vol.480 『経営者のモチベーションを維持する方法とは?』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.480

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『経営者のモチベーションを維持する方法とは?』

 

経営者からしばしば
「酒井さん、社員のモチベーションを高める方法は
わかりましたが、自分のモチベーションを
どうやって維持したらいいのでしょう?
心が折れそうなことの連続です…」という質問を頂戴します。

 

今回は、それにお応えしたいと思います。

 

私の事務所には、昨年23回忌を終えた
父の若い頃の写真が飾ってあります。
中小企業の事務所に創業者の写真が飾られているのを
しばしば見かけますが、あんな感じです。

 

父は「相互銀行」の行員でした。
相互銀行は、従業員300人以下もしくは
資本金8億円以下の中小企業または
個人事業者にしか融資できない金融機関です。

営業畑の出身で、4支店の支店長を務めました。
その後本社でシステム部の責任者を務めましたが、
余程お客様を相手にする現場が好きだったのでしょう。
「本部の仕事はつまらない」と
ぼやいていたのをよく覚えています。

 

父は定年直後の62歳で他界しました。
私は喪主を務めましたが、ある中小企業経営者が
葬儀に参列してくださいました。

 

その人は、父と同い歳の創業者でした。
父が30歳そこそこの時に出会い、
融資してもらったと言います。

 

おそらくこの社長のために、
父は本部に掛け合うなど、相当努力したのでしょう。
その会社は、今は随分大きくなりましたが、
今でも父の銀行(現在は地銀)がメインバンクです。

 

その人は、葬儀に一人で来ませんでした。
同社の後継者である息子さんを伴ってきました。
そして祭壇に手を合わせて父の遺影を見ながら、
「よう見ておけよ。今のわが社があるは、この人のおかげや」と、
その息子さんに言ってくださいました。

 

それを聴きながら、二代にわたって感謝が続くとは、
「何と尊い仕事をした人なのか」と感心しました。

 

そういう経験があるので、
私は創業者ですが、父の志を継ぐ二世経営者の気持ちです。
父の志は聞いたことありませんが、
中小企業支援こそが生きがいだったと思います。

 

私の志は「暗夜に一燈を灯す」です。
なかなか先の見えない時代です。
不穏な事件が次から次々発生します。

 

が、そんな環境下でも、
「とにかくこれに向けて頑張ろう」と言える希望が一つあれば、
ぶれることなく前に進んでいけると思うからです。

 

先日、ビジョンづくりをお手伝いさせていただいた
30代の後継者が、同社の社内報に
次のようなことを書いていました。

 

(引用ここから)
「経営ビジョンにもありますが、
これからはワクワクというキーワードを
どんどん使っていきたいなと思います。

 

何をするにもワクワクすることを、
みなさんと共有していきたいです。

 

先日みなさんに工場の未来構想図を発表したと思います。
それを見てみなさんはどう思いましたか?
少しだけでもワクワクしてもらえましたか?

 

私は構想を打ちあわせしている時も、
みなさんに発表する時も、
ずっとワクワクしていました。

 

どんな工場にしようかとか、
発表したらみんながどんな反応するかな?とか
ずっとワクワクしていました。

 

私自身ワクワクを実感し思ったことは、
ワクワクを感じると、そのワクワクに向けて
頑張ろうという気持ちが強く湧いてきました。
未来構想図を早く実現したいですから!
ぜひみなさんにも私と同じ気持ちを感じてもらいたいです。

 

(中略)
しかし、私一人の力では
そんな会社は作っていけないと思っています。
みなさん、出来れば今回話をした箏に共感いただいて
私と一緒にみんなで盛り上げていける
会社にしていきたいです!
みんなでワクワクする自慢の会社を作って行きましょう!」
(引用ここまで)

 

これを読んで私はとても嬉しくなりました。
同社の場合、たった一枚の「未来構造図」があるだけで、
それが後継者のモチベーションになるだけでなく
社員全体のモチベーションになり、一体感を高めます。

 

そして、足元で起きる様々な出来事に躓きながらも
方向性を見失うことなく乗り越えていけるからです。

 

今月、別の中小企業2社で、
ビジョンづくりのコンサルティングがスタートしました。
どちらの会社もコロナ禍やウクライナ紛争など、
終わりの見えない外部環境変化に企業は巻き込まれています。

 

例えるなら台風による荒波に、
巻き込まれた小舟のような状態です。
そのような危機を乗り越え、
サスティナブルな経営ができるのは、
ぶれない軸を明確に持った企業だけです。

 

古来より船乗りたちは、
常に北極星を見て自分の現在地を確認し、
進路を確かめながら航海しました。
そして、幾多の苦難を乗り越えながら
目的の地に辿り着きました。

 

そのような北極星(ぶれない軸)が、
企業を率いる経営者と幹部に、
今ほど必要とされた時代はありません。
しかもその軸は、社員の誰もが「自分たちのビジョン」として、
誇りをもって共有できるものでないといけません。

 

そうしたビジョンづくりを支援できることは
資金を融資した父とは支援の仕方こそ違うものの、
志を継いだと考えています。

 

もし、オフィスに創業者の写真が掲示されているのなら、
その人の志が何だったのか想いを馳せてみましょう。
まだご存命なら、何がしたくて始めたのか、
何が一番の働き甲斐だったのか、直接尋ねてみましょう。

 

それを素直に受け取り、
「そうすることが当たり前」と考えれば、
精神的に随分楽になります。

 

そして、今の時代にふさわしい北極星を描きましょう。
それがあれば、心が折れそうな時でも、
経営者としてのモチベーションを
維持することができるでしょう。