vol.471『意思決定を後押しするドラッカーの質問とは?』

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 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.471

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『意思決定を後押しするドラッカーの質問とは?』

 

終わらないコロナ禍、ウクライナ紛争、円安…
それらを原因とする物価高騰、品不足が続いています。

 

「社長になって30年こんなこと初めてだ…」
そう嘆くクライアントも少なくありません。
「先生、限界です。値上げするべきでしょうか?」
そんな相談も、多く聴くようになりました。

 

「大丈夫です。値上げしましょう。
断られたらそのお客様を失ってもいい。
その覚悟で値上げを申請してください」
私は、クライアントにそうアドバイスをしています。

 

このとき、クライアントには、以下の質問を行い、
一緒にその答えを確認します。
その質問とは、有名な「ドラッカー5つの質問」です。

 

第1の質問 「われわれの使命は何か?」
第2の質問 「われわれの顧客は誰か?」
第3の質問 「顧客の価値は何か?」
第4の質問 「われわれの成果は何か?」
第5の質問 「われわれの計画は何か?」

 

この質問の答え次第で、不測の事態でも
社長は自信を持って意思決定ができるのです。

 

例えば、あなたの会社に、
先代からのお付き合いで、商い量も多く、
特値で提供しているお客様がいるとします。

 

ただその商いも近年は、年々減ってきています。
経営者も高齢になり、世代交代期を迎えていますが
後継者は育っておらず、事業も旧態依然としたままで、
同社の衰退は火を見るよりも明らかです。

 

このようなお客様に値上げを要請すれば、
強く反発されるでしょう。
「誰のおかげで大きくなったと思っているのか」と
恩を着せられることもあるでしょう。

 

このような時に、「やっぱりこのお客様との
関係は維持したい」と思うのか、
「認めていただけないのであれば、
商い縮小やむなし」と決断するのか。

 

これは第2の質問の答えが明確であれば決断できます。
そして、その第2の質問の答えの選択に
ヒントをくれるのが第1の質問の答えです。

 

自分たちが「どんな社会課題の解決のため、
この世に存在しているのか」を定義できれば
第2の答えはおのずと見えてくるはずです。

 

あなたの会社は、「何に困っている人を、
どのように助けるために生まれたのでしょうか?」
「あなたが会社の運営を託されたのは、
今の社会の、お客様のどんな問題を解決するためでしょうか?」

 

ここがはっきりすれば、第2の質問の答えは明確になります。
それが明確になれば第3、第4の質問の答えも明らかになり、
第5の質問にたどり着きます。

 

値上げすべきかどうかは第5の質問の答えの一つです。
第1~4の質問の答えを確認した後は、
もう迷うことなく意思決定できるでしょう。

 

また、この問いの主語は、「私」ではなく「われわれ」です。
社長一人の考えでなく、幹部社員、現場社員など
社員全員で同じ答えを共有できれば、
社員が値上げに抵抗することもなくなるでしょう。

 

こうした「ドラッカー5つの質問」に基づく経営を
丁寧に行ってきたのが、ユニクロです。

 

ユニクロの現在の経営理念は
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」
「本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、
世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を
提供します」です。

 

これを5つの質問に分解してみます。
第1の質問 使命=服を変え、常識を変え、世界を変えていく
第2の質問 顧客=世界中のあらゆる人々
第3の質問 顧客の価値=良い服を着る喜び、幸せ、満足
第4の質問 成果=本当に良い服、
今までにない新しい価値を持つ服を創造

 

また、以前は以下のような経営理念でした。

 

「ユニクロはあらゆる人が良いカジュアルを
着られるようにする新しい日本の企業です」
「いつでも、どこでも、誰でも着られる高品質で、
ファッション性のあるベーシックなカジュアルウェアを、
市場最低価格で継続的に販売する」

 

第1の質問 使命=良いカジュアルを着られるようにする新しい日本の企業
第2の質問 顧客=あらゆる人
第3の質問 顧客の価値=いつでもどこでも誰でも着られる
第4の質問 成果=ファッション性があるベーシックな
カジュアルウェアを市場最低価格で継続的に販売

 

ドラッカーは5つの質問について
「正面から答えていくならば、必ずや、
ビジョンを高め、自らの手で未来を築いていくことを
可能にするはずである」と述べています。
ユニクロはまさにその実践者です。

 

予測不可能な出来事が次々起こる時代、
値上げすべきかどうかも含め、
経営者は迷うことの連続です。

 

迷ったら、この5つの質問を
自分と幹部に問いかけてみましょう。
そして、自分たちなりの答えを確認して、
確信をもって前に進みましょう。