vol.487『本部と現場、どっちが強くあるべきか?』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.487

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『本部と現場、どっちが強くあるべきか?』

 

「ナイフで切ったように夏が終わる」。
今から40年ほど前のパルコの CM のコピーです。
夏は当時に比べて随分暑くなりましたが、
夏の終わり方は昔も今も一緒ですね。

 

そして秋。秋といえば展示会の季節です。
あなたは最近、展示会に足を運んでいますか?
私も仕事柄、ちょくちょく見学します。
人は展示会に戻ってきています。
やっぱり、新しさを求めて現地現物に触れたいのでしょう。

 

その展示会で驚くことがあります。
例えばほんの数年前まで、展示会を見学しようとすれば、
入り口で申込票に必要事項を記入して、受付に並び、
名刺を2枚出すなどの登録手続きが必要でした。

 

今、そんな手続きは一切ありません。
自宅で見学したい展示会のサイトを立ち上げます。
そこに会社、氏名、メアドなどを入力して
登録ボタンをクリックします。

 

すると QR コードが出てきます。
そのQR コードを印刷して会場に行きます。
会場に着いたら、QRコードの紙を入れて首から下げます。
係員はQRコードを読みます。体温検査をします。
そしたら、もう入場できます。

 

お目当てのブース(A社)に行きます。
A社のカタログが欲しいなと思ったら、
A社の受付カウンターに行きます。

 

従来はここで名刺を出し、
それと交換にカタログや粗品をもらっていました。
が、今はここでも QR コードを読むだけです。
そうするとカタログや粗品がもらえます。

 

つまり名刺を出すことが一切ないのです。
が、私のデータは正確にA社に残ります。
そして後日「ご来場ありがとうございました」という
メールがA社から届きます。

 

そのメールには、同社のサービス案内のURLが付いています。
クリックすると商品・サービス情報やセミナー情報が出てきます。
それをクリックするとさらに詳しい情報が出てきます。

 

A社側では、私がそのサイトのどんな商品情報に興味を持ち
どこをクリックしたかを把握します。
そしてその分野の詳しい情報を送ってきます。
相手がセミナーに参加したり、資料をダウンロードしたりすれば、
それをネタに連絡します。こうして見込み客を発掘するのです。

 

従来は、展示会で集めた名刺やアンケートを
手作業で入力していました。
さらにそのデータを基に、一軒一軒電話をかけ、
来場のお礼を伝え、興味の有無を確認し、アポ取りしました。
こうして見込み客発掘まで、膨大な作業が発生していました。

 

こうした地味な作業の積み重ねと
展示会を終えた身体的な疲労、
通常業務と並行してこれをやらねばならない時間の制約もあり、
社員たちは展示会後、一様にモチベーションダウンします。

 

そして、上記のアプローチがほとんどできず、
何のために展示会をやったのかというぐらい
展示会で集めた名刺やアンケートを無駄にしていました。

 

それを思えば、ところが今は気持ちよく、
タイムリーに展示会後の見込み客発掘に取り組めるのです。
相手を会ってから知るのではなく、
知ってから会うことができるからです。
みんなDXのおかげですね。

 

話変わって私は先日、マイナンバーカードで
印鑑証明をコンビニでプリントアウトしました。
実に簡単です。マイナを置くだけで出てくるのです。
過去、役所に行って取得していたことを思えば
めちゃくちゃ楽です。

 

また、マイナンバーカードを登録した時には、
2万円のポイントをいただきました。
私はこのポイントいつも利用している
ドラッグストアのポイントにつけました。

 

緊急事態宣言時の10万円の給付金の時に比べると、とても楽です。
これまた、DXのおかげです。

 

こうした仕組みを構想し、作れる人財はどの企業でも必要ですね。

 

会社によって現場と本部、どちらに有能な人財をおくかは様々です。
私が肌感覚で感じるところ、
B2C主体のチェーン店は本部に有能な人財を得ています。
どの店でも一定の成果が上がるよう、
陳列を工夫したり、無駄のないオペレーションを構築したり、
固定客化のために顧客管理システムを活用するのは本部の仕事です。
そこが、成長の一番のポイントだからです。

 

一方、B2B主体の商社や金融機関は
現場に優秀な人財を配置します。
お客様と直接お会いし、難しい商談をまとめたり、
新たな商談を発掘したりするところに、
成長の一番のポイントがあるからです。

 

しかしながら、「有能な人材は最前線へ」という
考え方は過去のものに成りつつあります。
上記の展示会の見込み客発掘の仕組みを見ても、
DXを活用した仕組みが存在することで、
どんな社員でも見込み客を発掘することができます。

 

経営者が考えなければならないこと一つは、
社員のモチベーションの活かし方です。
社員はみんなやる気があります。頑張りたいと思っています。
それが発揮できる環境を整えるのが経営者の仕事です。

 

それには最前線の現場ばかりでなく、
上記のような仕組みをつくるセクションに
有能な人財を配置するべきです。
つまり、B2B企業でもB2C企業並みに、
本部を強くしていく必要があります。

 

本部が強いからこそ、最前線の担当者たちは
安心して、お客様にソリューションを提供できるのです。

 

本部の強さに問題あり、と気づいている会社は
是非、そこを強化しましょう。
その差がやがて、大きな競争力の差となるでしょう。