vol.472『管理者研修で最も多い質問とは?』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.472

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『管理者研修で最も多い質問とは?』

 

そろそろ梅雨ですね。
春の人事異動も落ち着き、決算も終わり、
本腰を入れてマネジメントに取り組む季節の到来です。

 

そこで、今号では管理職研修で
大変多くいただく2つの質問に対して回答します。

 

【質問1】
「部下の中には、『自分は出世とか評価とか、
そういうのは別に求めていません』と言い、
言われたことしかしない、冷めた人が多くいます。
そんな人のハートに火を付けるにはどうしたらいいでしょう?」

 

このような人に、今の仕事の魅力を伝え、
この会社で働くことの幸せを実感してもらうのは
上司の大切な役目ですね。

 

私の経験で最も効果的な方法は、
「お客様の声」に直接触れさせることです。

 

お客様から「あなたが担当で本当に良かった!」と言われた人は、
それを機に、仕事がとても楽しくなり、
他のお客様にも喜んでほしくて
どんどん前向きに変わっていくのです。

 

これは、お客様と直接接する営業担当や窓口担当、
サービス担当で顕著なことです。

 

また、お客様と接することの少ない
工場の現場担当でも、お客様が見学に来た時に
「挨拶が素晴らしいね」「5 S が素晴らしいね」など、
褒められることがあります。

 

そうしたお客様の声を、
「お客様が、こんな風に褒めていたよ。すごいね!
あなたがそう言われて自分も嬉しいよ」と
上司が間接的に伝えることで、
本人のやりがいにつながります。

 

これはコンサルタントの声でも有効です。
私がある担当者の仕事ぶりを見て
「いい仕事をするね」と感心した時、
「先生、それをメールで彼に送ってあげていただけませんか?
きっと励みになると思うので」と、
その担当者の上司に言われたことがあります。

 

わかっている人は、部下のために
利用できるものはなんでも利用するのです。

 

また、人のモチベーションは
自分の意見が採用されたり、
困難な仕事を任されて、
その成果を認められたりした時に最大になります。

 

ある小売業の売場担当は、巡回中の専務から
「この売場を、もっと感動する売場に
作り変えてごらん。好きにやっていいから」
と言われて、自分なりに考え、実施してみました。

 

彼はそれまで、仕事に自信を持てずにいて、
「いつ辞めようか」ばかりを考えていました。

 

が、売場が出来上がった時、それを見に来た専務に
「すごいじゃないか。びっくりしたよ。
君は、意外な才能があるなぁ!」と言われて、
自分の可能性に気づきました。

 

以来、仕事が楽しくなり、
人一倍働き者になって、店長に昇格。
今は若い人を指導する立場になっています。

 

彼は、自分の体験から
『褒め系のフィードバックが人の可能性を開く』
ことを知っているので、部下がミスや失敗をしたときも、
それを責めることをしません。

 

むしろ「ナイスチャレンジ!」と励まし、
「この気づき活かせば、次は必ず上手くいくね!」と、
励まします。失敗を許し、学びに変えることで、
持っているチカラを引き出すのです。

 

承認は「何を言うか」より「誰が言うか」で
効果が大きく変わります。

 

お客様や役員、コンサルタント等、
第三者からの承認のフィードバックには、
担当者の可能性を開き、
人生を変えるチカラがあります。

 

上司は一人で悩まず、
ぜひ、そのような機会を作ってみてくださいね。

 

【質問2】
「若い社員はそれで火が点くかもしれませんが
ベテラン社員はどうでしょうか?
ベテランの中にも、冷めた人がいるのですが…」

 

こちらも、多くいただく質問です。
多くの上司にとってベテランは年上です。
言いたいことがあっても言い辛く、
悩んでいる人が大勢います。

 

この場合も、承認のフィードバックが有効です。
ただし、このケースで最も有効なのは、
上司の承認です。

 

年下の上司が、まずはベテランの部下が
これまで歩んできた道、
今でも誇りに思う仕事について聴きます。

 

すると、大変苦労した体験談が出てきます。
そこには、長年に渡り会社の成長、拡大、発展を
現場で支えてきた自負が感じられるでしょう。

 

上司はそれを聴いて
「最後までやり切る根性がすごいですね」
「挑み続けるチームワークがすごいですね」
などと承認します。
そしてベテランに次のようにお願いします。

 

「私はこのチームを〇〇したい。
それには貴方の、そのすごい力が必要です。
ぜひ、力を貸してください」

 

この「〇〇したい」には、上司の公欲が入ります。
「このチームを社内No.1にしたい」
「このチームをもっと働き甲斐のある職場にしたい」
「このチームの生産性をアップさせたい」

 

この公欲に共感し、
チカラを貸してほしいと頼まれたベテランは、
きっと前向きになってくれることでしょう。

 

マズローの欲求5段階説では、
主体性の発揮は5段階目の「自己実現欲求」です。
それを引き出すのは4段階目の「承認欲求」です。

 

冷めた人は、第4段階の欲求が満たされておらず、
第3段階の欲求である「帰属の欲求」までで
満足しようとしています。

 

そのような人の第4段階の欲求を満たすことで、
第5段階の自己実現欲求=主体性を
引き出すことができるのです。

 

仕事は、人生の中で最も多く時間を使うものです。
ぜひ、冷めた人の心に火を点けて、
働きがいを創造してくださいね。