vol.430『奇跡を起こす会社の条件』

V字研メルマガ

 1回3分「ヘコタレをチカラに」 vol.430

          by V字経営研究所 代表 酒井英之

 

『奇跡を起こす会社の条件』

 

日本のウォーレン・バフェットと呼ばれる
投資家で、元竹田製菓社長の故・竹松和平さんは、
雑誌『致知』のインタビューに
「奇跡を起こす会社」について次のように語っています。

 

「株価が5年で10倍になるような
奇跡を起こせる会社とはどういう会社かというと、
それは常識ではないんです。

 

世の中を幸せにしようという正しい目的があって、
ワクワク、楽しく、一生懸命やっていれば奇跡は起こるんです。
そして株価が3倍、10倍になってくると、
どんどん情報が入ってくる。必要なものが集まってくる。

 

ところが、その奇跡は管理するとなくなるんですね。
個人の評価がどうだとか、報告書や領収書を出せとか
なんとかばっかり言っていると奇跡が消えるんです。
天とつながるから奇跡は起こるわけで、
人間とつながったら消えてしまうのです」。

 

この言葉を読みながら、
今回の東京五輪について考えてみました。

 

五輪は人類の奇跡です。戦争を何度も繰り返しきた人類は、
戦争のない平和な世の中をつくりたいと願ってきました。
それは「奇跡」を望むようなものでしたが、
その象徴たるビジョンの一つが、五輪でした。

 

そのため、五輪が嫌いだという人、
無関心な人はまずいないでしょう。

 

しかしながら、今回の東京五輪は「人類の奇跡」と呼ぶには、
相当無理なものになってしまっています。

 

例えば、報道されているように、
「選手は原則毎日、関係者は数日おきに
抗原検査などが義務付けられ、
移動先も競技会場や練習場に限られる。

 

規則を定めた「プレーブック」には
「観客席には行けません」
「公共交通機関を使ってはいけません」
「観光地、レストラン、バー、ジムに行ってはいけません」と、
あらゆる禁止事項が並んでいる。
おまけに違反した場合は、
資格が?奪される可能性もある」

 

このように管理された環境下では、
竹田和平さんの言う「天とつながっている」ではなく
「人間とつながって」しまい、
奇跡の芽が摘み取られてしまうと思います。

 

スポーツの醍醐味は、何も試合ばかりではありません。
日韓ワールドカップの時は、
大分にカメルーンの選手達がキャンプをし
地元の人たちと交流し続ける「奇跡」が生まれました。
https://www.sankei.com/region/news/180924/rgn1809240005-n1.html

 

ラグビーのワールドカップの時は
台風19号の影響で釜石での試合は中止になりました。
が、出場予定だったカナダの選手たちが
その後処理をボランティアとして手伝い、話題となりました。
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00782/

 

勝った、負けただけであれば、
どこの国でやろうが中継を見れば感動できます。
が、選手と地元民の現地交流によるヒューマニズムの気づきは
開催国ならではのものです。

 

長野五輪の時、私は現地に通い、
街歩き、外国人とそれをおもてなしする
長野県人を多く見かけました。

 

とりわけ、善光寺の門前町では
時計屋さんがスイスという国を紹介し、
蟹料理のレストランはロシアを紹介し、
写真屋さんがドイツを紹介し、
仏壇屋さんがイスラエルを紹介する
ミニパビリオンのようになっていたのには驚きました。

 

これは、一店一国運動という運動で、
各商店が、取扱商品と関係性の深い国を紹介する
情報発信基地の役割を果たしていたのです。

 

こうした企画が東京五輪で
予定されているのか私には分かりませんが、
上記のように人流を制限すれば、
開催国ならではの五輪の魅力が失われてしまうでしょう。

 

これは経営でも同じです。
企業が経営ビジョンを掲げて突き進むとき、
大切なことが3つあるといわれています。

 

第1は、そのビジョンに社員がワクワクしていること。
第2は、そのビジョン実現に向けた、独自の仕組みがあること。
第3は、得られた収益が再投資され、持続的に成長できること。

 

しかしながら、この「第1の条件」を満たすことなく、
それでも「第2,第3条件」が可能だとしたらどうでしょう?
例えば売上を10倍にするぞと社長が息巻いていているのに、
「何のための10倍か」を社員が全く理解できていないケースです。

 

その会社の社員は、10倍の文字に
馬車馬のように働かされる自分の姿を連想し、
やらされ感一杯になってしまうでしょう。
3つの条件の中でも、特に第1が大事なのです。

 

私たちは経営者です。
国や、五輪という平和の祭典に依存して
ワクワクさせてもらおうと思うのではなく、
自分たちで自分たちにしかできないワクワクを
見つけていきましょう。

 

そして数年先にそのワクワクで、全社員が
涙するような感動を楽しみに、
多くのアスリートたちがそうであるように
今日1日を全力で生きていきましょう。