 

以上がアイデアを事業プラン化していくプロセスの工夫です。
が、今回はもうひとつ、社長自らがメンバーの為に用意した
仕掛けがありました。それは、最終プランの発表会に、
地元の信金の担当者を2名、招待したのです。

 

その狙いは
「金融機関から見て魅力的なプランかどうか?
土地を借りたい案件には、適地を紹介いただけるか?
事業立ち上げ時に、補助金申請が可能かどうか?」
等を問いかけるためです。

 

信金の担当者の発表会ご招待という仕掛けには、
社長の新規ビジネスプランに賭ける強い想いが
表現されていました。

 

こうして生まれた新規ビジネスのプランは、
当初全く想定しなかったものばかりで、私は大変驚きました。
当事者意識の高いメンバーが、一つのアイデアに
自社の強みと地域での存在価値を加味し、
未来を描いていく底力に感動しました。

 

そして、新規ビジネスを考えることは、
社員が持っている潜在能力を引き出し、
開花させる力があると、改めて気づきました。

 

コロナ禍になって、早3年。
どの業種でも規模を問わず、変化が加速度的に進んでいます。
変化を追うのでなく、自ら変化を起こす。
それができる会社と、そうでない会社の差はどんどん開いていきます。

 

あなたの会社は、新たな歴史創りに挑んでいますか?
社員の潜在能力を頼りに、
新しい景色を見てはいかがでしょうか?

 

弊社新規ビジネス創出コンサルはこちら。
https://vjiken.com/consulting/business.html