vol.484『痛ましい事件を題材に考える失敗を繰り返さない方法』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.484

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『痛ましい事件を題材に考える失敗を繰り返さない方法』

 

大型の台風14号が通過したしましたね。
皆さん被害はありませんでしたか?

 

「命を守る行動を優先してください」という放送に
人々がとった選択は、外出しないこと。
そして公共交通機関は、相次いで計画運休しました。

 

台風の影響は大きくなると言われた19日の夕方、
私は岐阜から千葉に移動する予定でした。

 

19日は地元1日研修の講師をしており、
移動が可能なのは夕方になってからです。
20日は千葉で1日研修講師で、
何とか辿り着きたいと思っていました。

 

そこで新幹線の運行状況ばかり気にしていたんですが、
落とし穴は、足元にありました。
在来線の計画運休です。

 

19日の昼頃、在来線が計画運休するという情報が入ってきました。
教えてくれたのは 19日の研修の主催者です。
この会場の最寄駅が、17時半でクローズするというのです。

 

研修は17時10分までの予定でした。
そこで主催者と相談し、研修を16時半で終えました。
そして私は一旦車で帰宅し、身支度を整えて岐阜駅に急ぎました。

 

私が岐阜駅に到着したのは18時でした。
が、着いてびっくり。岐阜駅はクローズしていました。

 

急ぎ、歩いて5分の名鉄岐阜駅に移動しました。
すると、18時8分の急行がこの日の最終名古屋行きだと
アナウンスされていました。
私はそれに飛び乗って名古屋に向かいました。

 

幸い、新幹線はのぞみ号が一時間に一本、
オール自由席の臨時便が走っていました。
私は19時32分発の臨時便に乗りました。

 

三連休の最後でもあり、混んでいないか心配でしたが、
ガラガラでした。サラリーマン客はほぼいません。
ファミリー層もいません。 高齢者もいません。
20代の若い旅行客がちらほらという感じでした。

 

結局、こうした災害が予想される日は
「そもそも外出しない」「そもそも運行しない」という
原因を元から断という行動を誰もが選択しているのでした。
まさに国民が、悲劇を「仕組み」で解決している姿ですね。

 

さて、ここからが今日の本題です。

 

「ミスをして、その都度指摘や注意をするのですが
同じミスを何度も繰り返す社員がいます。
どうしたらよいでしょうか?」

 

これは管理職研修時に、何度も頂く質問です。
このような時、私は下記のように答えます。

 

「人間ですからミスはします。
一度指摘して直る人もいれば、
十回言っても直らない人がいます。

 

そこで、ミスの原因が『その人個人にあるのではなく、
誰もができる仕組みがないこと』が原因と考えてみましょう。
それを職場の問題と捉えて、
本人も含めてみんなで考えてみてください」

 

このことを、幼稚園の子がバスの中に閉じ込められて
熱中症でなくなるという痛ましい事故の再発防止を
テーマに考えてみましょう。

 

原因は運転手の不注意です。
当然運転手の責任は厳しく問われますが、
今後このような事故が 二度と発生しないようにするには、
「運転手がしっかりしましょう」というだけでは心配です。

 

そこで、様々な対策が講じられています。

 

例えば園児がバスに乗る時に靴を脱ぎます。
そしてバスを降りる時に靴を履きます。
そうすれば、園児がバスの中に残ってると靴が残りますから
まだ誰か降りてない子がいると分かります。

 

このような仕組みを作れば、置き去りのリスクはなくなります。
これは靴じゃなくてもできます。
園児がバスに上がる時に名札とか、カードとなどを運転手に預けます。
園児が降りる時に運転手はそれを園児に返します。
そうすればバスの中に園児が残っているかどうかすぐわかります。

 

また、アメリカのスクールバスでは、
運転手が幼稚園に到着してバスのエンジンを切ると、
バスの最後方にあるブザーが鳴る仕組みがあるといいます。

 

このブザーを止めるには、運転手が最後方まで歩いて行って
ボタンを押すしかありません。
その移動の途中で、園児が誰か残ってないかチェックをします。
これにより、置き去りのリスクをなくすという仕組みです。

 

他にもいろんな仕組みが考えられていますが、
職場で失敗する人が、二度と同じ失敗しないようにするには、
本人を責めるのではなく、こうした仕組みを考えましょう。

 

そのために自分や職場の同僚が失敗したら、
次のように考えましょう。
「一人の失敗はみんなの学び。これは何のチャンスかな?」
「この失敗は自分や組織の未来にどのように役に立つのだろう?」
「天はこの失敗を通じて、私に何に気づけと言っているのだろう?」

 

イチローさんは次のように言っています。
「壁というのは、できる人にしかやってこない。
超えられる可能性がある人にしかやってこない。
だから、壁がある時はチャンスだと思っている」
まさに誰かが失敗した時こそ、
より良い仕組みをつくるチャンスなのです。

 

19日、私は21時無事東京に着きました。
そして東京のホテルに泊まり、翌朝千葉に向かい、
20日の研修を無事終えることができました。
こうした綱渡り移動をなくすには、
仕組みで解決するのが一番です。

 

移動を伴う2日続きのスケジューリングは、
極力避けること。
コンサルタントになって32年、
ようやくそんなことに気がつきました。