vol.470『稲盛さんに学ぶ大嵐を生き抜く錨(アンカー)とは?』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.470

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『稲盛さんに学ぶ大嵐を生き抜く錨(アンカー)とは?』

 

知床で沈没した観光船。
今日も引き上げる作業が続いていますね。

 

作業船が錨を降ろせる浅瀬まで移動して、
デッキの上に引き上げるようです。
船が安定するためには、
錨(アンカー)を降ろすことが欠かせないのですね。

 

企業を取り巻く環境は、ますます厳しくなってきています。
最近はどの経営者と話をしても、
皆口々に「こんなの初めてだ。経験したことがない」と言います。

 

従来から続く人手不足と、
急激な仕入れ価格の高騰とエネルギーコストの上昇、
コロナ禍による物流と人流の停滞、20年ぶりの円安…
これら悪材料が同時に吹き出しているのです。

 

困ったことに、悪材料の一つ一つが
何時まで続くのか時間軸が見えません。

 

この状況を航海中の船に例えるなら、
いつ終わるとも分からない大嵐に巻き込まれ、
揺れに揺れている状態と言えるでしょう。

 

これを安定させる方法は、
まずは流されないように錨を降ろすことです。
では、経営における錨とは何でしょうか?

 

それは、経営の原理原則だと私は思います。

 

かつてリーマンショックや東日本大震災、
緊急事態宣言の時に、経営者は窮地に立たされました。
このときは、変化のスピードが急激でした。

 

その時、経営者たちが頼ったのが「稲盛和夫の教え」
「松下幸之助の教え」「ドラッカーの教え」です。
彼ら先人の教えは経営の原理原則を説いたものです。
そこに立ち返り、自らを見つめ直したのです。

 

苦しいとき、同じ思いをした先人の教えはヒントの宝庫です
そこでこのメルマガでは、これから数回にわたって
先人たちが説いた経営の原理原則を、
より分かりやすくお伝えしたいと思います。

 

今回は稲盛和夫さんが説く、
「経営・人生の結果の方程式」です。

 

「経営・人生の結果=考え方×熱意×能力」

 

これは、あまりにも有名な公式ですね。
早速この式を、自分の経営に当てはめて考えてみましょう。

 

【考え方】は価値観です。
企業の価値観は、「経営理念」や「ミッション」
「パーパス」などと置き換えることができます。
これらは、あなたの会社の存在理由です。

 

あなたの会社も、誰かを助け、幸せにするために
この世に存在しています。
今、あなたの会社は誰を助け、幸せにしたいのでしょうか?
経営理念にはそのことが明記されているはずです。

 

これを共有することで、組織の方向性が合ってきます。
よく「ベクトルと合わせる」と言いますが、
「力を合わせる前の心合わせ」がないと組織力は生まれません。

 

目先の変化に振り回されて、何のために経営をしているかを
忘れていないか、今一度考えてみましょう。

 

【熱意】は「ビジネスモデル」と置き換えることができます。
仕事をする人が何に情熱を傾けるかといえば
それは「我が社にしかできないもの」
「他の誰もやったこともないこと」を創造することです。

 

独自性を生み出すときに、人は情熱的になるのです。
この独自性は、あなたの会社の技術や技能のみならず、
歴史に裏打ちされた信用力や、
市場への影響力から生まれます。

 

それらを総称すれば「ビジネスモデル」となります。
あなたの会社は今、どんな価値を提供して、
どのような対価を得ているのでしょうか?

 

もし、以前より稼げなくなっているとしたら、
その仕組みが棄損しているかもしれません。

 

【能力】は、「組織力」と置き換えることができます。
組織力は1+1が2ではなく3にも5にも
10にもなる力です。

 

日本人は自分たちのことを半人前だと思っています。
半人前だからこそ、お互いが助け合わないと
良い仕事はできないと気づいています。

 

ですから、わからない問いに対しては
一人で考えず、仲間の知恵を借ります。
自分の仕事が終われば他人の仕事を助けます。
新しい仲間には親切に教え、手柄は分け合います。

 

それを可能にするのは、ゴールの共有と仕組みです。
自分の役割を自覚し、責任をもって果たそうとすること。
その活動をお互いに認め合い、評価し感謝すること。
うまくいかない場合は人を責めずに、
仕組み=仕事のやり方の改善に励むこと。

 

逆風の中でこれを繰り返していけば、
小さな成功体験とともに組織の一体感が上がってきます。
特定の誰かに頼るのではなく、
一人ひとりの主体性を引き出すことがONEチームを作ります。

 

以上を整理すると、稲盛さんの教えは
「経営の結果=経営理念×ビジネスモデル×組織力」になります。

 

そして、これらを10点満点で採点してみましょう
経営理念   =(    )点
ビジネスモデル=(    )点
組織力    =(    )点
1000点満点で、あなたの組織は今、何点でしょうか?

 

厳しい環境が続く中で、経営者の方が口を揃えて語るのは、
「どんなに厳しい環境になろうと、やりたいことは変わらない」
という、力強い言葉です。

 

もし、あなたがこの環境下でも
「やりたいことを実現するために会社がある。
やりたいことを、やり続けるだけだ」と考えていらっしゃるのなら、
是非、稲盛さんの公式に自社を当てはめてみましょう。

 

そして、その教えとそこからの気づきを
自分の錨(ぶれない軸)にして
未曽有の大嵐の中を生き抜きましょう。