vol.491『Z世代を考える経営用語の定義』

 V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.491

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『Z世代を考える経営用語の定義』

 

展示会シーズンですね。
様々な展示会場でコロナ禍前同様に、
展示会が開催されています。

 

弊社も今月16日から今日まで、
ポートメッセなごやで開かれている
「メッセナゴヤ」と題した展示会に出展しています。

 

「もし、よかったら来てくださいね」と
お客様に声をかけると、
「それって何の展示会ですか?」とよく聞かれます。

 

展示会には「工作機械見本市」とか「農業展」とか、
展示会のテーマがあるのが普通です。
ゆえに「メッセナゴヤ」のテーマは何かを聞かれるのですが、
実はメッセナゴヤには、そのテーマがありません。

 

「出たい会社が出ている」のが実情で、
主催の名古屋商工会議所は
「日本最大級の異業種交流展示会」と言っています。

 

この展示会は元々が、トヨタグループに
自社の商材を売り込みたい様々な部品メーカーや
法人向けサービスの会社が開いていました。

 

それがどんどん規模が大きくなって、
「トヨタのためだけではもったいない」となり、
名古屋商工会議所が引き受けました。

 

業種の区分がないのはそのためで、
弊社のブースの前にはネジの強度を高める
コーティング剤のメーカーが出展しています。
斜め前方では強化ダンボールのメーカーが
ダンボールを使ったパレットを展示しています。

 

次の角を曲がると何が飛び出すかわからない。
そんな多様性の面白さがメッセナゴヤの魅力です。

 

こうした多様性は創造力の母でもあります。
そこで、社内にも多様な人が集まる場を創り、
なかなか揃わないモノの見方や価値観について議論し、
皆が納得できる解を見つけるのも面白いです。

 

例えば、「お客様」とは何でしょうか?
当たり前に毎日使っている言葉ですが
「わが社にとってお客様とはどういう人か」を
揃えておくことは、社員一人ひとりが
現場で自ら考え行動するためには大事なことだと思います。

 

先日、とんかつ屋で客が店員を殴って
逮捕される事件がありました。
マスクをつけていないお客さんに、店員が
「マスクをつけてください」とお願いしたところ、
「俺は客なのに命令するのか!」と逆ギレされだということです。

 

「お客様は神様です」と言いますが、
こんな人はお客様ではありませんよね。
そういうことを予め定義しておくことが、
現場での判断力を高めるのです。

 

そこで、社員数150人の部品製造業では、
現在、「言葉を定義するプロジェクト」を行っています。
メンバーは社長と部長が3人、
そして入社1、2年目の社員4人の合計8人で
月に1度、3時間使って行っています。

 

敢えてZ世代の若手社員を入れているのは、
普段なかなか話す機会のない部長と部下を集めて
カオスな状態を作り、新鮮な驚きと感性を
引き出したいたいからです。

 

このプロジェクト、元々は昨年、
ホームページを刷新する目的で始めました。
同社はホームページで、採用を呼びかけても
全然人が採れませんでした。

 

そこで入社したばかりの社員を集め、
会社のホームページの問題点を教えてもらったのです。
新入社員は、入社前に様々な会社のホームページを見比べています。

 

どんな会社のホームページが魅力的に見えたのか、
それを教えてもらいながら、
会社に足りない要素を見つけて行きました。

 

また、入社して「この会社に入って良かった」と思った点は
どういうところか。先輩との関係性、面白いと感じた仕事の内容、
会社の制度で魅力的だと感じたことなどを聴き出しました。

 

さらに、部長等から様々な体験談、エピソードを聞き、
その何が面白いのか、どんな気づきがあるのかを知り、
Z世代の共感を呼べるよう言語化しました。

 

そうした意見や感想を踏まえてホームページを刷新したところ、
更改2か月で期待以上の応募があり、採用に成功。
この経験により、同社は社長や部長が
Z世代の意見を聞く大切さを痛感したのです。

 

定義する言葉は、上記のお客様の他に
「利益」「クレーム」「プロフェッショナル」
「従業員」「リーダー」などです。
皆さんなら、どのように定義しますか?

 

同社は、約1時間のディスカッションを経て、
「お客様」を以下のように定義しました。

 

1.お客様とは、私たちへ「社会の期待」を
明確に示してくださる方
2.お客様とは、期待に応えた私たちに
しっかり「ありがとう」を感じていただける方
3.お客様とは、その上で私たちを評価し
社員を笑顔にしていただける方

 

1番は、最初は「私たちへの期待を」だったのですが、
近年のお客様の要求がSDGsやカーボンニュートラルなど、
良質な商品供給だけでなく、環境への配慮も求めています。
それらを加味するために「社会の期待を」としました。

 

2番の「ありがとうを感じていただける方」というのは、
部品製造業はなかなかお客様に
「ありがとう」を言ってもらえないのが実情です。

 

そのくせ、不良を出すと烈火のごとく怒られます。
そうした、私たちを下請け的に扱うお客様ではなく、
しっかり認めてくれるお客様を選んで
共に成長していきたい、という意思が込められています。

 

3番は「十分な対価をお支払いいただける方」という意味です。
昨今の値上げ交渉は受け入れてくれる先もあれば、
頑として受け入れてくれない先もあります。
そうした現実に直面した時に、
正しい判断ができるようにこの一文を入れました。

 

このディスカッションでは、最初に社員たちが文案を創り、
それに対し社長がフィードバックをするのですが、
そこには過去の経験から得た教訓が詰まっています。
それが社員には様々な気づき、刺激となり
徐々に価値観が揃ってきます。

 

そして終わった時に非常にすっきりとした気持ちになります。
多様な人材の討議から一本の筋を見つける、
まさにそんなプロジェクトです。

 

世の中には、多様性があるからこそ面白いものと、
統一された方がスッキリするものがあります。
ぜひあなたの会社でもいろんな世代が交流する
ミーティングを開催してみてくださいね。